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私が悪かったのかもしれませんが。
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✳︎ ✳︎ ✳︎
あの、緑色の鉱石。
あの魔力を再現できないだろうか。
その解決方法は、もしかしたらあの人が知っているかもしれない。
それが、最近の私の関心事だ。
そして私は、ほんの少し怒っていた。
モフモフがこの世界で認められていくのは嬉しい。
ベルン公爵が、外に出て活躍するのも嬉しい。
でも、本にするなら相談してほしい。
特になんだ、あの35ページ目。
私は、羞恥心で震えました。
「――――ベルン様」
「なに、セリー……」
ベルン公爵が目を見開いた。
毛におおわれている、その美しい透明な緑色がはっきりと見える。
それはそうだろう。今日の私は、お姫様みたいなフリルとリボンで彩られたドレスを着ている。
あれから、ユリア殿下からは同じ系統のドレスがたくさん贈られたけれど、私は袖をまだ通していなかった。
「ベルン様……」
「セリーヌ、かわいい」
ベルン公爵は、なぜかこういう格好が好きみたいだ。
そっと寄り添う。今日も、極上の手触りをした毛並み。
「出かけてきます」
「え?」
「ウィルド伯爵にお会いしてきます。それに、そろそろ魔力をお渡ししないといけませんから」
それに、いくつかの文献を調べた結果、複合魔法はエルフが得意としていたことが分かった。
それなら、エルフの子孫であるウィルド伯爵なら何か知っているかもしれない。
「――――俺も」
私は少し笑った。だって、今日は陛下との謁見が予定に入っていることを知っている。
だから、出かけるなら私一人なのだ。
「……もう、約束を取り付けてしまいました。ベルン様は、王宮に行かれるのでしょう?」
「危険だから」
「――――アルト様が、ついてきてくださるそうです」
……ベルン公爵は無言になってしまった。
それを見て、少し留飲を下げた私は、甘いのかもしれない。
その直後強い力でなぜか後頭部を押さえられ、キスしたまま離してもらえなくなった。
そして、そのままなぜか腰のリボンがしゅるしゅると解かれていく。
「そうか……俺のこと置いていくの。この恰好をウィルド伯爵にも見せるんだ」
「え? ベルン様?!」
目の前にいる王子様は、意地わるそうな微笑みで私を見つめている。
どうも何かのスイッチを押してしまったらしいことを私は理解する。
そのまま、背中のボタンが外されていく。
「べっベルン様?!」
「セリーヌがいけない。こんな格好で出かけようとするから。もう、陛下に会うのもやめて、このまま……」
ボタンが途中まで外されたせいで広く開いた首元に、ベルン公爵が顔を埋める。
柔らかい髪の毛が素肌に触れてくすぐったい。
「俺とセリーヌ、どちらの予定を変更する方が良い? それとも、二人とも予定をキャンセルして部屋に籠ってしまおうか」
「え、ええ?!」
「――――これから先、どうなるかわからないからって、我慢しているのに。そんなに俺のこと煽るの楽しい?」
顔をあげたベルン公爵の瞳は、高熱がある時みたいに少しうるんでいた。
いや……破壊力?!
そのまま、もう一度口づけされる。
魔力が勢いよく吸い取られていく。
「ベルン……様」
「こんな風に、情けなく縋る姿なんて見せたくないのに。……それで、どちらの予定をキャンセルする?」
結局私は、今回も完敗してしまった。
土下座の勢いで、ウィルド伯爵に明日へ予定を変えて欲しいことを伝えると、「そうなると思っていたから、明日の予定はあけてある」とメッセージが届けられた。
……おやぁ?
