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初心者狩り

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「相変わらず草原か…そろそろ飽きてきたしお金もたんまり溜まったしとっとと5階層ボス倒して夜の街マルヘラいくか!」

4階層の魔物は今までに出現した魔物のみで新しい魔物はいない。
しかしその場にいる冒険者プレイヤーはかなり戦闘に苦戦しているようだ。おそらく魔物自体の強さが上がってるのだろう。

「それにしても人が多いな…ボス前のレベル上げか?」

上の階に比べ明らかに人数が多い。それにどの冒険者も装備がかなり整っていて準備万端だ。だがこうやって他の冒険者の戦っている姿を見るとどれほどの強さなのか、どのようなスキルがあるのかなどがわかり意外と面白い。パーティーで戦っている冒険者がかなりいるので颯斗とやるのがますます楽しくなってきた。

「ここら辺のモンスターはほっといて速攻で向かうか。」

ここの魔物は見たものばかりで強くなっているとはいえ戦うのは特に興味がわかないため早々に5階層への道へ走り始める。

「くそ…やっぱ邪魔してくるか。」

しかしそんな簡単に俺を通してくれるわけもなく狼型の魔物に目をつけられる。
しかしボスの前の階層の敵と戦っとくのも悪くない。容赦なく切り捨てさせてもらおう。

「グルルルァ!」

狼型の魔物が鋭い牙を露わにして飛びかかってくる。やはり上層階の狼の魔物と同じ種類の魔物だが素早さがかなり高くなっている。ほかのステータスもかなり高くなっているだろう。この魔物だけでなくこれから出てくる魔物の習性や強さ、名前を知るために、早めに魔物図鑑モンスターブックを買うことにしよう。

「いくぞ!」

俺は背中に背負っている剣の柄を掴み低い体勢をとる。そして、飛び込んできた魔物の下に高速で潜り込み、剣を思いっきり縦に振り下ろし狼の魔物を縦に真っ二つに切り捨てる。

「よし。大丈夫そうだな。でもただ剣を振るうだけだとつまんないし技名でも考えてみようかな…。」

某、幕末剣士のようにカッコいい技名を言いながら使ってみたい。俺の素早さがあれば俺にしか使えない剣術なども作れるようになるはずだ。
今度考えて使ってみることにしよう。

「よし。見えてきたな。」

やっと5階層への道が見えてきた。先ほどの一回しか戦闘をしていないためそれほど時間は経たなかったがやはり同じ風景となると長い時間に感じてしまう。

「うわ…ものすごい人だ。」

初ボス戦の前ということでかなりの人数が5回層への道の前で集まってパーティー集めや装備調整などを行なっている。 
俺も一応確認してボス戦へ行こうと思う。

「剣の刃こぼれなし、短剣よし。投げナイフよし。行くか。」

「はぁはぁ!待ってくださーい!」

誰かが後ろから走ってきて俺を呼び止める。振り向いて確認するが始めて見る冒険者プレイヤーだ。背丈は俺と同じくらいで背中には長剣を背負っている。装備は外套を羽織っているためわからないが長剣はかなり良さげのものだ。
先ほどと同じようにまたパーティー勧誘だろうか?

「どうしました?」

「はぁはぁ…ふぅ。先ほど一撃で魔物を倒しているのをみてパーティーを組んで欲しくて!」

やはりそうだったか、だがパーティーは断らせてもらおう。

「そうですか。でも一人でボス戦に挑んでみたいんです。申し訳ありません。では」

最初の一回くらいのボス戦は一人で挑戦してみたいと前から思っていたことだ。これは譲れない。それにはじめての人にボス戦で背中を預けるなどできない。あと、これでパーティーを組んでズルズルと知らない人と関係を続けることになるのも回避したい。

「で、でも!」

「ごめんなさい。では、さようなら。」

「ちっ…」

俺が完全に誘いを断ると小さな冒険者は俺に向かって舌打ちをする。

「はい?舌打ちしましたけどなんですか?」

「雑魚が、俺が下手に出ればいい気になりやがって。」

なんだこいつ。いきなり話しかけてきて断ったら逆ギレしてきたぞ。関わるとめんどくさそうさうだ。俺はこの冒険者を無視し早めに立ち去ることにする。

「おい。待て。売れるもん置いてけ。」

いきなり喧嘩腰になり金品を置いていけだと?先ほどのPK野郎といいゲームの中だからといい好き放題しすぎじゃないか?

「うわっ…あいつまた初心者狩りやってるよ。」

「おぉ!また始まるか!PVP!」

「5連勝目なるか?」

Prayer vs Prayer 訳して[PVP]。オンラインゲームでよくあるプレイヤー同士の対決だ。颯斗は以前のゲームで日本5位とかまで行ったと話していた。
周りの冒険者プレイヤーが話している内容を聞くと、この冒険者は今までに何人もの初心者と戦い食い物にしているらしい。

「お互いの全財産を賭けての決闘だ。システムを利用しての決闘だからズルはできねぇ。」

魔物との戦いは慣れているが人との戦いはほぼ初めてだ。対して向こうはかなり戦い慣れしているようだ。相手は羽織っていた外套を脱ぎ、金目のものがあることを俺にアピールする。
俺にはかなり分が悪い戦いだろう。
しかし

「いいですよ。ですが私には貴方みたいにいいものは持っていないですし、お金もそんなに持っていないですよ。」

「いいぜ。だって俺は負けることなく金稼げるんだからなぁ!」

俺の実力では勝てるかはわからないがゲームで好き勝手して、俺のことを舐めているやつを放って置きたくはない。少しでも抵抗させてもらおう。
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