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オフコラボ配信
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普通に生活していて、誰かとこんなに密着する機会なんてそうそうない。ましてや、ニコはスキンシップに慣れておらず、毎回緊張に身を強ばらせていたのは事実だった。
配信中なら、まだ誤魔化せた。でも、今はリスナーが見ていない分、ミカドとのリアルな距離を意識しすぎてしまう。
「結構仲良くなれたと思ってたけど、やっぱまだ慣れない?」
「いや、えっと、そんなことは……ある、かな」
あはは、と誤魔化すように笑って、ニコはちょっとだけ身を引いた。すかさず、ミカドが距離を詰めてくる。近い。
「緊張が、ちょっとコントローラーに乗っちゃってる気がするんだよね。そういう細かいところが、タイムに影響しちゃったりするからさ」
ごもっともな指摘に、ニコはぐうの音も出なかった。
「ロゼとイチカに勝ちたいよな」
「うん? それは、もちろんだけど」
かといって、すぐに改善できるようなものでもない。
「じゃあ、延長戦はこっちに慣れてこっか」
「ひ、ぇ⁉」
言ったかと思うと、ミカドは場所を移動してニコの後ろへと回り込んだ。そのまま、脚の間に挟まれるように抱かれてしまって、ひっくり返った変な声が出てしまう。
「ニコ」
「えっ、え⁉」
「俺の指の動き、覚えてみて」
ミカドの手がニコの手に覆い被さり、コントローラーを操作する。自分の意思に関係なく、ぐっと掛かる圧力に息を忘れそうになる。
背中から、ミカドの心臓の音がする。ミカドが話すたびに、頭上から、から、ころ、と飴の転がる音と一緒にミントの香りがふわりと舞って、ニコはめまいを起こしそうだった。
「どうしたの、ニコ。集中して。俺の指の感覚を覚えて。このリーグで一位とるまで終われないよ」
「そ、そんなにいっぱいできない」
レースはまだ始まったばかりだ。リーグ戦は、合計五試合ある。そこまで、ニコの心臓は破裂せずに持つだろうか。
「いっぱい無理?」
「っ」
ニコの指ごと、ミカドが器用に操作する。ぐっと押されるたびに視界がぐらぐらと揺れて、息が上がった。
「でも、俺ニコと勝ちたいもん。がんばろ?」
爽やかなミントの風が、魔法のように思考を奪う。
「みっ、耳やだ……っ!」
ふるふると首を振っても、ミカドは離れてくれない。押しつけられた頬。耳に、直接息が触れる。
「やだ?」
「……っ」
「ほら、ニコ。ちゃんとコントローラー握って、……集中しないと」
「ひっ⁉」
「あは、びくってした。かわい」
たっぷりと吐息を含んだ声音に、ぞわ、と首の後ろが粟立った。竦んだ首筋に、揶揄うように唇が触れる。
「あっ、わっ……!」
「あはは、また喘ぎ声出てるよ」
「あ、喘いでない!」
「耳真っ赤でかわい」
チュ、とリップ音がした。
「っ、……っ」
息が上がる。開いた口は、はくはく、と開閉を繰り返すばかりで、ニコは行き場のない感情をどうしたら良いかわからず眉間にきつく皺を寄せた。
「これ合図にしようか? ニコが集中してなかったら耳にキスするよ」
「やだ、そんなの無理、むり……って!」
そんなことされたら、集中できない。できるわけない。
それなのに、ミカドは逃げようとするニコの体をがっちりと押さえ込んで強引にレースを続行した。
後ろから抱き込まれ、脚の間に挟まれて、ミントの檻に囚われている。
「ほら、ニコ。今だよ、アイテム出して!」
「うっ」
「待って、そっちじゃない。前、前……ブレーキ!」
「えっ、待って待って。ひゃあっどこっ、ミカドく……指が、っわ!」
反応が遅れるたびに、ミカドはニコの耳にペナルティを与えた。ニコの思考はぐちゃぐちゃで、指の感覚を覚えるどころじゃない。
「やったね、ニコ。一位だよ」
「は、はぁ、はぁ……はぃ……ぃ」
