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禁書庫の司書
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放課後になると、ディオ様が教室まで迎えに来てくれた。わざわざ来ていただき申し訳ない。
実は学園内の間取りは頭に入っているゲームの地図と同じことが分かったので、図書室待ち合わせでも大丈夫だったのだけれど。
図書室でもよかったのに申し訳ない気持ちを伝えてみると「俺が早くリアナに会いたかったんだからいいんだよ」と微笑まれてしまった。逆に気を使わせてしまい恐縮した。
禁書庫のカギは金色のハートの意匠でかわいらしい。鍵を開けて入ると閉め切られていたせいか中は少しかび臭かった。
「……ひさしぶり。ディオ。この春に生きているキミに会えるとは思わなかったよ」
「お久しぶりです。ミルフェルト様」
禁書庫の中にはアイスブルーの髪と瞳をした幼女がいた。『春君』の世界でも、知識を高めるミニゲームでナビゲーターをしていたツインテール幼女ミルフェルト様だ。
「なるほど。そちらのご令嬢に移ったのか。……本当に忌々しい呪いだな。ん?なんだこれ?」
ミルフェルト様がすごく近くで私を観察し始めた。可愛い。しかし引きこもりには、ご尊顔が近すぎて、刺激が強すぎます。
「ふーん。ご令嬢。運命そのものが呪いみたいな存在だな。初めて見たよ!おもしろいなぁ」
「あの……」
「理由はわからないけど、18歳で破滅する運命が幾重にも重なり合ってるな。これさあ、ひとつぐらい増えたって大して変わらないんじゃ?おもしろい。ボクに研究、させてくれる?」
ミルフェルト様、ボクっ子だった!いや、もしかして、もしかしたら幼女ではない、ボクっ子どころか……そちらの線も捨てきれない!?
「あ、あのっ!私もミルフェルト様を研究してもいいですか?!」
「じゃあ、契約成立……なに、ディオ」
ミルフェルト様が、紫の魔法陣を私に向けると、慌てた様子であいだにディオ様が割り込んでくる。
「リアナ、契約なんて軽々しくしてはダメです!」
「――――ボクの邪魔をするのかな?」
目を細めたミルフェルト様。先程までの雰囲気と全く違う、すごい重圧感だ。
(あわわ!喧嘩売ったらいけない感じのお方なの?!そのことを分かっていながら間に入りましたね?!ディオ様?!)
「ふー。ま、君のことは気に入ってる。そんな必死な顔もできたんだね!面白かったから許してあげる」
再び幼女の表情でニコニコするミルフェルト様。それと同時に、周囲を支配していた重圧も霧散した。
もう騙されないんだからね!でも、やっぱりますます研究したい。
これがギャップ萌えかしら。
「契約しないでいいからさ。たまに会いにきてよ。楽しい話の対価に、ボクも君の力になってあげる」
「はい!私にもミルフェルト様の楽しい話、いろいろしてくれるんですよね?!」
ミルフェルト様が何度も瞬きをしている。ディオ様は、手のひらで顔を覆ってしまった。……何かおかしいこと言った?
「ふふふふ!純粋な魂。一体なにに目をつけられて、こんなことになっているんだい?いいよいいよ、君の力になりたくなった。対等な契約だ。これなら構わないだろ?ディオ」
「――――っ。ありがとう、ございます」
さっきの契約となにが違うのかわからないけど、魔法少女になってとか言われてないし、楽しいお話が聞けてディオ様にも異論がないなら万事オッケーなんじゃない?
今度こそ紫の小さな魔法陣を受け入れる。胸に吸い込まれていった魔法陣は、心臓に絡み付いていた呪いの蔦と一緒になった。
(んん?これはもしかすると一般的には呪いというのでは)
ディオ様を見ると、仕方ないなって感じに微笑んでいたので、大丈夫なのだろう。たぶん。
「早速なのですが、禁書を見せていただけるんですよね?」
「ボクと契約した君なら、特別禁書中の禁書だって見せてあげる」
ディオ様が息を呑んだ音が、隣の私にまで聞こえてきた。
「あ、ディオはそこで待ってて?リアナだけ特別なんだから」
「かしこまりました」
「さ、行こうよリアナ?」
「はい」
禁書中の禁書ってなにかな!?少し楽しみになってしまった私は、ミルフェルト様に連れられて禁書庫のさらに奥へと足を進めた。
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