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第36話 上級魔族現る

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 リクトは生命反応を頼りに世界を巡り生き残りを集めている。それと同時に、気配を消しながら魔族を一方的に蹂躙していた。

「うははははっ、楽しいなぁ~」
《《》》 

 どうやら魔族は人間を食糧としていたようだ。吹き飛んだ魔族の死骸に加え、元人間だった残骸がちらほらと。

「俺たちゃ餌ってわけかよ。くくくっ、そうかそうか……はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 リクトは気配を消すのを止め、吠えた。

 
「ッシャオラァッ!! どんどんかかってこいやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 人間を見つけ魔族が群がる。どうやらそれが本能らしい。いくら仲間を吹き飛ばされようと、魔族らは次々と休む間もなくリクトに向かってくる。
 しかし、リクトもしっかり準備は終えていた。リクトはスキル【現状維持】を作り発動させていた。これはレベルや経験値が入らなくなる代わりに、全ての値をスキル現状維持を使った時点で固定する。つまり、いくら暴れようと体力、魔力、疲労値など、全ての数値が固定された状態で暴れられるのだ。
 辺りには人間の気配がない。つまり、いくら暴れようと人間が死ぬ事はないのである。それはリクトにとって遠慮と言う概念を取り払うには十分だった。

「ハッハー!! 【メテオ】【メテオ】【メテオ】……」

 隕石魔法が次々と魔族を吹き飛ばしていく。何故か魔族は吹き飛ばしても吹き飛ばしても集まってくる。どうやらここに人間がいると理解しているのだろう。地上に沸いた魔族がリクトを中心に波のように押し寄せてくる。

「キリがねぇなぁ……。もう一ヶ月近くこのままだぞ……」

 現状維持のスキルがリクトを飲まず食わずでも動ける様にしていた。後で大変な事になるとは知らずにリクトは飲まず食わずで魔法を連発し、一ヶ月もの間魔族を狩り続けたのである。

「お、ようやく終わりかよ。端が見えて……ん? なんだ……ありゃ?」

 リクトの視界には地面を這う魔族の端と同時に、空に浮かぶ十の影が写っていた。

《おぉ~、まさかあいつ一人でやってたんか!?》
《おいおい、あんだけいた魔族がたった一人に殺られたっての? だらしねぇなぁ~》
《あら、中々良い男じゃない。アレ、私に寄越しなさいよ》
《あぁ? お前は神界でたっぷり食っただろうが! 今回は私んだからなっ!》
《わ、私も食べたいですっ!》
《ぼ、僕も……》
《《 》》 
《……ぽっ》

 地を這う全ての魔族が消え去ると空に浮かぶ十の影が地に降り、リクトの前に立った。

「……今までの雑魚とは違うみたいだな」
《お、わかるか? 俺らは¨十魔天¨。上級魔族だ。ここを中心に同胞が減ってたからよ、わざわざ来てやったんだが……。まさか相手は一人とはなぁ~……》

 どうやらよく口が回るらしい。

《……あら、私の魅了が弾かれたわ》
《そりゃオバサンの魅了なんて効かねぇわな》
《だ、誰がオバサンよっ! ぶっ飛ばすわよっ!?》
《わ、私の隷族も効かないですぅっ》
《僕の支配も効かないですっ!》

 どうやら色々やってくれていたらしい。
 だがそんなものはスキル現状維持の前では何の意味もなさない。全てにおいて何も変わらないから現状維持と言うのである。

「大層な感じで現れといてそんなモンか? グレマンティスはどうした? いないのか?」
《魔神様がそう簡単に動くわけないだろうがっ! たかだか人間、我らが相手で十分よっ!!》
「そうかい。なら……だれからくる? 死にたいやつからかかってこいよ、ほら」

 リクトは手のひらを上に向け、指一本残し、他を握り魔族を挑発した。

《あ、あら……、私はそれでも構いませんわよ?》
《ぼ、僕もです!》
《《》》 

 どうやら魔族にも様々な奴がいるらしい。

「やんのかやんないのか早くしろよ。タイマンか? それとも一斉にくるか?」
《そちらが一人ならばこちらも一人に決まっているだろうがっ! 一人を数で叩いたところでつまらんからなっ!!》
《そうだな。今から一日一人、お前の相手をしよう。地上にいる魔族は我ら十人とグレマンティス様だけだ。ここからはお互いに生き残りを掛けてバトルしようじゃないか》
「ほう、俺はそれでも構わないぜ。じゃあルールを決めようか」

 リクトは十魔天と話し合いバトルのルールを決めていく。
 まず、縦横一キロの武舞台を作り、戦う者はそこに上がる。勝敗は武舞台から落ちるか、ギブアップか死。テンカウントは無い。
 試合は一日一試合。これは一人しかいないリクトのためのルールだ。もっとクズみたいな奴らを想像していたリクトにとっては目から鱗だった。

「武舞台はどうすんだよ?」
《俺らが作るさ。お前はそこら辺で休んどきな。明日の昼に第一試合開始だ》
「そりゃありがたいね。なら宜しく頼むわ」

 そう言い、リクトは現状維持を解除し、食事を始めた。魔族が働く様を見ながらのバーベキュータイムだ。酒が美味い。

「うぐぅっ、やはり一ヶ月ともなると……全然足りんっ! 餓死してしまうっ!! ガツガツガツガツ!! グビグビグビグビ……!!」

 リクトは一ヶ月分の空腹と脱水に襲われていた。これが現状維持のもう一つのリスクなのである。

《くそっ……! 野郎……っ! 酒飲んでやがるっ!!》
《くぅぅぅっ! 肉の焼ける良い匂いがっ!!》

 十魔天は武舞台を建設しながら苛立っていた。

《どうぞ?》
「ああ、すまんな」
《お肉焼けましたっ!》
「お、サンキュー」
《新しいお肉追加しておきますねっ!》
「おうっ、あ、野菜も頼むわ」
《は、はいっ!》
《《》》 

 あまりにナチュラルに隣にいたから気がつかなかった。 
 色っぽいチャンネーは酒を注ぎ、女の子は焼けた肉をリクトの口に運び、男の娘はかいがいしく新しい肉を網に並べたりしていた。

「っは!? いつの間に!?」
《ほほほ、最後の晩餐なのですから良いではありませんか。魔族にお酌される人間なんてあなたが初めてかもしれませんよ?》
「そりゃそうだろうが……、あいつら怒ってんぞ?」

 武舞台にいる七人は激しく怒り狂っていた。

《働けやお前らぁぁぁぁぁぁっ!!》
《敵と遊んでんじゃねぇっ!!》
《あんたはちゃっかり自分も飲んでるじゃないのっ! ズルイわよっ!!》

 何故か魔族同士の争いが始まった。だがリクトはそれを無視し、幼い魔族二人に肉を与えていた。

「なんだ、人間以外も食えんじゃん」
《はいっ、一番美味しいのが人間の肉と言うだけで私達は基本雑食ですっ。はぐはぐはぐ……》
《おいひぃれすっ……もっと舐めさせてくらさいっ!》

 男の娘はリクトの指に付いたソースを舐めていた。リクトはいつの間にか立派な玉座をその場に置き、くつろいでいた。

《お酒、まだいかれます?》
「いや、酒よりお前を食いたいなぁ~なんてな」
《はい喜んでぇぇぇぇぇぇぇぇっ!》

 色っぽいチャンネーは秒で服を脱ぎ捨てリクトを取り出し、跨がるのであった。
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