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極意
しおりを挟む「ふぁぁ。さて、鍛冶屋に向かうか。」
俺がグラムズさんに弟子入りして今日でちょうど一週間だ。
毎日毎日暑い部屋で装備を製作して、最近では剣以外の武器や防具も一通り作成できるようになった。
ちなみに製作した装備は武器屋と防具屋のおっちゃんに渡して売ってもらっている。
売れ行きはまぁまぁらしく、この一週間で俺のレベルは21から27まで上昇した。
一週間ダンジョンに潜り、戦っていたらもっと上昇していたとは思うが、俺が今しているレベリングは日が経つにつれ効果を発揮してくる。焦る必要はないはずだ。
「おはようございます!」
「おぉ来たか。どうじゃ?装備製作は。」
「楽しいです!それに日に日にレベルやスキルレベルが上がってくのを感じると達成感も感じます。」
「そうか。だが、そろそろどちらも上がりにくくなってきたんじゃないか?」
確かにそうだ。
最初の方はバンバン上がったがここ2日はどちらも上がらなくなっている。
スキルレベルは鍛冶術LV.7で止まってしまった。
レベルの方もそうだ。俺が作れる装備ではダンジョン下層で手に入る装備より劣っているため、上位の冒険者は俺の装備を使用しないのだ。
「確かにそうです…。」
「そこでお前さんに[極意]を授ける。」
「極意…ですか。」
「そうじゃ。これができなきゃ一人前の鍛冶師とは言えん。まだお前さんがしていないことじゃ。わかるか?」
「魔物の素材の使用…」
「半分正解というところじゃの。儂がお前さんに作った白牙の剣のように魔物の素材を取り入れ、装備を作る。これが次にお前さんに教える技術じゃ。」
今までは鉄などの鉱石を使用し、装備を製作してきたが、魔物の素材は一度も使用しなかった。いや、させて貰えなかった方が正しいか。
この答えが半分正解だとしたらほんとうの正解はどのようなものなのだろう。
「これを会得できれば作れない装備はない。どんな魔物も、アダマンタイトやミスリルなどの鉱石も全て装備に組み込むことができるようになるはずじゃ。」
アダマンタイトやミスリルと言えば超絶レアで、なおかつ最強装備によく使われる素材だ。
まさかそんなものが自分で作れるようになるとは…。
「もう道具を使わなくとも鍛冶術のみで装備製作はできるな?」
「はい!」
俺は鉄の上に手を当て鍛冶術を発動させる。鉄が光り輝き、少しずつ理想の形へと変形していく。
鍛冶術はパッシブスキル(受動)でもあるがアクティブスキル(能動)としても使えるのだ。
「よし!そこじゃ!ここに魔物の素材がある。これを組み込め!」
「は、はい!」
魔物の素材を手に取り、鉄の上に乗せ、組み込むイメージをする。
少しずつ魔物の素材が鉄に入っていく。
うまく行きそうだ。
「よし!」
「気を抜くな!」
少しずつ少しずつ魔物の素材を組み込んでいき、ついに全ての魔物の素材をつぎ込むことに成功する。
「やった!」
「よし。とりあえずは成功だな。だが今回は圧倒的に魔物の素材が少ない。これが魔物一匹でできるようになったら完璧じゃ。どれ、みてろ。」
グラムズが工房の奥から一匹の巨大な蟻の死体を持ってくる。どうやら今から実演するようだ。
「こいつはクレイジーアント。こいつの特徴はなんといっても強靭な顎じゃ。素材によって作成する装備を変えることも一人前になるための一歩じゃ。」
最初に使用する鉄よりも遥かに素材の量が多い。本当に製作できるのだろうか。
「まず、鉄を変形させる。ここで素材の量が多い場合は、少しずつ魔物の素材を組み込むといい。このまま変形させながら組み込む……こうじゃ。」
グラムズがあっという間に蟻の魔物で二対の双剣を作り出す。
黒く輝いた綺麗な双剣だ。
「す、凄い。」
「ちなみにこれが少ない素材で製作したものだ。これをつけてみてみろ。」
グラムズに[鑑定眼]を渡され、双剣を見る。
ちなみに鑑定眼とはアクセサリーで装備中はスキル[鑑定]を使用できる眼鏡だ。
「耐久度、斬れ味、攻撃力…。全てに大きな差がある。」
「そうじゃ。これが魔物の素材量による恩恵じゃ。」
「じゃあ魔物の素材を使うこと以外の本当の極意っていうのは何ですか?」
「それは自分で倒した魔物の素材で装備を製作することじゃ。これこそがまさに鍛冶師の[極意]じゃ。これからも日々精進して装備を製作していきなさい。」
「なるほど…わかりました!」
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