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半分こにしましょう。

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 どこまでも長い階段を下りていく。

 あまり薄暗いから、光魔法で小さな光の玉を作る。
 ふんわりと浮かぶ光の玉が足元を照らしてくれると少しほっとする。

「……え? 光魔法ってそういう使い方があるのか?」

 たぶん、戦闘でこの魔法を使ったなら、相手の視界を奪うに違いない。
 でも、あくまで私が使えるのは日常生活魔法レベルだ。

「威力が弱いから、明かりに丁度いいんですよね」

「――――未知数だ」

 そこまで感心されるほどのことだろうか。
 オレンジ色の光がベルン公爵の瞳に映る。
 それは夕暮れの草原みたいだった。

 ようやくついた場所には、緑色の宝石がついた扉があった。

「……王宮にあったのと、同じ石ですよね?」

「おそらく」

 まるで、吸い寄せられるようにその石に手をつく。

「あ、勝手に!」

 吸い寄せられてしまったものは、仕方がないのです。
 これは、風と火と水、そして土の魔力……。

 四つの属性魔法を混ぜたことはないけれど、確かに私の中にある。
 自然とその使い方を教えてくれている気がした。

 緑の木々の中、誰かが笑っている。
 美しい金の髪と緑の瞳。そして、長いとがった耳。

 たぶん私が知っているエルフのイメージを形にしたら、この女性になるに違いない。

 私の手から吸い取られた魔力。
 ああ……温存しておく約束だったのに。

 ――――ガチャンッ

「扉が……開いた。誰にも開けられなかったのに」

「……誰かが、呼んでます」

 その先には、一人の女性がいた。
 黒い髪に深紅の瞳。
 さっき見た、女性と同じ顔。長くてとがった耳。

 ウィルド伯爵にそっくりだ。

 そして、不思議なことにそこは森の中だった。

「……そろそろ来ると思っていたわ」

 女性は、大きな切り株から立ち上がると私に近寄ってくる。

「聖女の言った通りね。しかも、あの子の姿にそっくりだわ。それに、あなたの方も魔法使いのあの子にそっくり」

 モフモフの姿が……? と思って振り返ると、ベルン公爵の姿が王子様みたいになっていた。
 私も、ベルン公爵も魔法を使っていない。
 それなら、もしかしてこの人が……?

「く……」

 ベルン様が、急に膝をつく。
 その体を、紫色の雷みたいな魔力が包んでいく。

「ベルン様!?」

 駆け寄ろうとした私の腕を、どこにこんな力があるのかと思うほどの強さで女性が掴む。

「近づいてはだめ。巻き込まれるわ」

「でも!」

「ここにいる間は、呪いの効力は弱まるの。かわいそうに、二重にかけられた呪いで守られていたのね。先に異形化の呪いが弱まったのだわ」

 たしかに、ベルン公爵は命を奪う呪いに上書きするように呪いを重ねることで生き延びてきた。

 でも、こんなに苦しんでいるのを見ているだけなんて。

 私は、その手を振り払うと、ベルン公爵に駆け寄る。薄く目を開けたベルン公爵が、「セリーヌ、離れて」と静止しようとした手を掴む。

 その瞬間、バチンッと火花が散るように魔力が弾けて痛みが走り抜ける。

「くぅっ。やっぱり痛いんですけど!」

 この間と同じ、でも……。

 ベルン公爵が倒れてしまった時、寝かせてもらったあの緑色に光を放つ鉱石。そして、ここの扉にはめられていた同じ石に触れた瞬間の……。

「セリーヌ……お願いだから離して」

 ベルン様が泣いている。
 でも、一人で苦しいのはダメです。
 半分でもいいから、私も一緒に。

「ベルン様……受け取ってください」

 緑に色づいた私の魔力。
 そういえば、私から口づけするのは、とても久しぶりな気がした。
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