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お役目は星々とともに

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プロローグ

 私の名は時一郎。東日本の海沿いにある小さな町に住む中学二年生だ。祖父のような時計職人を目指し、日々学業と機械いじりが大好きな、至って普通の十四歳である。祖父の死後に形見として託された地図に興味を持ち、青鳥居の神社の前に来た。これからを起こる不思議な出来事は、私を呆然とさせることばかり以上に私自身の未来に関わることでもあった。私はこのことを次の世代に繋げるために書き記したい。たれにでも起こり得る不思議な事象は、あなたのすぐそばにあるのだから……。


第一章 祖父が導く青鳥居

 青鳥居を持つ神社は、私の住む町の海岸に人知れず建っていた。日ごろの管理もされていないのであろう。参道は覆いかぶさるように篠竹が茂っており、鬱そうとしている。自ら人を寄せ付けないようにしているかのようであった。
 そのやや気味の悪い神社の青鳥居の前に私は立っていた。異様さを放つ雰囲気は、私の歩みを阻んでいる。
「この地図からすると、この鳥居の真下を記しているように読み取れるようなのだが……。」
先日、亡くなった祖父の遺品を整理したとき、この地図が出てきた。有名な時計職人であったものの祖父の遺品は財産をとして値を張るものは残されていなかった。そのため祖父の娘である私の母は、遺品を家族と親戚で形見として分け合うことでその場をを進めた。私が形見として渡されたのは、子供のいたずらのように思えたこの地図であった。母は、
「これ面白そうだから時一郎が持ってなさい。『時一郎へ』と書いてあるし。爺さんの形見として丁度いいんじゃない。」
と、私に託したのだ。
 しかし、私はそれを受け取った瞬間に「この地図には何か重大な秘密があるのではないか。」と感じてしまったのである。地図には、祖父の筆跡で「×宝」と「月晦日」いう字が見て取れた。遺品の中で唯一ご指名をされていたものこの地図であった。祖父の性格からして冗談で私宛にしていたとは考えにくい。「宝」と「月晦日」以外は英語以外の他国語で何かが記してあり、私には読めなかった。しかし、この「×」が記す場所に行くことが運命を左右することになると私の好奇心が疼くのである。そして「絶対何かあるに違いない。今度の月晦日に行ってみるか。」という強い思いが私を突き動かしてしまったのだ。
 青鳥居は、いまだ私の侵入を拒んでいるかのようだ。奥に見える古めかしい社殿も同様の雰囲気を醸し出している。もうすぐ夕暮れだ。青さはより濃さを増し、妖の世界へと誘う雰囲気を持ち始めている。ごくり。私は唾を一飲み、緊張した足取りで鳥居を潜った。


第二章 サボテンに誘われて大樹のもとへ~祖父の秘密~

 私が恐れていた青鳥居とは何だったのだろうか。私はついに変になってしまったのかもしれない。薄暗く不気味さを醸し出していた周りの雰囲気は一転した。一面の砂漠となり、照り付ける太陽はまるで真夏。光と熱のカーニバルである。どこからかサンバのリズムが聞こえてきた。
「ヘイ!ボーイ、君はどこから来たの。急に現れて驚かせないでくれヨ!」
と話しかけてきたのは一本のサボテンだった。彼は、マラカスを振りながら、カーボーイハットを斜にかぶりっていた。全身を黄金色の針と緑色の樹皮で覆われ、照らつくいかついボディが砂漠とマッチしている。
 私は、今自らが置かれた状況が整理ができなかった。「こ、これはなんなんだ。現実か、それとも夢。一体……。」
「ヘイ!ボーイ、状況が掴めていないようだネ。ここは雪一郎が生み出した別次元の世界なんだヨ。ヘイ!ボーイ。君は雪一郎に招待されたようだネ!」
 陽気なサボテンは、勝手に、そしてリズミカルに語った。私は少しだけ状況が飲み込むことができた。要は、祖父が何らかの方法で創り出した現実とは異なる世界に迷い込んだのであり、その住人たるサボテンに一方的に話をされているということであった。
「私は、この地図をもとに神社に向かって鳥居を潜ったんです。そしたらここにたどり着いて……。」
と、私はサボテンに地図を手渡した。サボテンは針で地図を傷つけないよう、器用に取り上げ舐めるように地図を見始めた。
