耳が聞こえない公爵令息と子爵令息の幸せな結婚

マナの能力

体が動かせるようになり、マナは再び教育施設へ訪れた。


ミシャ様も、施設の職員たちもみんなで出迎えてくれた。


暫く、久しぶりに子どもたちと絵を描いていたのだけど…。





事務室の方が、なんやかんやてんやわんやしている。


『どうしたんですか？』


「最近、急にやめちゃった子がいてね（一番最初にマナ様の悪口を噴いた子で底意地の悪い子だったけど、まさかね…。）、その子がやってた仕事の分、手がまわらないの。」


『僕でできることなら、お手伝いします。』





３時間後―――――――





「えっ、うそ。あの量の時系列もめちゃくちゃに放置されてた帳簿を直したの？」

「しゅごい～～～～～～。わかりやすい～～～～～～～。」

「私たちのお給料計算の計算式のひな型もありがとおお～～。」

「見積請求納品発注書の様式、助かるう～～～～！」

「この見やすい帳簿なら、いつどれだけ発注すればいいのか、無駄もよくわかるわ。すごいわ、マナ様。十分、女当主としてやっていけてよ！」



マナは、様式の見直しと統一、難しい計算の数式のひな型化、帳簿整理を完璧にこなした。


『お役に立ててうれしいです！』


「なんなの！この天使」

「癒されるわ！」




そこへ、外回りのついでに甘いお菓子の差し入れを買って来たサザエルが帰って来た。


「ただいまー。みなさま、おつかれさま。……って！どうしたの！？」


マナを囲んでちやほやしている図は安心するけどちょっとびっくりする。

サザエルは苦笑して、みんなをティータイムに誘った。



マナは体が弱くて学園には通わなかったかもしれないけど、あの優秀な人材ぞろいの公爵家の子なのだ。
障がいを持っていただけで、天才だった。


そもそも、僕がちょっと教えただけで、文字を覚えたのだ。マナは。


にこやかに皆と過ごすマナを見て、サザエルは、マナが会話ができたらなあと考えて。


ふと。


そういえば、軍部でも手旗信号とかあるよね。

手の動きが言葉の代わりになるものがあれば、マナだけじゃなく、マナのように困っている人たちも助かるのではないだろうか。


と思いつくのだった。