【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?

氷雨そら

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吸血鬼と晩餐会ですか?

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「月の女神が舞い降りたかと思った」

「冗談ばかり」

「俺はいつも本気だ。知っているくせに」

 今日は、ベルン公爵を支援する派閥の貴族たちとの交流。ベルン公爵と私はある伯爵家の晩餐会に招かれている

 髪の毛を高く結いあげて、毛先は緩く巻いている。月をモチーフにした髪飾りには、星の形をした小さな宝石がチェーンに繋がれていくつも下がり、満天の星みたいだ。

 ドレスは、首元が広く開いたマーメイドラインで大人びている。白に近いシャンパンゴールドは、確かに月を連想する色合いだった。

 ネックレスには、髪飾りとお揃いの星が連なっている。

 侍女たちは、仕上がりに大満足だったようで、ずいぶんと盛り上がっていた。

 いつもは仕上がりに厳しいアンネまで「完璧です!」と太鼓判を押してくれたから、それなりに見られるようにはなっているに違いない。

 私は柄にもなく、とても緊張していた。
 そして、テンションも急上昇していた。

 今日招かれたのは、ウィルド伯爵家。
 そう、悪役令嬢の断罪エンドの一つ、吸血鬼疑いのお方のお屋敷に招かれたのだ!

 そして、勇者と弓使いの末裔。

 ここまでで、私は一つの推測をしていた。
 弓使いといえば、もちろんエルフ!
 ウィルド伯爵はおそらく、エルフの末裔ではないかと。

「あのっ、今日の格好おかしくないですか?」

「だから美しいと……。どうしてそんなに嬉しそうなのかな?」

「え?」

「ウィルド伯爵に会いに行くことが決まってから、廊下の拭き掃除の時、よく鼻歌を歌っていたよね?」

 廊下掃除の時に鼻歌を?!

 それ無意識です。かなり恥ずかしいから、指摘しないでください!

「なんでそんなに、ご機嫌だったのかな? もしかして……初対面ではないとか?」

「あわわ」

 超絶美形が笑顔のまま凄むと、迫力が半端ないのでやめて欲しいです! そんなご尊顔すら、アルバムに収めたいくらいだなんてズルイです!

「ちゃんと、全部話してくれるんだよね?」

 なぜか、急に魔力の制御が悪くなっていませんか? バチバチと触ったらいかにも痛そうです。

 ……というより、痛いんじゃないですか?

「あの、ベルン様……」

「こんなことで嫉妬をむき出しにする俺は、みっともないかな?」

 痛くないかと聞こうと思った瞬間の、あまりに大きな変化。少し屈んで上目遣いは、反則だと思います!

「ひぇっ?」

 ――――可愛すぎませんか?

 急にしゅんとした様子に、魂を全て持っていかれてしまった私は、ウィルド伯爵についてゲーム内で知っていることを、洗いざらい喋ってしまった。
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