67 / 68
結婚式と筆頭魔術師就任記念式典 2
しおりを挟む
その式典は、何よりも盛大に執り行われた。
それもそのはず。初代筆頭魔術師の部屋持ちとなったシェリア・ウェンダーは希有なる闇魔法の使い手で、王国の魔術に関する書物全てに精通するといわれている。
アルベルト・ローランドは言わずもがな、レイ・フールのあとを継ぐのは彼しかいないと序列全員の賛同を得て筆頭魔術師を名乗った王国最高の魔術師だ。
その二人の結婚式と筆頭魔術師就任記念式典は、合同で執り行われた。
合同だった理由には二つの説がある。
二人があまりに忙しく二回の式典に時間が割けなかったという説とアルベルト・ローランドがシェリアを愛するあまり、結婚式を待つことが出来なかったという説だ。
どちらにしても、その結婚式の当日には大空に虹が架かり、美しい花びらが色鮮やかに舞い散ったと言われている。
(たぶん、虹はレイラ様の水魔法の力だし、花びらはフール様からの贈り物の気がするの)
真っ白なドレスに身を包んだ私は、虹と花びらで色鮮やかに煌めく青空を見つめた。柔らかに花びらを届けた風が、ベールをひらりひらりと揺らしている。
目の前で幸せそうに微笑んでいるのは、筆頭魔術師として正装に身を包むアルベルトだ。彼の胸にはたくさんの勲章と魔石が飾られてその地位の重みを感じさせるようだ。
私ももちろん王立魔術院の部屋持ち魔術師なので正装は制服なのだけれど、アルベルトとミラベル様の強い希望で白いドレス姿だ。
風にたなびいた髪の毛は、青みを帯びた黒。
三年間見慣れた白銀の髪は、魔力がない証拠だと蔑まれる対象だったかもしれないけれど、とても美しかったと今でも思う。
「アルベルト……」
「シェリア」
私のベールをめくってそっと落とされた口づけ。
この時を、とても長い時間待っていた気がする……。
「それにしても、聞いてなかったんだけど?」
「待てなかった……」
「就任記念式典だと思って会場に来たら、そのまま花嫁衣装着せられるってどういうことなの!?」
アルベルトに詰め寄ったけれど、微笑んでもう一度落ちてきた口づけが私の言葉を塞いでしまった。
こんなふうにされてしまえば、それ以上何も言えなくなってしまう。
「ずっと、愛し続けると誓うからゆるしてくれないかな」
「……仕方がないから、許してあげるわ」
こうして私たちは、ようやく長い時間を越えてハッピーエンドを迎えた。
祝福の花びらも、美しい虹も、いつまでも消えることなく煌めいていた。
それもそのはず。初代筆頭魔術師の部屋持ちとなったシェリア・ウェンダーは希有なる闇魔法の使い手で、王国の魔術に関する書物全てに精通するといわれている。
アルベルト・ローランドは言わずもがな、レイ・フールのあとを継ぐのは彼しかいないと序列全員の賛同を得て筆頭魔術師を名乗った王国最高の魔術師だ。
その二人の結婚式と筆頭魔術師就任記念式典は、合同で執り行われた。
合同だった理由には二つの説がある。
二人があまりに忙しく二回の式典に時間が割けなかったという説とアルベルト・ローランドがシェリアを愛するあまり、結婚式を待つことが出来なかったという説だ。
どちらにしても、その結婚式の当日には大空に虹が架かり、美しい花びらが色鮮やかに舞い散ったと言われている。
(たぶん、虹はレイラ様の水魔法の力だし、花びらはフール様からの贈り物の気がするの)
真っ白なドレスに身を包んだ私は、虹と花びらで色鮮やかに煌めく青空を見つめた。柔らかに花びらを届けた風が、ベールをひらりひらりと揺らしている。
目の前で幸せそうに微笑んでいるのは、筆頭魔術師として正装に身を包むアルベルトだ。彼の胸にはたくさんの勲章と魔石が飾られてその地位の重みを感じさせるようだ。
私ももちろん王立魔術院の部屋持ち魔術師なので正装は制服なのだけれど、アルベルトとミラベル様の強い希望で白いドレス姿だ。
風にたなびいた髪の毛は、青みを帯びた黒。
三年間見慣れた白銀の髪は、魔力がない証拠だと蔑まれる対象だったかもしれないけれど、とても美しかったと今でも思う。
「アルベルト……」
「シェリア」
私のベールをめくってそっと落とされた口づけ。
この時を、とても長い時間待っていた気がする……。
「それにしても、聞いてなかったんだけど?」
「待てなかった……」
「就任記念式典だと思って会場に来たら、そのまま花嫁衣装着せられるってどういうことなの!?」
アルベルトに詰め寄ったけれど、微笑んでもう一度落ちてきた口づけが私の言葉を塞いでしまった。
こんなふうにされてしまえば、それ以上何も言えなくなってしまう。
「ずっと、愛し続けると誓うからゆるしてくれないかな」
「……仕方がないから、許してあげるわ」
こうして私たちは、ようやく長い時間を越えてハッピーエンドを迎えた。
祝福の花びらも、美しい虹も、いつまでも消えることなく煌めいていた。
17
お気に入りに追加
596
あなたにおすすめの小説
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~
白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。
国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。
幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。
いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。
これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる