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第1章
聖女召喚されましたが、中継ぎらしいです 3
しおりを挟む「聖女様自ら、そんなことなさらなくても」
魔獣が魔核を取り出す作業は、重労働だ。
レナルド様は、気を遣ってくれるけれど、戦闘に参加してない私としては、手伝わせて欲しい。
魔獣ごとに、その魔力の源になる魔核がある場所は違い、知識がなければ、取り出すのは困難だ。厳しい聖女教育で、勉強した知識も、せっかくだから活かしたい。
「汚れてしまいます」
「汚れても、清浄魔法使えば良いから平気。私も一緒にしたいの。……ダメですか?」
「……聖女様。いいえ、御心のままに」
この圧倒的、わがまま聞いてもらった感。
きっと、一般的な聖女様は、こういったことはしないのだろう。
黙って、作業を続けながら、みんなの作業をそれとなく見る。そして、それぞれに個性があるのだと、感心する。
「すごい……。魔法を使って取り出すんですね」
ミルさんは、「そうよ。手が汚れるのは、イヤなのよ」と言いながら、風魔法で魔獣の体を切り裂いて、魔核を取り出す。
ビアエルさんは、素早すぎて手元が見えない、二人は参考にならなそうなので、ロイド様とレナルド様の手元を見る。
ロイド様は、意外とアバウトで、ザクザクと処理しながら、楽しそうに見える。
レナルド様はなんというか……完璧だ。ナイフを持つ手は、一分の隙もない。
どちらにしても、私がもたもたと、ようやく一個取り出した頃には、全ての作業は終了していた。
「清浄魔法かけます!」
仲間たちだけでなく、汚れていた周囲まで美しく、空気までも清浄になる。王宮では、聖女ではなく下女に相応しいような魔法だと、揶揄された曰く付きの魔法だ。
「相変わらず、素晴らしいわね」
「あ、便利ですよね?」
「そうじゃないの。魔獣は、同じ場所に繰り返し発生するけれど、これだけ聖域化していたら、この場所にはもうきっと、湧かないわ」
確かに、聖域化は言い過ぎにしても、この場所はなんだか爽やかだ。魔獣が湧かなければ、周囲の村の人たちも、助かるに違いない。
「……良いことですね」
「そう? 魔獣が湧かなければ、聖女様はますます……」
ミルさんは、言葉を濁した。仲間たちは、私をいつも気遣ってくれる。
まあ、確かにもっと魔獣が現れれば、聖女としての待遇は、良くなるのかもしれない。
でも、聖女なんて必要ない世界の方が、ずっと良い。
「平民たちの間では、聖女人気が鰻上り。いざとなれば、逃げれば良い。さ、魔核を売って、美味い飯でも食いに行こう」
ビアエルさんの、言う通りだ。
たぶん、ビアエルさんは、早くお酒が飲みたいだけだろうけど。
本当は、真っ直ぐ王宮に帰って、報告をあげなければいけないけれど、一働きした後は、美味しいものを食べたって、バチは当たらないだろう。
チラリとレナルド様を見れば、「聖女様の御心のままに」と返事が返ってくる。
「そんな大事ですか? そういえば、レナルド様と、ロイド様は、貴族様なのに普通に大衆食堂にもついていらっしゃいますよね?」
「……聖女様の行かれる場所なら、どこにだってついていきます」
レナルド様は、職務に忠実すぎると思う。
でも、一緒に食事ができるのは嬉しい。
王宮の中では、私の食事を斜め後ろで控えて見ているだけのレナルド様は、魔獣討伐の間だけは、一緒に食事をしてくれるから。
「そんな言い方では、聖女様には、伝わらないと思うわ」
「……事実を述べただけですよ」
「ジレジレしているの、見てる分には、楽しいけどね」
二人は、良くわからない会話をしているし、ビアエルさんは、ひたすら店内の樽を空にしている。
意外にもロイド様は、お酒は好きなようだ。黙ったまま、黙々と飲んでいる。
私は、楽しいと思える時間に感謝しつつ、今日も用意された、卵料理と野菜を口に運ぶのだった。
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