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盗賊団
しおりを挟む俺は盗賊団が次々と放つ矢を躱し反撃の機会を伺う。
しかし相手は屋根の上[空歩]を使用したとしても狙い撃ちされるだろう。
もし狙い撃ちされたとしても躱すことは容易いとは思う。しかし次々と放たれる矢を躱すには5歩だけでは確実にたらない。
「持っているものを全て置いていけ。そしたら命だけは助けてやる。」
なにを言っているんだ。死んだらアイテムと所持金を2~3割なくなるだけだ。アイテム全て置いていくなら死んだほうがマシだ。
「嫌だね。」
「なら死ね。」
「それも嫌だね。お前たちが死ね。」
盗賊団が俺に向け一斉に矢を放つ。
俺はそれを横に回転しながら避ける。
その回転の遠心力を生かし、俺は外套の中から出来る限りの投げナイフを屋根の上にいる盗賊団に向け投げつける。
「ぐはっ…!」
450EXPを獲得しました。
俺の投げた投げナイフは綺麗に盗賊団の心臓へ向かい深々と突き刺さる。
素早さがありえないほど上昇したため、それに比例して俺のナイフの速度も上がるのだ。
「くそ!お前たち邪魔だ!」
俺の投げナイフによって10数名が横たわる。
盗賊団はやられた仲間が邪魔になっているおかげで後ろに控えている次の矢を放つことができない。
これを機に一気に詰めて終わらせてやる。
「陽炎」
俺は[陽炎]で自分の幻影を作り出す。
相手が準備ができたときに少しでも時間稼ぎをするためだ。
今回作り出す幻影の数は4体。これだけいればかなりの時間が稼げるはずだ。
「あ、アニキ!敵が分身しました!」
「分身だ?…気にせず撃て、ここまできたら俺が出る。」
どうやらこいつらを指揮している奴がいるようだ。だがこの距離からは相手の顔は見えない。
それになんだあの上から目線は。なめやがって、すぐに倒してやる。
「皆!とりあえず撃ちまくれ!倒れた味方は落として構わん!」
仲間を落としてもいいとはなんて冷酷な奴らだ。しかし邪魔な壁が無くなって矢の勢いは更に増した、早々に屋根の上に登ることにしよう。
俺は敵に向かって一直線に一気に走る。
なぜ自らの横にある壁を空歩で登らないのかと思うが、それだと速度がなく、撃ち落とされてしまうために却下した。
「いたぞ!あそこだ!」
俺の作り出した幻影を全て消し去り本物の俺を見抜かれる。
しかし、時間を稼いだおかげで今の俺はトップスピードだ。
俺はそのまま方向を変え、横の壁に向かって飛ぶ。
壁の蹴り、斜め上に向かって飛ぶ。これで一回分の空歩の距離を稼げたはずだ。
「敵は空中だ!狙い撃て!」
分散されていた矢が全て俺に向かって飛んでくる。
数はおよそ20。少しでも掠ったら動きが損なわれるため余裕を持って空歩を使用し、躱す。
躱す。躱す。躱す。次々に俺に向かって大量の矢が飛んでくるが全て空歩を使用し避ける。
残りの空歩使用回数は一回。すでに敵のいる屋根とは同じ高さまでは来れている。
しかし、更にもう一回空歩を使用し相手の頭上に飛ぶ。
「火弾!!」
俺は敵の頭上から巨大な火弾を繰り出す。
もちろんLV.3の火弾だ。
1650EXPを獲得しました。
レベルが上がりました。
3GMポイントを獲得しました。
「ふぅ。終わったな。」
俺は頭上からの攻撃を終え敵が倒れている屋根に綺麗に着地する。
俺の画面に経験値獲得の表示が現れる。
どうやら俺の火弾で全滅したようだ。
火が消えると丸焦げになった盗賊が光となって消えていく。
「あーあ…こんなに俺の部下を殺しちゃって。どうしてくれんのさ。」
全員倒したと思ったが俺の後ろから声がする。
急いで振り向くと無性髭を生やした男が頭を掻きながら俺に向かって歩いてくる。
「先にしけたのはそっちだろ。」
「ちげぇねぇ。それにしてもお前速いなぁ、来たら俺が相手しようと思ったのにあっという間にやられちまった。」
「お前も倒してやる。」
なぜ俺に向けこんなに冷静に話しかけてきているのかわからないがそんなことは関係ない。
俺は背中の剣を抜き一気に近寄り剣を振る。
「おっと危ない。焦りは禁物だぜ?」
確実に捉えたと思ったが俺の真後ろから奴の声が聞こえる。
急いで後ろを向き戦闘態勢をとるがそこには奴はいない。
「じゃあな少年。また会える日を楽しみにしてるぜ…」
どこからか男の声が聞こえる。だがどこで話しているのかわからない。
そしてどんどんと男の声は小さくなり消えてしまう。
「くそ。なんだあいつは。」
完全にやつは俺を舐めきっていた。対峙した時からじゃない、その前に子分と話していた時から完全に俺を下に見ていた。
だが奴は確実に俺よりも強い、それもかなりだ。
「もっと強くなってやる。」
確実に今のままでは奴には勝てない。それにもう目標だった魔導書は購入できた。
次の目標は更に強くなることだ。
一度この戦闘エリアを抜け、ダンジョンへ潜り更に強くなろうと思う。
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