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司書官のお仕事 1

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 司書官は、図書館の本を管理し、整備するのが仕事だ。そして多数の文献とデータを管理する司書官は、ときに偉大な発明や研究の助けとなり、古代の文献で呪いを防ぎ、天災の被害を最小限にする。

 ――あくまで、それが裏方であっても。

 その中でも、王立中央図書館の司書官は特別な存在だ。
 王立中央図書館は、王国の重要文書を一手に取り扱う。その中には、門外不出の魔法についてまとめられた文献もあれば、呪いのすべてが書かれているという禁書もある。
 それらの情報をまとめ、データを抽出することも、すべて王立中央図書館の司書官の管轄下にある。

「おはようございます」
「あら、おはよう。そして、婚約おめでとう」
「……司書官長、なぜご存じなのですか」
「ルードディア卿が、嬉しそうに触れ回っていたもの。それを聞いた男性職員たちが泣き濡れていたわよ」
「おじい様が……!? それに、騎士団長様に憧れている女性職員ならわかりますが、なぜ男性職員が!?」

 もしかすると、完璧で素敵すぎる騎士団長様は、女性だけでなく男性までも虜にしているのだろうか。あり得なくはない。

「……あまりおかしな誤解は、かわいそうだからやめてあげて」
「……司書官長は、騎士団長様と幼なじみでしたよね。今回の件について、何か聞いていませんか?」
「聞いてないわ。幼なじみに教えてくれないで電撃婚約だなんて、水くさいわね~」

 頬に手を当てた絶世の美女、司書官長は本当に何も知らないようだ。
 それにしても、彼女が婚約者だというなら納得もいくのに、耳と尻尾を条件に出したばかりに私なんかが婚約者になるなんて、騎士団長様が不憫だ。

「……でも、ずっと見ていたのだから、あなたが気が付いてくれて本当に良かったわ」
「……え? 何をですか」
「……あら? 気持ちが伝わったわけではないのかしら。外堀を埋めることにしたのね。狡猾な」
「……?」
「まあ良いわ。あなたはそのままでいてね。可愛いし楽しいから」

 よくわからない司書官長の言葉を思考の隅に寄せて、再び騎士団長様について考え始める。

 呪いが解けた暁には、騎士団長様は私みたいな地味な人間ではなく、相応しい令嬢を探すはずだ。
 触れ回ってしまっては、婚約解消のときに騎士団長様の経歴に傷がつく。

「……それにしても、おじい様ったら呪われて傷心の騎士団長様につけ込んだだけでなく、退路を断とうとするなんて」

 ため息をついて自分の席へ行くと、すでに書類が山のように積み上げられていた。
 その中には、もちろん今回の騎士団長様の活躍と呪いについての文書もあるのだろう。

 ――もちろん、私にも関係あるけれど、騎士団長様の呪いについて解明するのは、王国内の最重要案に違いない。

 いつもより明らかに量が多い文書を前に、今日は図書館の本館には顔を出せそうもないと、自分の名前の下に掲示するプレートを図書館業務中から最重要案件処理中へ替え、私はデータの分析を開始したのだった。
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