「ヘイ!ボーイ。これはこの世界に入るための場所と決められた日を記したものだネ。おそらくここに来るために精霊語の一部が使われて消えてしまったと思うヨ。残りはとある場所へ転移する呪文が記されているネ。この「×宝」は、君が潜り抜けた鳥居を『×』として雪一郎がしるしたようだネ。『宝』は分からなイ。雪一郎にとってこの世界が『宝の場所』と考えていたのかもしれないネ。それと、決められた日にしか、この世界に入れないようになっているネ。今日のような月晦日にしかここに来れないヨ。ところで、雪一郎はどうしたのサ。このところ見かけないのだヨ。いっしょではないのかイ。」
 私は、地図を見返した。確かに読めなかった一部の文字が消えている。また、サボテンに祖父が半年前に亡くなったこと、その遺品としてこの地図を託されたことを説明した。
 サボテンは、そのことを聞くと空を見上げ、ギラつくサングラスの奥から一筋の涙を流した。
「そうすると君は雪一郎の……。」
「はい、私は雪一郎の孫です。時一郎といいます。」
サボテンは、サングラス越しであったが、私の目をじっと見ていた。
「雪一郎は、この世界の番人たる役割を君に託したんだネ。ということは、雪一郎のお役目を君が引き継ぐというわけダ。しかし、もう雪一郎に会えないのは寂しく、そして悲しいネ。でも、君は少し雪一郎に似ていル。君は時計が大好きかイ。」
私は強く縦に頷いた。そして、私自身も祖父と同じ時計職人を目指していること伝えた。
「おそらくその思いを見込んで、その地図が君の手に渡るようにしたのだろウ。お役目の後継者を上手く選び出そうと長い年月をかけて君を育てたんだネ。生真面目なヤツだヨ。そういうことをさりげなくできるのが雪一郎なのサ。」
 サボテンは僕の肩をポンと叩いた。以外に針は柔らかかった。
「ヘイ!ボーイ。私の後ろの建物の瓦礫が積まれているだロ。そこに扉があるのが見えるだろウ。そこから雪一郎がこの世界で一番好きな、いや愛した場所だった世界につながっているヨ。雪一郎が番人を君に託した理由も分かるだろウ。ここ以上の驚きが待っているかもしれないヨ。」
 サボテンの後方には、建物と思しき瓦礫と建材の成れの果てが無造作に積まれていた。その一番手前側に壊れた扉が立っていた。時折、ギイーと鳴きながら僅かに開閉を繰り返していた。まるで、私を誘っているかのように。
 

第三章 カプセルに込められたモノ

 サボテンに別れを告げ、私は壊れた扉に向かった。扉は、まるで私を迎え入れるかのようにゆっくりと開き始めた。しかし、扉の先は周辺の砂漠が見えるだけであった。
 サボテンは、祖父雪一郎がこの場所を創り出した理由やこの場所での役目を私に託したことも分かるだろうと言っていた。思えば遺品整理の際、この遺品のみ「時一郎」と指名されていた。私に渡されることが必然となるよう仕込まれていたのであろう。すべて祖父雪一郎の思惑通りにことが動いている。サボテンも祖父のことに触れ、私がこの先の出来事に対する好奇心を高められるよう演じていたのであろう。一体、祖父雪一郎は何を私に伝えたいのであろうか。
 祖父雪一郎は、戦時中に生まれた。生前は物静かで生真面目な人であった。彼は時計職人で、時計職人の神として同職からも、そして多くの顧客に愛されていた。その生み出した時は人を良き未来に導くともいわれていた。私の名前の由来も、「祖父の実直に時計に向き合う姿に尊敬の意を込め、一文字得たものだ」と父から聞いていた。私はそんな祖父が好きだった。時計の緻密な部品作りをはじめ、歯車を含めた各部品が組み合っていく精細な仕事をこなす姿に憧れ、さらに誰にでも物腰柔らかく話す様子は、精密機械に対する関心をさらに刺激する場である一方、そばにいると心が安らぐ居心地の良い場にもなっていた。私もいつか祖父のような時計職人になりたいと思うようになったのもその場で祖父の背中を見続けたことが影響したと思う。祖父は私が誕生する前に祖母を亡くしていた。そのため母を男手一人で育て上げた。そんな祖父が亡くなったのは半年前だった。亡くなる前日まで受け持っていた仕事を仕上げ、その翌日に亡くなった。死因は老衰であった。まるで自らの死期を悟って仕事をしていたかのように、最期の 最後まで生真面目な人であった。
 そんな祖父が伝えたいことがこの扉の奥にあるのだ。私は速足で扉を潜り抜けた。
 目の前にはさわやかな平原が広がっていた。遠くに小高い丘があり、そこには大樹といっても過言ではないこの地の主がそびえ立っていた。枝は四方八方に広がり、巨大な影を作り出していた。まるで地面に生きる者を煌煌と照らす太陽光から守り、一刻の安らぎを与えているかのようであった。
