耳が聞こえない公爵令息と子爵令息の幸せな結婚

竜鳴躍

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愛しい君が僕から隠れた

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「マナ。」

マナは耳が聞こえない。

金色の輝くような髪に、青い大きな瞳。


小柄で細くて、壊れそうで。


だから、いつも近くまで寄って、驚かさないように正面からマナに手を振る。




僕は下級貴族だけど、君を大事に思う気持ちだけは誰にも負けない。

君は、怯えて引きこもっていた僕に、勇気と自信をくれた。

君のために僕は強くなったんだから。





小さい頃、僕は、少女のように美しい子どもだった。

まだ第二次性徴も始まっていなくて、体つきもそれほど性差がない年ごろだった。

自分の顔が、どんなふうに男の劣情を誘うのか。

そんなこと、わかるはずがなかった。


まだ僕は7歳になったばかりで。

もうすぐで子ども同士のお茶会にデビューしようか、といった年のころだったのだ。


僕の両親は男同士の夫婦で、父親は騎士団長。母親はその補佐をしていて、とても忙しかった。

実家の子爵家の分家だったけど、父親が地位があったから、そのまま子爵位がもらえたのだ。

だから、僕は、お姉さまと一緒に近くの大きな商家の奥様になっているアテネ伯母様のお家で面倒を見てもらっていることが多かった。

ヘラお姉さまはてきぱきとお手伝いができる年頃だったから、アテネ伯母様についてお客様の相手をしていて。

僕はお家の中で遊んでいたんだけど…。


「ねえ、僕。ちょっと、」


ある日。初めて見るお客さんが裏口から家の中に迷い込んできて、僕に声をかけた。

「ちょっと、落とし物をしちゃったんだよ。俺は目が悪くて。一緒に探してくれないかい?」


僕はどうしようかと思ったけど、かわいそうだから探してあげようと思って、裏口から外に出て。

その瞬間、男に抱えられて人気のない茂みに連れていかれた。


「はぁ、はぁ、かわいいねぇ。おじさんがいいものをあげようねぇ。」


そうやっておじさんは、自分の下着から大きなおちんちんを取り出して、僕の口にくわえさせた。


やだよお。気持ち悪いよ。誰か、助けて!


そう叫びたかったけど、通りから離れていて声も出なくて。


怖くて、言うとおりに咥えてた。

ただ咥えるだけだったけど、男は満足そうで。

そのあとは、僕のパンツを下ろして、ご褒美だとか言って、僕のおちんちんをなめられた。


運よく、これで解放されたけど、もう怖くて仕方なくて、僕はアテネおばさんのお家にもいかず、うちに引きこもりになった。

同じ年の子との交流もせず。誰ともかかわらず。

この女みたいな顔が嫌でたまらなくて。

髪を伸ばして、顔を隠し、背中を丸めて生きてきた。


両親も姉も、僕に色々言ってくるけど、何が原因でこうなったかなんて言えない。


学園に通うようになり、モップと呼ばれて馬鹿にされ、苛めのターゲットにもなった。



だけどそんな時。



マナは僕のこと、王子様だって。

凄くきれいに描いてくれたんだ。

キラキラした瞳で、僕が文字を教えたのが嬉しいって。

僕のこと、好きだって。

君を守りたい気持ちが産まれた時、僕も生まれ変わった。


僕たちの婚約は、両家の親が友達だったから、すぐに認められた。

だけど、僕の爵位が低いから、僕から君を掠め取ろうとしている人がいるのを知っている。

公爵の子だからって、君に求婚する人は、君をお人形のように扱うつもりだ。

聞こえないけど、だから、扱いやすい。

可愛いから、夜の楽しみにさえなればいい。


そんな結婚、公爵家も許さないだろうけど、僕だって許さない。


そんなに愛してるマナなのに、今日は表情が暗かった。



「マナ、一緒に帰ろう。」

マナは首を振る。

聞こえないから、はなせないのだ。



そして、マナは僕から隠れるように、教育施設の手伝いに来なくなった。
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前作 元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される はこちらhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/22544245
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