延長戦は何時間続いただろう。ようやっとリーグ優勝をするころにはニコはへとへとに疲れ果て、コントローラーを握ったまま、ミカドの腕の中で気絶するように眠りに落ちていた。
配信中なら、まだ誤魔化せた。でも、今はリスナーが見ていない分、ミカドとのリアルな距離を意識しすぎてしまう。
「結構仲良くなれたと思ってたけど、やっぱまだ慣れない?」
「いや、えっと、そんなことは……ある、かな」
あはは、と誤魔化すように笑って、ニコはちょっとだけ身を引いた。すかさず、ミカドが距離を詰めてくる。近い。
「緊張が、ちょっとコントローラーに乗っちゃってる気がするんだよね。そういう細かいところが、タイムに影響しちゃったりするからさ」
ごもっともな指摘に、ニコはぐうの音も出なかった。
「ロゼとイチカに勝ちたいよな」
「うん? それは、もちろんだけど」
かといって、すぐに改善できるようなものでもない。
「じゃあ、延長戦はこっちに慣れてこっか」
「ひ、ぇ⁉」
言ったかと思うと、ミカドは場所を移動してニコの後ろへと回り込んだ。そのまま、脚の間に挟まれるように抱かれてしまって、ひっくり返った変な声が出てしまう。
「ニコ」
「えっ、え⁉」
「俺の指の動き、覚えてみて」
ミカドの手がニコの手に覆い被さり、コントローラーを操作する。自分の意思に関係なく、ぐっと掛かる圧力に息を忘れそうになる。
背中から、ミカドの心臓の音がする。ミカドが話すたびに、頭上から、から、ころ、と飴の転がる音と一緒にミントの香りがふわりと舞って、ニコはめまいを起こしそうだった。
「どうしたの、ニコ。集中して。俺の指の感覚を覚えて。このリーグで一位とるまで終われないよ」
「そ、そんなにいっぱいできない」
レースはまだ始まったばかりだ。リーグ戦は、合計五試合ある。そこまで、ニコの心臓は破裂せずに持つだろうか。
「いっぱい無理?」
「っ」
ニコの指ごと、ミカドが器用に操作する。ぐっと押されるたびに視界がぐらぐらと揺れて、息が上がった。
「でも、俺ニコと勝ちたいもん。がんばろ?」
爽やかなミントの風が、魔法のように思考を奪う。
「みっ、耳やだ……っ!」
ふるふると首を振っても、ミカドは離れてくれない。押しつけられた頬。耳に、直接息が触れる。
「やだ?」
「……っ」
「ほら、ニコ。ちゃんとコントローラー握って、……集中しないと」
「ひっ⁉」
「あは、びくってした。かわい」
たっぷりと吐息を含んだ声音に、ぞわ、と首の後ろが粟立った。竦んだ首筋に、揶揄うように唇が触れる。
「あっ、わっ……!」
「あはは、また喘ぎ声出てるよ」
「あ、喘いでない!」
「耳真っ赤でかわい」
チュ、とリップ音がした。
「っ、……っ」
息が上がる。開いた口は、はくはく、と開閉を繰り返すばかりで、ニコは行き場のない感情をどうしたら良いかわからず眉間にきつく皺を寄せた。
「これ合図にしようか? ニコが集中してなかったら耳にキスするよ」
「やだ、そんなの無理、むり……って!」
そんなことされたら、集中できない。できるわけない。
それなのに、ミカドは逃げようとするニコの体をがっちりと押さえ込んで強引にレースを続行した。
後ろから抱き込まれ、脚の間に挟まれて、ミントの檻に囚われている。
「ほら、ニコ。今だよ、アイテム出して!」
「うっ」
「待って、そっちじゃない。前、前……ブレーキ!」
「えっ、待って待って。ひゃあっどこっ、ミカドく……指が、っわ!」
反応が遅れるたびに、ミカドはニコの耳にペナルティを与えた。ニコの思考はぐちゃぐちゃで、指の感覚を覚えるどころじゃない。
「やったね、ニコ。一位だよ」
「は、はぁ、はぁ……はぃ……ぃ」
延長戦は何時間続いただろう。ようやっとリーグ優勝をするころにはニコはへとへとに疲れ果て、コントローラーを握ったまま、ミカドの腕の中で気絶するように眠りに落ちていた。
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