 私は、大樹の根元に向かった。緩やかな傾斜が根元である頂上まで続いていた。道中、所々に巨石が居座っている箇所があったが、行く手を阻むようなものはなかった。頂上付近は、ゴツゴツとした大樹の根が現れ、根元に近づくにつれて浮き出た根の密度が徐々に濃くなっていた。根の所々には惑星や星の名前を記した札が立ててあり、この大樹と星は関係があるのだろうか。大樹の根元は地上に浮き出た太い根に覆われていた。幹は直径三十m近くになるだろうか、高さも二百メートル近くあるようだ。このように巨大な樹木はこれまでに見聞きしたことがない。大樹に驚いているばかりではない。あたりを見渡すとこの草原は果てしなく広がっていたのである。集落や農地もなく、ただ草原が広がっているだけであった。まるで現実とはまるで異なる世界。草原の大海のようだ。
「この世界も祖父が創り出したのかな……。」
 この大樹と草原を前に少々呆然としていると、柔らかな風がすうっと駆け抜けた。
「ようやく来たか。」
 未来永劫、絶対に聞くことができない声が、私の背後から耳を貫いた。振り向く前にまた声が聞こえてきた。
「半年も待たせおって。時の番人のお役目を引き継ぐ前に本当に逝ってしまうわい。時一郎よ。元気にしておったか。」
 急に目頭が熱くなった。この声は祖父雪一郎の声。忘れるはずのない死んだ祖父の声であった。涙をぬぐい振り向いてみると、雪一郎は亡くなる前の姿で私を見つめていた。私は祖父に強く抱きしめた。雪一郎は「痛い、痛い」と言いながらも私のことを抱きしめ、頭をなでてくれた。
「もう少々生きたかったのだが、寿命の神様がもう充分、それ以上生きたんだから逝けと。それには逆らえないので、死を受け入れた。しかし、霊体として幾分の時間を頂けた。よかった、よかった。」
 私は、祖父が不可思議なことを言っていることは分かったが、とりあえず聞き流した。そして、一つ聞いてみた。
「あの地図は何なの、それにここは何処なの。」
「あの地図、なかなかなもんじゃろう。青鳥居の神社は誰も近寄らんし、妖の巣を入り口にするなんて、ワシらしさが出て最高じゃったろう。サボテンも陽気ないい感じじゃて。ワシのお役目のことや秘密も少し触れることができたじゃろ。あの地図には精霊様のお言葉である精霊語が二言入れてあってな。サボテンの世界に通じる言葉とサボテンの世界からこの大樹の世界に通じる言葉が書き記してあってのう。上手くここに着いてくれて助かった、いや良かったわい。思惑通りにことが進んだ、進んだ。」
 私は、呆然として祖父の話を聞いていた。あの生真面目一直線の祖父がチャーミングな感じで話をしていることもさることながら、やはりこれまでの全てが祖父雪一郎の思惑通りであったのだ。
「本当にあなたはじいちゃんなのか。ここに私を呼び出したのもじいちゃんの計画どおりということなの。」
と思わず私は口に出してしまった。すると雪一郎は「これが本当のワシであり、時一郎、お前が言った通りじゃ。」と言わんばかりの笑顔で返してきた。
「時間もあまりない。早速だが時一郎よ。わしの時の番人としてのお役目を引き継ぐぞ。その前にこの世界が生まれた理由やここでのお役目についてもう少し詳しく伝えたいのじゃが、よいか。」
雪一郎がいつもの生真面目な顔で話を進めてきた。どうやら、雪一郎がこの場にいられる時間は限られているようであった。
 雪一郎の話によると、戦時中に防空壕へ避難をした際、その防空壕に住み着いていた時の精霊と雪一郎がお役目の契約をしたことにより、この「時の番人」をという役目を担うこととなった。その後、雪一郎は一般人がこの世界に入り込み、混乱が生じることを避けるため入り口となっている青鳥居の神社に時の精霊の力を借りて人を寄せ付けない結界を張った。万が一、一般人が侵入したときのことを考慮し、契約者以外をサボテンが居た世界に飛ばし、サボテンなどの記憶を消去し、神社の参道前に転移させていたことなど様々な仕組みを作ったことを話していた。青鳥居の神社の管理が滞ったり、不思議体験をするオカルトの場として、近づき難い場となったのは祖父のギミックのせいであったのだ。さらに、この草原の世界は祖母の好きな風景であった故郷をイメージした場として創り直し、この草原の世界こそが時の精霊と契約したお役目を果たす場であるとのことであった。
「じいちゃん、時の精霊って何なんだよ。すでに現実とは違う世界とか、話すサボテンとかで頭がおかしくなりそうなんだ。ひとつずつ教えてくれよ。」
 雪一郎はまっすぐ私の目を見つめたまま、ゆっくりと口を開いた。
「今から話すことは、他言無用じゃ。話しても変人扱いされるだけだからのう。だが、時一郎はここの存在を知ってしまった。じゃから根幹を話そうと思う。「時の精霊」とは我々が現実世界のすべてを時間を制御している統率者のことじゃ。地球や各惑星、宇宙のすべての星々を制御している。それと、ワシがこの世界に導かれたのは時の精霊様との出会いが原因だ。戦時中の空襲の際、青鳥居の神社の裏にある防空壕に避難したとき、赤子だったワシには時の精霊様が見えてしまった。時の精霊様は人との接触がほとんどないため慌ててしまった。赤子のワシが精霊様に向かって左手を差し出したことを契約行為と勘違いしてしまい、ワシが十になる年にこの世界で時の番人になる契約を交わしてしまったのじゃ。」
