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エピローグ
しおりを挟む金色の光の花弁が舞い散る中、ミシェルは空を見上げていた。
この光は、ミシェルが聖女に選ばれたあの日と、同じものだ。
「――――シグル様」
「悪いが、付き合ってもらう。ミシェルは俺の婚約者だ」
精霊王が祝福の金色の花弁を王都に降らせるのは、聖女と新たな王位継承者の誕生。その時だけだ。
王位継承者は、人間が決めることも多い。花弁が降らないまま、王になることのほうが歴史上多いくらいだ。
けれど、王都のすべての場所から確認できるこの光。
正しい王位継承者が誰なのか、すべての国民の知るところになった。
そして、王位継承者と聖女はともにあるのが宿命だ。
それが、どんないばらの道であろうと……。
「私は、どこまでもシグル様と一緒にいます」
「そう? それならば、ミシェルのことを何としても守らないといけないな」
「うう……。信用ないですよね?」
「ああ。そういった意味では、決して信用しない。そして、決してミシェルが俺を裏切ったりしないことを盲目的に信じてもいる」
抱き上げられた腕の中で、ミシェルは身をよじった。
祝福の花弁は、まるで花吹雪みたいに舞い落ちて、王都全体に広がっていく。
「おめでとうございます」
後ろから声がして、振り返ればサイラスとルシェロが立っていた。
もちろん、カルラの姿もある。
王位継承者の変更。けれど、人間世界の派閥や、高位貴族たちの立場から、それはいばらの道なのかもしれない。
もう、ほとんど精霊ではなくなったカルラにとって、その先の未来を見通すことは、もうできない。
「祝福します」
「カルラさん…………」
もちろん、後世の歴史で語られるのは、精霊王に認められた賢王と聖女の物語だ。
王はすべての人間が等しく持つはずの恩恵を持っていなかったと語られる。
けれど、その治世は平和で幸福なものだったと、語り継がれている。
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