耳が聞こえない公爵令息と子爵令息の幸せな結婚

幸せな午後

『それじゃあ、今日はお父様とお母様、出かけてくるから。サザエルと仲良くね。』


『いってらっしゃい。』

「いってらっしゃいませ。」

「出入りの業者を呼んでおいたから、二人でじっくり式の用意をするといい。」

「ありがとうございます。」


馬車に乗ってでかける二人を、サザエルと一緒に見送った。


今日は、お父様とお母様はオペラに行くみたい。
いつまでも恋人同士のように、仲のいい夫婦。
お父様とお母様みたいに、幸せな夫婦になりたいな。



しばらくすると、業者さんがやってきた。

昔から使っている業者さんだから、僕もよく知ってる人たちで安心する。




「式の衣装のデザインは、こちらの中から。どちらかがよろしいでしょうか。」


業者さんはゆっくりしゃべってくれるし、カタログやスケッチブックを見せてくれる。


ひざ丈のパンツに、上着のふわふわフリルがかわいいウェディングドレス。

オーソドックスなお姫様のような丈の長いコートが素敵なドレス。

お母様がよくお召しのような、パンツにローブを合わせた衣装。



どうしよう。

一番最初のかわいいけど、丈が短すぎて恥ずかしいなぁ…。


「あの。デザインを組み合わせることって、可能でしょうか？」


迷ってたら、サザエルが僕の言いたかったことを言ってくれたの！



「マナ、全体的にはどれがすきなの？」


最初のものを指さす。


『最初のがいいけど、上着まで短いのが恥ずかしいの…。』


業者さんはにっこり微笑んで。

スケッチブックを直し始めた。


中のパンツはひざ丈だけど、上着の丈が、ふくらはぎくらい長くなってる！
靴がロングブーツだから、これなら恥ずかしくないかも…！

かわいい！！！



「マナ、これでいい？」


こくこく、と頷く。



「承知いたしました。それでは、お色はこちらから…。」


僕のウェディングドレスは、オフホワイトと、ピンクの甘い衣装。

アクセサリーは、銀色のプラチナに、青い石がついたネックレス。

このドレスで、お嫁にいくんだ…。


幸せな気持ちになった。







もうすぐ結婚式。


陰口をたたく人はなくせないだろうけど、それでも君が笑顔を失うことのないように。

一生をかけて守っていく。