 雪一郎は、少し興奮気味に話していた。そして左手首の裏にある痣を私に見せた。
「このL字が先に話した契約の証、契約紋章じゃ。」
祖父の左手首に痣があることは知っていた。しかし、仕事中の怪我によるものと聞いていた。ところがそうではなく、L字は契約紋章という証であるというのだ。よく見ると尖った長針と短針の形をしており、三時を刻んでいるように見える。
「この契約紋章が刻まれてからこれまで、この草原で現実世界の無限の星々で多々起きる時間障害を修正する番人としてお役目を担うこととなった。毎月の晦日にこの草原の中央にある大樹の根元でな。時の精霊様からこのカプセルに入った精霊液をいただき、アフタヌーンティーの紅茶で飲み干す。そうする現実世界の宇宙における基準時間と星々の時間を観測することができるようになるのじゃ。このことによって、宇宙の時間軸とズレを生じている星々の時間を確認し、修正するお役目を行うこととなるのじゃ。また、このカプセルの効果は、契約紋章を持つ者しか得られないため、今のところ誰も手伝うことができないのじゃ。」
 祖父は、大樹の幹に契約紋章を当てた。そうするとなんと算盤のような道具が浮き出してきた。大樹に根元に蔓延る根に契約紋章を当てた。今度は地球という名が刻まれた算盤が現れた。
「これを星刻算術盤という。梁を境に上下の段に分かれており、上段の一珠は時を修正するスイッチのようなものだ。下段の珠は星が生まれてからの時が示されており、年、月、日、時、分、秒で便宜上示しておる、それぞれの縦軸に一珠が貫かれており、細かい星の時を刻む珠となっておる。これは地球のものだ。時一郎もこれを見れば、今日の地球の時間が刻まれていることが分かるだろう。」
星刻算術盤をのぞき込むと、地球が誕生してからの時が日本の時間帯で刻まれていた。私の腕時計と同様なので間違いない。雪一郎は続けた。
「時間軸は星によって異なる例えば星によっては一日が十時間のところもあれば、数百年のところもある。そのため、各星の算術盤を精霊様にお渡しし、ズレが生じている時間幅をお教えいただき、正しい時間に修正するのがワシの仕事であった。しかし、半年前に寿命を迎え、あの世に来てしまった。後継者をどうしようかと悩んでいた最中であったこともあり、申し訳ないが、時計や機械が好きな時一郎を指名できるようにしたのじゃ。」
 さも、後継者を私に初めから決めていたような顔で、私の目を直視していた。
 要するに宇宙の時間を標準時間として、星々の時間のズレを正常化する仕事ということらしい。地球は四年に一度、二月二十九日があるうるう年がそれもこのお役目が修正していたというのだ。近年、その調整を祖父が行っていたと聞いて驚きであった。
「ちなみにいくつの星の時間を修正をしていたの。」
「言いにくいんじゃが、無数と言えよう。しかし、この世界では精霊様の加護のおかげで不老不死となり、もとの次元にも世界転移した時間に戻ることができる。いつまでもここでお役目に徹することができるのじゃ。」
 時折、疲れ切った祖父を見ることがあった。それはこの世界でお役目を果たすため長い時を過ごし戻ってきたからなのであろう。
「一応聞くけど、じいちゃん。一回の転移で最大で何年この世界にいたの?」
私は恐る恐る聞いた。
「三十年程度が最高じゃな。大抵は一週間くらいで修正は完了する。修正にはちょっと厄介なこともあるのじゃが、それは追々分かってくるじゃろう。それにこの世界に居過ぎると、危なく家族や住まう町についても忘れてしまうこともあるので危なかったわい。」
 私は考えていた。星々の時間を管理調整するという謎の仕事には興味がある。おそらくこの大樹の根の数だけあり、生まれては死にという輪廻転生を星は繰り返しているのであろう。星のわずかな時間軸を正常にすることで、星の一生を左右するかもしれないこのお役目は、時間を将来の仕事として考えていた私にとって非常に興味深く、決して現実世界では経験できないことである。しかも、祖父の積み上げてきた道を引継ぐことも引き受けたい気持ちも強かった。
「いいよ。じいちゃん。私がそのお役目を担うよ。」
「本当にいいんじゃな。過酷なお役目だぞ」
「ああ。」
「では、時の精霊様の御前に案内しよう。」