そのメッセージを見た、ベルン公爵は満足げに微笑んだ後、「後で面倒なことになるから、陛下に会ってくる。続きはあとでね」といって陛下との謁見のために出かけて行ってしまった。
続きとはなんだろうか……。私はベッドに倒れこんでゴロゴロと身もだえした。
あの、緑色の鉱石。
あの魔力を再現できないだろうか。
その解決方法は、もしかしたらあの人が知っているかもしれない。
それが、最近の私の関心事だ。
そして私は、ほんの少し怒っていた。
モフモフがこの世界で認められていくのは嬉しい。
ベルン公爵が、外に出て活躍するのも嬉しい。
でも、本にするなら相談してほしい。
特になんだ、あの35ページ目。
私は、羞恥心で震えました。
「――――ベルン様」
「なに、セリー……」
ベルン公爵が目を見開いた。
毛におおわれている、その美しい透明な緑色がはっきりと見える。
それはそうだろう。今日の私は、お姫様みたいなフリルとリボンで彩られたドレスを着ている。
あれから、ユリア殿下からは同じ系統のドレスがたくさん贈られたけれど、私は袖をまだ通していなかった。
「ベルン様……」
「セリーヌ、かわいい」
ベルン公爵は、なぜかこういう格好が好きみたいだ。
そっと寄り添う。今日も、極上の手触りをした毛並み。
「出かけてきます」
「え?」
「ウィルド伯爵にお会いしてきます。それに、そろそろ魔力をお渡ししないといけませんから」
それに、いくつかの文献を調べた結果、複合魔法はエルフが得意としていたことが分かった。
それなら、エルフの子孫であるウィルド伯爵なら何か知っているかもしれない。
「――――俺も」
私は少し笑った。だって、今日は陛下との謁見が予定に入っていることを知っている。
だから、出かけるなら私一人なのだ。
「……もう、約束を取り付けてしまいました。ベルン様は、王宮に行かれるのでしょう?」
「危険だから」
「――――アルト様が、ついてきてくださるそうです」
……ベルン公爵は無言になってしまった。
それを見て、少し留飲を下げた私は、甘いのかもしれない。
その直後強い力でなぜか後頭部を押さえられ、キスしたまま離してもらえなくなった。
そして、そのままなぜか腰のリボンがしゅるしゅると解かれていく。
「そうか……俺のこと置いていくの。この恰好をウィルド伯爵にも見せるんだ」
「え? ベルン様?!」
目の前にいる王子様は、意地わるそうな微笑みで私を見つめている。
どうも何かのスイッチを押してしまったらしいことを私は理解する。
そのまま、背中のボタンが外されていく。
「べっベルン様?!」
「セリーヌがいけない。こんな格好で出かけようとするから。もう、陛下に会うのもやめて、このまま……」
ボタンが途中まで外されたせいで広く開いた首元に、ベルン公爵が顔を埋める。
柔らかい髪の毛が素肌に触れてくすぐったい。
「俺とセリーヌ、どちらの予定を変更する方が良い? それとも、二人とも予定をキャンセルして部屋に籠ってしまおうか」
「え、ええ?!」
「――――これから先、どうなるかわからないからって、我慢しているのに。そんなに俺のこと煽るの楽しい?」
顔をあげたベルン公爵の瞳は、高熱がある時みたいに少しうるんでいた。
いや……破壊力?!
そのまま、もう一度口づけされる。
魔力が勢いよく吸い取られていく。
「ベルン……様」
「こんな風に、情けなく縋る姿なんて見せたくないのに。……それで、どちらの予定をキャンセルする?」
結局私は、今回も完敗してしまった。
土下座の勢いで、ウィルド伯爵に明日へ予定を変えて欲しいことを伝えると、「そうなると思っていたから、明日の予定はあけてある」とメッセージが届けられた。
……おやぁ?
そのメッセージを見た、ベルン公爵は満足げに微笑んだ後、「後で面倒なことになるから、陛下に会ってくる。続きはあとでね」といって陛下との謁見のために出かけて行ってしまった。
続きとはなんだろうか……。私はベッドに倒れこんでゴロゴロと身もだえした。
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