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母親の悲しみ
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「もう、大丈夫だよ。クリス。」
70を過ぎ、見た目は50代半ばにしかみえないくらい若々しくても、年を取ってからの冒険者稼業がたたって足腰が弱くなってしまった体。
それでも、こういう時は。
泣き伏せる妻をしっかりと支えた。
傍らで寝ている彼らの末息子は、座った体勢のまま。
ようやく落ち着いている。
呼吸器の発作の場合は、この方が楽なのだ。
「俺が…っ。俺があの時、迂闊だったから…。だからこの子が…。」
「もういい、クリス。君は十分苦しんだじゃないか。あの時、飲まされた薬とこの子の体には何も因果関係はない。」
19歳で半ば無理やり嫁がされたクリスは、年月を重ねて、まるでそれが前世からの運命だったかのように、夫を深く愛するようになり、39歳になったあの日。結婚20周年を祝って二人っきりで旅行をした。
神速のクリスと呼ばれ、騎士団長になって、自分の強さを過信していたのだ。
実際、クリスは強かった。
世界中の誰よりも。
けれど、どんなに強くても、人間であり、隙を突かれれば…。
旅行先の国の事件に首を突っ込み、夫の躊躇もきかず、自分自身を囮にした結果が、恨みを買っていた相手からの凌辱だった。
相手を夫のアイスと勘違いするような幻惑の薬を飲まされて。
検査をしに行った病院で、既に妊娠していたことを告げられた。
妊娠している状態で、よくない薬を飲まされたことが悪かった、とクリスは今でも思っている。
自分のせいで、この子が、5人いる子のうちこの子だけが…。
70を過ぎ、見た目は50代半ばにしかみえないくらい若々しくても、年を取ってからの冒険者稼業がたたって足腰が弱くなってしまった体。
それでも、こういう時は。
泣き伏せる妻をしっかりと支えた。
傍らで寝ている彼らの末息子は、座った体勢のまま。
ようやく落ち着いている。
呼吸器の発作の場合は、この方が楽なのだ。
「俺が…っ。俺があの時、迂闊だったから…。だからこの子が…。」
「もういい、クリス。君は十分苦しんだじゃないか。あの時、飲まされた薬とこの子の体には何も因果関係はない。」
19歳で半ば無理やり嫁がされたクリスは、年月を重ねて、まるでそれが前世からの運命だったかのように、夫を深く愛するようになり、39歳になったあの日。結婚20周年を祝って二人っきりで旅行をした。
神速のクリスと呼ばれ、騎士団長になって、自分の強さを過信していたのだ。
実際、クリスは強かった。
世界中の誰よりも。
けれど、どんなに強くても、人間であり、隙を突かれれば…。
旅行先の国の事件に首を突っ込み、夫の躊躇もきかず、自分自身を囮にした結果が、恨みを買っていた相手からの凌辱だった。
相手を夫のアイスと勘違いするような幻惑の薬を飲まされて。
検査をしに行った病院で、既に妊娠していたことを告げられた。
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自分のせいで、この子が、5人いる子のうちこの子だけが…。
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