 祖父誠一郎は、胸ポケットにしまっていた虹色の万年筆を手にし、目の前の空間に自らの氏名をサインした。すると私が瞬きする間もなく、時の精霊の間に転移したのだ。「じいちゃん、魔法使いだったのか…。」と祖父を見ると、服装も先ほどまでのくたびれたワイシャツにスラックスではなく、貴族が羽織るような洋装で直立していた。
「時の精霊フュラー・クロノシア様、時の番人の後継者をお連れいたしました。私雪一郎の孫である時一郎でございまます。」
 私は時の精霊の姿を一目見て、驚きを隠せなかった。そして思わず、
「ばあちゃん!」
と言ってしまったのである。祖父は私を見てまたニヤついていた。
「初めまして、になるのよね。時一郎。大きくなったのね。」
「どうなっているんだ。私はもうお手上げです。」
私は両手を空高く上げた後、その場に座り込んだ。
「兎にも角にも、時の番人を引き継いでくれてありがとう。雪一郎さんが亡くなったときは、この先、お役目をどうしたらよいものか困り果てていたところだったの。そこに霊体となった雪一郎さんが、時一郎をこの場に連れてくる良い方法を組んでいると聞いて、安心していたところなの。現にこの世界に来て、お役目の引継ぎも承知してくれた。心から感謝しております。」
 時の精霊フュラー・クロノシア改め、祖母由良は玉座から立ち上がり、私のもとへ来た。そして優しく私を抱きしめた。その姿を見て雪一郎は目頭を熱くしていいた。
 祖母は、私が生まれる前に亡くなったと聞いていた。自宅で見た写真には三十代半ば当たりの姿が一枚残っているだけであった。出身地はロシアで、肌が透き通るように白く、白銀の妖精とも称され、美しさは世間を驚かせるほどであった。しかし、もともと身体が弱く流行り病にかかり亡くなった。そのように聞いていた祖母がその美しい姿でここにいる。それも時の精霊なのだ。星々の時を司る精霊が祖母で、祖母からのお役目を祖父が長年果たしてきた。一体どういうことなのだろう。
「とにかくお茶でもしながらこの先のことを話そう。」
と、祖父はいつのまにかアフタヌーンティーの用意を終わらしていた。私は、温かな紅茶とスコーンを頬張り、時の精霊、いや祖母由良の話を聞くことにした。祖母はゆっくりと口を開いた。
「雪一郎さんと契約を結んだのは私です。幼子の雪一郎さんは私をはっきりと認識し、手を差し出してきました。認識してもらえることが精霊にとってどれほど嬉しいことか。」
「赤子だからたまたまでは……。」という野暮な突っ込みはしない。
「その後、私は雪一郎さん一家の近くに引っ越してきた家族の一人として幼少期から雪一郎さんとともに学び、遊び、その先に結ばれました。雪一郎さんは、私が人ではないと薄々感づいていたようでしたが、周りには黙っていてくれたようです。私は人間の姿を維持しながら精霊お役目を果たすことで、時を制御する力を使い果たしてしまいましたが、雪一郎さんが私の代わりにお役目の一部を十才から担って頂けたことで、二十五年かけて、この世界と現実世界を行き来し、少しずつ精霊としての力を取り戻してきました。今は、本来の星刻制御を不完全ながら行っています。漸く、お役目を適切に進めてきた矢先、今度は雪一郎さんの寿命が尽きてしまいました。またもや星刻制御ができない状況が発生してしまい、星々の環境に混乱が生じ始めてきました。そこで、時一郎、あなたが必要になったのです。雪一郎さんと同じくらい時間を愛しているあなたなら、このお役目を引き受けることに適任者であると思っています。それに私の血縁者でもありますから。」
 なるほど、そういうことか。ただ単に時間が好き、興味がある人では適任とならない。時を心から愛する人、そして精霊の加護(血縁者など)を受けていることが要件となると考えられる。祖父が急ぐのも無理ない。自分は霊体であり、いつあの世に旅立ってもおかしくない状況である。そのため、雪一郎はこの茶会を開き、様々な経緯を徐々に私に伝えていったのであろう。それにしても、私には精霊の血が流れているんだなと驚きであった。
 契約の引継ぎに必要な要件は祖母から伝えられた。このカプセルに入った精霊液を私と祖父が飲み、祖父の契約紋章のある右手首と私の右手首を重ねることで成立するという。
「雪一郎さんがこの場にいられる時間もあと僅かなのでしょう。実態は亡くなっているのですから。」
「急ぐぞ。時一郎。引継ぎが成立するとワシは、あの世に行くこととなる。由良さんにも会うことはないだろう。この数時間、かなり楽しませてもらったぞ。お前の母親にもよろしくな。そしてばあさんを、由良さんを困らせるようなお役目をするでないぞ。」
私は赤と白のカプセルを飲んだ。祖父は青と白の同様のカプセルを飲んだ。
