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勘違いとお仕事中の旦那様 4
しおりを挟む双眼鏡で、お仕事中のジェラルド様を堪能してしまった。
何がどうなって、あんなにも素敵な人が私の旦那様になったのか理解に苦しむ。
「幸せそうでなによりだわ。愚兄から婚約破棄されていっそ良かったわね。明らかに叔父様のほうが良い男だもの」
「……そうですね」
「ずっと、好きだったものね」
「えっ!? なぜそれを!?」
「えっ、私の前であれだけキラキラと叔父様を盗み見ていて今さらだわ」
まさか、ジェラルド様への秘めた恋心を見抜かれていたなんて……。もしかして、他の人にも気が付かれていたのだろうか。
ジェラルド様に、ご迷惑をおかけしないように隠し通していたつもりだったのに、背中を冷たい汗が流れる。
「……心配しないで。私と二人きりの時以外は、あなたは完璧すぎる淑女だったから、誰にも気が付かれるはずないわ」
「そ、そうでしょうか」
「ええ。素を知って、本当に驚いたもの」
確かに、以前の私は、王国のためにすべてを捧げるのが正しいと信じていた節があった。
外で笑顔を見せるのも、ジェラルド様とレイレア様の前だけだった。
そして、涙を見せたのは、ジェラルド様の前だけだ。
「まあ、叔父様はあなたのことを本当に大切にしていたわよね」
「えっ?」
「私によく聞きに来たもの。私くらいの年の令嬢が欲しいものは何かって」
「……いったい誰のために」
「……私なら銀の竜のうろこを使った品が欲しい、と伝えた覚えがあるわ」
チラリと見た足下には、控えめでありながら、銀色に輝く靴がある。
ドレスの裾には、銀の竜のうろこを使ったビーズの刺繍。
そして脳裏によぎるのは、小さな子どものための、それでいて宝物のような銀の靴。
「え?」
「……気が付いてなかったのね」
「え、でも」
「確かに、はじめは庇護欲で、可愛いと思うだけだった少女はいつしか大人になり……」
楽しそうだ。そんなはずないと思っているのに、心臓がギュウギュウと締め付けられて苦しい。
「……そんなはず」
「あら、ずいぶん時間が経ってしまったわ。お暇するわね」
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