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作戦会議
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「……へぇ、ここ防音室? てか、備え付けなんだ?」
「あー、うん。ここ、もともと音大生とか楽器演奏する人向けの物件なんだよね。だから、最初から防音室としてスペースがあるのと、それ以外の部屋も結構防音しっかりしてるよ。隣の部屋の音とか全然聞こえないし」
「へぇ、いいね。俺、吸音材貼って後付けの防音室設置してるけど、結構漏れてる感じあるんだよな~。スペースも限られてるから案外狭いし」
他よりも厚く重たい防音室のドアを開け閉めした後、ミカドは興味津々に中を覗き込んだ。
「つか、これ電子ピアノ? 弾けるんだ?」
「弾けるって胸を張って言えるもんじゃないけどね。遊び程度ならって感じ。雑談配信でちょこっと触るくらいだから、あんまり出番なくて申し訳ないけど」
「小さい頃習ってたとか?」
「ううん。大人になってから……っていうか、大学入って就職とか意識しだしてからかな。僕、アナウンサー目指してたって言ったと思うけど、それでなにか特技とかあった方が有利かなって思って」
この部屋を借りたもともとの理由は、アナウンサー志望で思い切り発声練習がしたかったからだ。それに途中からピアノ練習という理由が加わって、今では配信のために欠かせない場所になっている。
前職の話をするとき、ニコは少し苦しくなる。
ライバーとして活動するようになって、もう過去のものになったのに、それでも、ふとしたときに前職の経験が活きたりすると、なんとも言えない苦い気持ちが襲ってくるのだ。そう簡単に割り切ることはできないらしい。
「今度アーカイブ見よ」
「わっ、見ても絶対感想とか言わないで」
そんなことになったら、ピアノを見るたびに思い出して配信どころではなくなってしまう。
「防音室、二人だとちょっと狭いと思うから、こっちの部屋でいい?」
話題を逸らすには、少し強引だったかもしれない。
「どこでも」
けれど、ミカドはしつこく食い下がるわけでもなく、もう一度室内を見渡してから、微笑みを含みつつニコの後について部屋を出た。
単身者向けかつ防音室に重きを置いた設計のマンションは、リビングもそう広くはないけれど、今日は配信をするわけではないし、わざわざ狭い部屋の中に二人でぎゅうぎゅう身を寄せ合うこともない。
「とりあえず、僕がダウンロードしてあるのは、ここら辺なんだけど……」
ミカドが来る前に、あらかた準備は済ませてある。
ソファに座るように促して、ゲーム機器を接続したテレビ画面に自身が持つゲームソフトを展開した。
「あ、なんだ。結構あるじゃん」
「ダウンロードしてあるだけね、全然触ってない」
それも、ミカドが来るからと急いでダウンロードした急ごしらえっぷりだ。一度も開いていないものがほとんどである。
「はは。まぁこれから覚えてけば良いよ。大丈夫大丈夫」
ソファの前、ローテーブルに置いたコントローラーをミカドが慣れた手付きで操作する。カカカッと素早くカーソルが動く音がして、いくつかのソフトが『お気に入り』と書かれたフォルダの中へピックアップされていく。
「んー、大体の人がやってんのはこの辺かなぁ。ここら辺扱えるようになれば、Wizards以外のライバーとも結構遊べると思う。俺はこれも好きだけど、ちょっとマイナーなのと、やってる人がレベル高いからもう少し慣れてからの方がよさそうかな」
素早く動くカーソルの動きに、ニコの瞳はついていくだけで精一杯だ。多分、口を半開きにした間抜けな顔が視界に入ったんだろう。ミカドはくすりと笑みを零した後、もう一つのコントローラーをニコへ手渡した。
「あー、うん。ここ、もともと音大生とか楽器演奏する人向けの物件なんだよね。だから、最初から防音室としてスペースがあるのと、それ以外の部屋も結構防音しっかりしてるよ。隣の部屋の音とか全然聞こえないし」
「へぇ、いいね。俺、吸音材貼って後付けの防音室設置してるけど、結構漏れてる感じあるんだよな~。スペースも限られてるから案外狭いし」
他よりも厚く重たい防音室のドアを開け閉めした後、ミカドは興味津々に中を覗き込んだ。
「つか、これ電子ピアノ? 弾けるんだ?」
「弾けるって胸を張って言えるもんじゃないけどね。遊び程度ならって感じ。雑談配信でちょこっと触るくらいだから、あんまり出番なくて申し訳ないけど」
「小さい頃習ってたとか?」
「ううん。大人になってから……っていうか、大学入って就職とか意識しだしてからかな。僕、アナウンサー目指してたって言ったと思うけど、それでなにか特技とかあった方が有利かなって思って」
この部屋を借りたもともとの理由は、アナウンサー志望で思い切り発声練習がしたかったからだ。それに途中からピアノ練習という理由が加わって、今では配信のために欠かせない場所になっている。
前職の話をするとき、ニコは少し苦しくなる。
ライバーとして活動するようになって、もう過去のものになったのに、それでも、ふとしたときに前職の経験が活きたりすると、なんとも言えない苦い気持ちが襲ってくるのだ。そう簡単に割り切ることはできないらしい。
「今度アーカイブ見よ」
「わっ、見ても絶対感想とか言わないで」
そんなことになったら、ピアノを見るたびに思い出して配信どころではなくなってしまう。
「防音室、二人だとちょっと狭いと思うから、こっちの部屋でいい?」
話題を逸らすには、少し強引だったかもしれない。
「どこでも」
けれど、ミカドはしつこく食い下がるわけでもなく、もう一度室内を見渡してから、微笑みを含みつつニコの後について部屋を出た。
単身者向けかつ防音室に重きを置いた設計のマンションは、リビングもそう広くはないけれど、今日は配信をするわけではないし、わざわざ狭い部屋の中に二人でぎゅうぎゅう身を寄せ合うこともない。
「とりあえず、僕がダウンロードしてあるのは、ここら辺なんだけど……」
ミカドが来る前に、あらかた準備は済ませてある。
ソファに座るように促して、ゲーム機器を接続したテレビ画面に自身が持つゲームソフトを展開した。
「あ、なんだ。結構あるじゃん」
「ダウンロードしてあるだけね、全然触ってない」
それも、ミカドが来るからと急いでダウンロードした急ごしらえっぷりだ。一度も開いていないものがほとんどである。
「はは。まぁこれから覚えてけば良いよ。大丈夫大丈夫」
ソファの前、ローテーブルに置いたコントローラーをミカドが慣れた手付きで操作する。カカカッと素早くカーソルが動く音がして、いくつかのソフトが『お気に入り』と書かれたフォルダの中へピックアップされていく。
「んー、大体の人がやってんのはこの辺かなぁ。ここら辺扱えるようになれば、Wizards以外のライバーとも結構遊べると思う。俺はこれも好きだけど、ちょっとマイナーなのと、やってる人がレベル高いからもう少し慣れてからの方がよさそうかな」
素早く動くカーソルの動きに、ニコの瞳はついていくだけで精一杯だ。多分、口を半開きにした間抜けな顔が視界に入ったんだろう。ミカドはくすりと笑みを零した後、もう一つのコントローラーをニコへ手渡した。
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