そして、互いの手首を重ね合わせた。徐々に紋章が私の手首に移し刻まれていった。
「由良さん改め時の精霊フュラー・クロノシア、赤子の出会い、十からのお役目と言葉では言い表せないくらい素晴らしい時間を過ごさせて貰いました。いつまでも、いつまでも愛しているよ。精霊は死という概念がないと聞く。いつか会うことがあったらまた手をつないであの草原をかけ……。」
そう言いかけ、雪一郎はふわっと空へ浮かび光となり消えた。同時に契約紋章も私の右手首に全て刻まれた。
「雪一郎さん…。本当に、本当にありがとう、愛しているわ…。」
由良の両眼は涙であふれていた。


第4章 時を蝕む蟹退治

 雪一郎の思いは、孫の時一郎に引き継がれた。そして精霊フュロー・クロノシアこと祖母由良の星刻制御というお役目を手伝うこととなった。先ほど、アフタヌーンティーを頂いたテーブルに座り直した由良は、改めて時の番人としてお役目を受けてくれたことに感謝の意を告げた。
星刻の調整は、毎月の晦日に行われる。まさに今日がその日であり、時の調整に必要な時間は無限にあるといえよう。なぜなら、祖母と契約を交わしている限り、この世界では不老不死であり、転移直後の時間に帰ることができるため、現実世界に影響を与えることはない。調整には星刻算術盤を使用し、時を調整することを祖父から教えてもらっている。時の正常化はその後、精霊による承認行為で完了する。そのため、まずは現時点の調整が必要な星の数とその他必要なモノとコトを確認することから始めよう。
「ばあちゃん、いや精霊様、今時点で調整する星はいくつあるの。」
私も仕事となれば「ばあちゃん」ではまずいと思った。しかも見かけは三十代である。そのため「精霊様」と呼んだ方が自然であろう。
「時一郎、『由良さん』と呼んで構わないわ。以後、そのように呼んで。私もあなたを「時」と呼ばしてもらうわ。」
なんか少し気恥ずかしい感じもするが、仕事はチームワークが大切だ。これで進めようと心に誓った。
「現時点では雪一郎さんが大部分を調整していったので三つの星しかないわね。一つは惑星である火星。二時間の遅れが生じているわ。二つ目は地球の衛星である月。十時間の遅れね。三つ目は海王星、五か月三時間五分ほど進んでいる状況よ。」
私は早速作業に取りかかることとした。星刻算術盤を大樹の根に立ってある札から星名を頼りに探し出し、発見した根が新発見であれば札を立て、再調整の場合は新しい札を付ける。その後、根の場所を示した地図に場所と発見日を記載する。再調整は日付を更新するというものである。祖父はこれを万という単位で行っていた。引き継いだ星の算術盤を確認した根の場所を示したマッピングシートには、数多くの星の情報が記されていた。おかげで少しずつ星々の算術盤の在りかについて確認できたと祖母から伝えられた。そして今回のターゲットである三つの星の在りかは既に明確である。しかしこのお役目、非常に事務的な印象が強い。「祖父のせいかな。」などと考えてしまったことは内緒にしておこう。
 今回ターゲットである火星は地球と似ている星であり、一日を表す自転周期は二十四時間三十九分三十五秒である。しかし、一年を表す公転周期は凡そ六百八十七日であり、地球の約二倍弱に及ぶ。海王星は地球の十七倍の質量を有し、自転周期は十六時間六分三十六秒、公転周期は凡そ百六十四年である。この二つの星については公転周期に与える影響が僅かな誤差であったことから、算術盤の珠を動かすだけで調整でき、問題なく精霊承認を済ませた。残るは月である。月は地球の衛星である。月自身の自転周期と地球を公転する周期は同期間であり二十七日七時間四十三秒である。十時間遅れている月の自転周期から十時間分が失われ、約二十六日二十一時間で自転している日が一日だけあることを指す。地球から月の見え方が変わるだけでなく、地球の潮の満ち引きなど、環境にも影響が出るかもしれない。この現象は三日前に観測され、幸いにして今のところ大きな影響はないようだ。しかし、いずれは観測され大きな話題となり、人々の混乱につながるかもしれない。
 私は月についても算術盤で調整しようとした。しかし、なぜか算術盤を動かすことができない。固くびくともしないのである。その時、祖母は放った言葉に耳を疑った。
「これは蟹の仕業だね。月にある時の間に転移するから蟹退治をしてちょうだい。」
蟹退治。これは祖父からも聞いていなかった。ただ祖父からの説明で若干歯切れの悪い説明があったような気がした。「これのことを指していたのか。」と一本取られた感じがした。
