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不協和音
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「ニコくん、ミカドくん。入れますか?」
「あっ……すみません、すぐ!」
いつの間にか、スタジオの前まで来ていた。ロゼとイチカはすでに中に入っているようで、廊下にはニコとミカドしかいない。開いたドアの奥からはスタッフの動き回る忙しないざわめきが漏れていて、少し焦れたように田中が顔を覗かせる。
「ニコ、飴持ってる?」
急いでスタジオへ入ろうとするニコの袖を、ミカドが引いた。
「あ、うん。あるよ」
田中に「すぐに行きます」と返事をして、ニコは慌ててショルダーバックに手を入れると、目当てのシガレットケースを取り出す。ご所望のミントキャンディを手のひらにのせて差し出すけれど、ミカドは一向に取ろうとせず、代わりにニコに向かって大きく口を開いた。初めてまともに会話をしたあの日のように。
「あー」
「え⁉」
躊躇していると、ミカドはニコの手を掴んで自分の口元へと引き寄せる。そして、パッケージを開けた飴をニコの指に摘まませると、その指ごと自分の口の中へ含んだ。
舌の先がくるりと一周ニコの指を舐め、ちゅぅっと音を立てて離れる。
「……っ!」
「ありがと。これでもっと頑張れそう。絶対、勝とうね」
そう言うなり、ミカドは放心するニコを置いてさっさとスタジオの中へと入っていってしまった。
「……」
指の先が熱い。ミカドの舌は柔らかくて、その中で感じたピアスの硬さと、少しの冷たさが忘れられない。
痺れを切らした田中が迎えに来るまで、ニコはミカドの熱を反芻しながら呆然と廊下の真ん中に立っていた。
「あっ……すみません、すぐ!」
いつの間にか、スタジオの前まで来ていた。ロゼとイチカはすでに中に入っているようで、廊下にはニコとミカドしかいない。開いたドアの奥からはスタッフの動き回る忙しないざわめきが漏れていて、少し焦れたように田中が顔を覗かせる。
「ニコ、飴持ってる?」
急いでスタジオへ入ろうとするニコの袖を、ミカドが引いた。
「あ、うん。あるよ」
田中に「すぐに行きます」と返事をして、ニコは慌ててショルダーバックに手を入れると、目当てのシガレットケースを取り出す。ご所望のミントキャンディを手のひらにのせて差し出すけれど、ミカドは一向に取ろうとせず、代わりにニコに向かって大きく口を開いた。初めてまともに会話をしたあの日のように。
「あー」
「え⁉」
躊躇していると、ミカドはニコの手を掴んで自分の口元へと引き寄せる。そして、パッケージを開けた飴をニコの指に摘まませると、その指ごと自分の口の中へ含んだ。
舌の先がくるりと一周ニコの指を舐め、ちゅぅっと音を立てて離れる。
「……っ!」
「ありがと。これでもっと頑張れそう。絶対、勝とうね」
そう言うなり、ミカドは放心するニコを置いてさっさとスタジオの中へと入っていってしまった。
「……」
指の先が熱い。ミカドの舌は柔らかくて、その中で感じたピアスの硬さと、少しの冷たさが忘れられない。
痺れを切らした田中が迎えに来るまで、ニコはミカドの熱を反芻しながら呆然と廊下の真ん中に立っていた。
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