白翡翠の指輪

鈴の凛

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白翡翠の指輪

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泉 美穂(25)は、普通の会社員から突然無職になり、新たな生活を模索する日々を送っていました。

ある日、行きつけのリサイクルショップで見つけた不思議な指輪。

白翡翠という天然石で作られたその指輪は、コロッと丸く、乳白色の可愛らしい印象を持っていました。

その日から、美穂の生活には小さな幸せが次々と訪れ始めます。

最初の幸運は、新しい仕事が見つかったことでした。

パートとして働き始めた美穂は、浮かれ気分で公園を散歩していると、一人の不思議な男性と出会います。

彼はどうやら幽霊のようなものが視えるらしいのですが、美穂はそれを深く追求せず、

「人には言いたくないこともある」

と思い、そのまま雑談を楽しみました。

その日はジュースを片手に公園のベンチで話し、別れましたが、後日驚くべき事実が判明します。

彼こそが、美穂の住むアパートの大家さん、大畑稔(28)だったのです。

ドラッグストアでのパートの仕事も順調に進み、努力が認められて時給アップからの店長候補になるという快挙を遂げました。

しかし、職場では先輩のアルバイトやパートの人たちがいじめに遭うようになり、美穂は心を痛めます。

そんな時、雑談仲間である大家さんに相談すると、「指輪、力使いすぎて疲れてるから、細石の水晶に寝る前に外して置いておくといいよ」とアドバイスを受けました。

大畑さんのざっくりとした説明によれば、「まぁ、人間でいう布団で寝てリフレッシュするようなもんだよ」とのことでした。

美穂は細石の水晶をオンラインで購入し、可愛いお皿に入れて指輪を置いて就寝しました。

すると、職場の陰口やいじめが次第に減り、一週間も経つと普通の状態に戻っていきました。

次に大畑さんに会った時に感謝を伝えようと心に決めた美穂。

しかし、次に彼に会ったのは病院のベッドでした。

子供を助けようとして足にヒビが入ってしまったのです。

美穂は病院に駆けつけ、感謝の気持ちと共に回復を祈りながら大畑さんに寄り添いました。

彼のアドバイスがなければ、自分の生活がどうなっていたか分からないと心から感謝し、美穂は新たな一歩を踏み出しました。

仕事先のドラッグストアの店長候補である藤 正十郎(24)から突然告白されてしまった美穂。

どうやら彼は真面目に仕事をしている美穂に惚れたらしいが、美穂には稔というかけがえのない存在がいる。

まだ、交際しているわけではないけど、上手く断る方法に悩む美穂は稔に相談することに。

このとき、美穂は稔のことについてあまり知らないことを知る。

家族や兄弟、仕事について…知らないことが多すぎることに今更気づいた美穂はショックを受ける。

その様子に稔は「俺が話したくないから話さなかっただけだから、美穂は悪くないよ」

どうやら彼は有名企業の跡取り息子で会社を継ぐ意思がないことを両親に告げ、今の大家兼アルバイトをしながら経営の勉強をしているらしい。

両親も彼の努力や能力を知っているから今のところは引き止めたりしないらしい。

「俺は、親父の後方で会社の経営について話をしてどうするべきかを考えたりと裏方の方が性分にあってるんだけどね」

だけどいずれはちゃんと会社を継ぐつもりはある、とのこと。

その次の日、美穂は藤に「ごめんなさい。私、藤君とはお付き合いできません。でも、真面目に仕事している姿に一目惚れしたと言われて嬉しかったです」

と伝えると「僕の方こそ後先考えずに告白なんてして、すみませんでした。すぐに諦めるとこは難しいと思うけど、泉さんには幸せになって欲しいと思ってます」

円満的な結果に胸を撫で下ろす美穂。



その数年後、二人の思い出の場所だったアパートは老朽化の為、取り壊されることになる。

美穂は稔と結婚し、幸せになったがここで一つ問題がうまれる。

新しいマンションは実は藤君も住んでいるらしく、それを知った稔は絶賛威嚇モードに。

藤君は、そんな稔に臆することなく美穂に接するように。

どうやら「僕は一人っ子だったんで、理想の姉が欲しかったんです!美穂さんに恋情はなくなりましたが、姉弟のような関係になりたいんですっ」

幸せな波乱に指輪は微笑ましく輝いた。
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