「転移には大樹から転移鍵を得る必要があるのよ。大樹の幹にあるキーボードがあるから、星名を記入するの。そうすると鍵を受け取ることができるからね。鍵を得たらキーボードの隣にある扉を開けてごらんなさい。その星の時の間に行くことができます。」
「由良さん、蟹の情報もいただけますか」
と私は由良さんに尋ねた。
「蟹の図体は三メートル以上あるわ。けれども一つの時の間に一匹しか生息していない。それと動きが遅いのが特徴よ。鋏にも気を付けて。あなたの大切な思い出を切られてしまったり、嘘の経験を挟み込まれることもあると聞くわ。蟹を退治するにはこの空気銃に装てんされているアメーバ弾を撃ち込むことになります。三発込められているから、慎重に落ち着いて放ってね。一発でも当たれば退治は完了するわ。」
祖母は一気に説明を行ったが、私にはいくつか疑問があった。
「由良さん、なぜ蟹が星の時間の原因なんですか。それとこの空気銃は一体なんですか。」
「そうだね。まず蟹は鋏を持っているだろう。その鋏で『時を挟む』こともあれば『時を切る』こともあるからかもね。まあ、地球に大きな影響を及ぼすような調整作業を発生させる原因はこの蟹がほとんどなのよ。火星や海王星いついては自然発生的なズレ、月のズレは算術盤での調整を不可能とにしてしまっている。このような状況を引き起こしているのが蟹であると確認されているわ。それとこの空気銃だけども、雪一郎さんが開発したものなの。雪一郎さんもこの蟹には手こずっていて、蟹を消すアメーバ状の物質を現実世界から調達してきたの。それで弾丸を作り、蟹を始末していたのよ。」
 私は分かったような分からなかったようなフワっとした感じであったが、蟹退治も引き受けられる番人が急ぎ必要だったとことが分かった。そしてアメーバ状の物質はマヨネーズのような見た目であるが、おそらく祖父の仕事場にあったグリスに違いない。なぜ蟹を消すことにつながるかは不明だが、この匂いはグリスに違いない。グリスに何か混ぜたのかは分からないが、グリスならまだ残っていたし、入手も可能であろう。
「とにかく、月の時間を調整にするために月の時の間に行ってみますね。」
 祖母は暖かい、そして若干不安な、何とも言えない表情で私を送り出してくれた。
 大樹の幹にまるで現実に引き戻されるような物体であるキーボードが備え付けてあった。それに「月」と入力すると、隣にある扉の鍵が左手の平に痣として現れた。その手でドアノブに触れると砂漠から草原に転移した時と同じように一瞬で月の時の間に転移していた。月の時の間は、直方体であり、床は灰色の岩場が広がり、側面は漆黒の宇宙を映していた。大きさは一辺約三十メートル、わが故郷の地球が見えていた。おそらく透明の巨大な水槽といったところだろう。
一体この空間のどこに巨大な蟹がいるというのだろうか。周りを見回したが、蟹らしき姿はどこに見られない。天井、床を隈なく探したが存在を感じ去られない。「この空間で……、巨大なとどうやって戦おうか……。」と蟹をイメージしシミュレートしていたその時であった。彼方の地球を覆い隠すように何かが姿を見せた。
「蟹だ!」蟹は3mを超える巨体を露わにした。どこにいたのだろうという疑問を持つ余裕はなかった。鋭い鋸歯上の刃を有する鋏ゆっくりと私に迫っていたのだ。私はその鋏を交わし巨体の後ろに回り込んだ。アメーバ弾を一発放った。アメーバ弾は背中の甲羅当たり巨体全身に投網のように広がっていった。そして、蟹を包み込むとアメーバは蟹もろとも急速に縮退し、鶏の卵程度の大きさに変形したのだ。またもや私を呆然とさせるトリッキーな出来事であった。
私はその卵についても祖母に確認するために卵を取り上げようとした。すると、蟹の声だろうか、何者かの声が脳に直接響いてきた。
「一日を縮めて月に地球のいろんな顔を見せてやりたかったのに、月の願いを叶えてやろうと思っていたのに、ミスっちまったぜ、チッ。全くいい迷惑だぜ。おい、坊主、お前が新しい時の番人だな。他の星でも俺の兄弟は時を挟み、切っているからな。雪一郎とかいう凄腕の爺さんが居なくなったと聞いて、大暴れしているぜ。せいぜい抗ってみるんだな。あばよ。」
私を挑発するような口ぶりを最期に、蟹の存在は消え失せてしまった。そして、ただの石ころのような卵になってしまった。「親切な説明だったな。月の願いを叶えるためか、ロマンチックだけどお役目だから悪いな。蟹さん。」私はそれを取り上げそっとポケットに入れた。
 大樹の次元に戻ると、由良さんが笑顔で迎えてくれた。
「初仕事はしっかりこなしてくれたのね。ありがとう。それで卵も回収できたかしら。」
「これのことですか。」
私はポケットから卵を取り出し、由良さんに渡した。由良さんは根のもとに向かい、月の算術盤を取り出した。そして卵を算術盤の上に乗せ何やらを唱えた。
