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文化祭の思い出は鮮やかに

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 しばらく待っていると、お兄様が駆けてきた。一晩中ずっと仕事していたと思われるのに、今日も兄は爽やかだった。

「リアナ!待たせたな?……というか、その格好?」

 そして何故か、兄が私とお揃いの騎士服を着用している。仕事というのは、騎士団の方だったようだ。

 意図せず兄とお揃いになってしまった。

「なんていうか、リアナのその姿……結構好きだな」

(そうですね。何だかフローラに、ナチュラル男装麗人風メイク施されてますしね。完成度は高いと思います)

 意外にもお化粧も得意だったフローラ。たぶん、ヒロインとしての素質をまだまだ隠しているに違いない。

 しばらく私のことを見つめていた兄が、手を差し出してくる。

 今年も繋ぐ気ですか?

 しかし、兄が爽やかに微笑んだら私に拒否権はない。こんな時の兄は、とても諦めが悪い。

「お揃いで手まで繋いだら、目立ってしまいます」

「お前がそんな格好してるから。……連れ去られたらどうするんだ」

 ん?兄は私の護衛騎士になる気ですか?マルク姫の護衛をお願いしたいのですが。

「あの、ところでお兄様?さっきよりさらに倒れている人が増えているみたいなのですが、何か襲撃でも受けているのでしょうか」

 何だか「キャーッ」という甲高い悲鳴まで聞こえてくる。気になってしまいそんなことを呟くと、なぜか兄が獲物を前にしたような表情で私を見つめてきた。

 私は兄にそのまま壁に追い詰められて行く。

「そうだね。もっと見せつけてあげようか?」

 こ、これは俺様王子お得意の壁……ドン?!
 え?兄の持ちネタじゃないですよね?
 それに妹にするのは完全アウトじゃないですか?!

「ほら、お揃いの隊服を着た騎士二人。こういう構図が好きだろ?リアナは」

 ひっ?!兄に私の嗜好がバレている。
 いや、大好物ですけど!
 あくまで自分は傍観者だから萌えるんですよ?

「で、出来ればランドルフ先輩とお兄様の……」

「面白い冗談だな。俺はリアナだけにしか、こんなことしたくない」

 ……え?私にしか、したくないって言いましたか?
 それに何だか少し怒ってます?

 岸に打ち上げられた魚みたいに、口がハクハクしてしまう。
 そんな私を見て溜飲を下げたのか、ようやく兄が私を解放してくれる。

「まあ、仕方ないか。可愛かったから許すよ」

 いや、許す許さないで言ったら、その答えを言うのは私の方なのでは?
 兄を睨んでみるが、ちょっと涙目になってしまったのでおそらく迫力はないだろう。

「うん。睨んでも可愛いだけだな。……でも、あまりの可愛さにやり過ぎた。ごめんな?」

 謝ったら何でも許されると思ってるから、爽やかイケメンは嫌なんです!

「ごめん、リアナ許して?」

 うっ……そんな目で見ないでください。私が悪いみたいじゃないですか。

「――――やり過ぎはダメです。お兄様」

「そっか。やり過ぎなければ許してくれる?」

「えっ?!」

 全く反省していない兄。
 手も離してもらえないまま、教室に向かうと、人集りができていた。

「えっ、すごい人集り」

 間違えたかとよく見ても、やはり二年のSクラスの教室だった。

「このクラスなので通してください」

 なんとか人を避けて到着するとそこには、御伽噺から抜け出してきた姫がいた。

「リアナ様、おはようございます」

 えっ、こんな麗しい人学園にいたっけ?
 美人なんて見慣れているはずの兄まで、そのあまりの美しさに固まっている。

 あれ、クラスメートの女子たちがなんだか自慢げにしている?

「えっ……。まさかこの絶世の美女って」

「分からなかったですか?マルクですよ?それにしてもリアナ様の騎士姿。凛々しくて美しいですね」

 な、何ですって!マルクくんのプリンセス役は予想を大きく超えてきた。
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