「時の卵に宿る月の時神よ。月の正時を刻め!」
すると、算術盤は正常値を示し、月の時は正常に戻ったのであった。
「これで大丈夫。月のトラブルは解消したわ。現実も混乱がないようでよかった。時、ありがとう。」
 由良さんは私の顔を見つめ、改めてお礼を言ってくれた。
 その後、由良さん特製のビーフシチューを頂いた。緊張と不思議に囲まれ過ぎて空腹感すら忘れていた。食事にとき、私は祖母に、蟹がはじめさっぱり感じられなかったこと、時の卵とは何なのかについて尋ねた。祖母は丁寧に答えてくれた。
「蟹についてはもう少し伝えなくてはね。それに時の卵についても伝えていなかったわ。慌ててお役目に行かせて本当にごめんなさい。まず蟹については前回話した通り、時にいたずらをする妖よ。しかし妖はその存在を普段は見せない。時が最初、月の時の部屋の中で蟹が見えなかったのは蟹の存在を本当に信じていなかったから。蟹がここに入るんだという思いを膨らませると見えてくるの。ここの蟹は見つけて欲しいと主張の強い蟹だったのかもしれないわ。警戒心が強い蟹が時の番人を目の前に鋏を振り上げたのが証拠だよ。少しイレギュラーな蟹だったかもしれないわね。次回は蟹の存在を信じ、星の時の間に入ると、すぐに見えるようになるわよ。もうひとつ、時の卵についてだけど、これは、蟹が増殖するために必要な品物のようなの。これに自らの子孫を植え付け蟹は増えていく。星がこれを失うと時間の調整が自然の誤差を超えて狂い始めてしまう。月が狂い始めたのはそのせいよ。だから、月の卵を変換して算術盤から星に戻している。産み付けられた蟹の卵はアメーバ弾によって消滅しているわ。時が卵を私のもとに持ってきてくれたならば、あとは時間を司るその星の時神と交信し時間の正常化を行うわ。これの行為は精霊のみができるの。それで私がここにいるわけよ。」
由良さんは、一息ついて話しを続けた。
「時の卵に触れたとき、蟹の声が聞こえたでしょ。あれは蟹の遺言よ。今回は何を言っていたかしら。」
私は、蟹から聞いた内容を伝えた。
「月に恋した蟹だったのかしら。面白いわね。大抵は腹いせを語るのだけれどもね。それと雪一郎さんが亡くなったことも広がっているわね。少し急がないと私達だけでは処理できない時の制御ができなくなってしまう。時、頑張りましょうね。」
 食事を頂き、現実世界に帰ることにした。この世界には青鳥居から月晦日に出入りできることを改めて教えてもらった。なるべく人目を避けてきて欲しいとも言われた。また、アメーバ弾の作り方のレシピも預かった。やはりグリスがもとになっていたが、添加していたのは卵と酢であった。マヨネーズかこれはと思って苦笑してしまった。
「では、また来月の晦日に。弾丸をつくって会いに来ますね。」
「今日は本当にありがとう。雪一郎さんにも会えたし。番人の引継ぎも完了したし、時ととても良い時間を過ごせたわ。ではまたね、時。」
 現実世界に繋がる扉の前で、私は由良さんの方を振り返った。由良さんは手を振り続けていた。また来るよ、ばあちゃん。またね。


エピローグ

 現実に戻った私は、青鳥居に入った同じ時間に戻っていた。そして今一度青鳥居をくぐってみたのだが、翌月の晦日ではないので入ることはできなかった。由良さんの教えは正しかった。
 神社から家に帰る途中、私は大樹の次元で起きたことを振り返った。また、左手首に刻まれた痣があることによって、全てが実際に起こったことであることを改めて再確認したのであった。また、祖父の最期に立ち会えたこと、祖父母の愛を知ることができたこともあり、心がほっこりする出来事であった。
 月の晦日に妖退治とはなかなかハードな人生となるようだ。今回の蟹との戦いはチュートリアルのようなものであろう。次は装備もフィジカルも高める必要があるようだ。不老不死といえども危険はなるべく避けたいなあ。アメーバ弾も多めに用意しておこう。時間調整の基本となる星刻調整算術盤の扱いも学んでおかなければならない。すべて祖父のマッピングマップと引継書なるメモ帳に記してある。前もって様々な状況を確認しておかなければならないだろう。
「やることはかなりあるなあ…。」
 時を管理するお役目は、わたしにとって名誉である。時計を世に生み出す職人を目指すものとしてこれほど誇りと言えるものはない。
「私自身が時を刻めるようになるように頑張ろう。」
 真の時の番人となる意志を固めるかのように私は拳を強く握ったのであった。
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