上 下
10 / 41

第10話 まだいる騎士団長

しおりを挟む
 あれから数日、騎士団長はまだ村に駐在していた。

「あれ、まだ村にいたんですか?」
「おや? リクト殿か。はは、そりゃあいるさ。コイツらの性根を叩き直さなきゃならんからな。コラッ! そこサボるなぁっ! 素振り百回追加だっ!」
「んひぃぃぃぃっ!」

 団員達は皆死んだ魚の目をしていた。

「ああ、そうだ。リクト殿」
「はい?」
「詰所の件だが……。何やらここまで立派な詰所を作ってもらったと言うのにも関わらず、奴らは君に一銭も払ってないとか……。すまなかったな。これは迷惑料だ。受け取って欲しい」

 団長は硬貨がギッシリ詰まった袋を取り出し俺に押し付けてきた。

「こんなにもらえませんって。多過ぎですよ」
「気にするな、君には散々迷惑を掛けてしまったからな。それは私からの謝罪の気持ちだ。金で解決するのは何だが……、他に方法が浮かばなくてだな。それとも……私の身体でもやろうか?」
「え?」
「ははっ、冗談だ。こんな傷だらけの身体じゃ興奮せんだろう」
「え?」
「……え? まさか……する……のか?」

 俺は改めて団長を見た。確かに所々に傷はあるが、団長は傷など気にならないほど美しかった。腰まで伸びた赤い神に純銀の鎧、胸当ての部分が膨らんでいるのはああしないとキツいからだろう。加えて細いウエストに白いスカートから伸びた脚、まさに美女と呼ぶに相応しい。

「そりゃしますよ。団長さんめっちゃ美人じゃないですか」
「なっ、なななななっ!? なにをバカにゃ……!」
「にゃ?」
「くぅぅぅぅっ! ちょっとこいっ!」

 団長は俺の腕を引き詰所に向かう。その際騎士達に素振りを一万回然り気無く追加する辺り鬼だなと思った。

「どうしたんですか? 団長さん」
「ふ、ふんっ! これを見てもまだ美人とか言えるか?」
「え? ちょっ……!? 何してんすか!?」

 団長は鎧を外し肌を晒した。

「よく見ろ、この胸にある傷を。それと背中や脚もだ」
「は、はぁ……」

 団長の胸の真ん中や背中、膝から下には深い傷があった。全て鎧で隠れていた部分だ。

「これは私の勲章であり、誇りだ。どうだ、醜いだろう? 私はこの傷を悔いた事は一度もない。男にしてみたら萎えるだろう? こんな私が美女? 男はこの傷を見て誰もが隣を去っていった。わかったら美女などと言う言葉は口にしないでもら……なにをしている?」
「見る目ないっすね、そいつら」
「な、なぁっ!? な、何故そんなふくらませ……」
「そりゃあ……団長さんみたいな美女の裸体なんて見せられたらこうなりますよ」
「み、醜いとは思わないのか?」
「全然? だってそれは勲章なんでしょ? 勲章を醜いなんて思うほど腐っちゃいませんよ。団長さんは美女だ」
「くっ……うぅっ。く、口では何とでも言える! こ、こいっリクト殿! 口だけではないと証明してみせろ!」
「いいんですか? なら……」

 それから二人は団員達が一万回の素振りを終えて詰所に戻るまで愛し合った。

「団長~……、素振り終わりまし……た? な、何してるんですか団長っ!?」
「んはぁぁぁぁっ! 凄いぞっリクトォォォッ! この私相手に全く萎えさせないとはっ!」
「言ったでしょ? 美女だって。あ、ちゃんと避妊してますよね?」
「……あ、ああ。……し、してるぞ?」

 嘘だな。しかもほとんど経験ないだろ……。

「だ、団長! 団長っ!!」
「えぇぇいっ! うるさいっ! 私は今忙しいんだっ! 後にしろ後に!」
「「「「えぇぇぇぇ……」」」」

 団長は自分の全てを受け入れ、全く萎えないリクトにすっかりやられていた。リクトの予想通り、団長は経験がない。膜は激しい訓練で破れた。実施これが団長にとっての初体験だった。

「私に女としての幸せがくるなどっ……! リクト……リクトォォォォォッ!」
「くぅっ! そんなに締めたらまたっ!」
「こいっリクトォォッ! リクトの全てを受け入れてやろうっ! そのままくるんだっリクトォォォッ!」
 
 これが団長の賢者タイムが始まるまで繰り返された。

「団長? 私達になぁんて言いましたっけ?」
「……知らんな。私はもう団長ではないからな。ふふっ、私は母親になるのだ、この子のなっ!」
「何バカな事言ってるんですか!? 団長が辞めたら下はどうなると……」
「知らん。副団長にやらせればいいだろ。とにかくだ、私はもう引退するっ! そしてこの村でリクトと一緒に死ぬまで暮らすのだ!」

 団員達は唖然としていた。あの鬼のような団長が目の前ですっかり女になっていたのだから。

「あ、後から来た団長にリクトくんをとられるなんてぇぇぇぇっ! 横暴よっ! 私達は抗議するわっ!」
「「「そうだそうだ! リクトを返せ~!」」」
「あぁん? 返せだと? 欲しいのなら力ずくでこいっ!! 例え傷が増えようが……愛を知った私は負けはせんからなぁっ!」
「「「「団長相手に力ずくで勝てるわけないでしょ!?」」」」
「なら諦めるのだな。ああ、そうだ。この村は私が守るからお前達はもう帰って良いぞ? 副団長によろしく言っておいてくれ」
「「「「んなっ!?」」」」

 団長は皆の見ている前だが気にせず甘えてきた。

「リクトぉ……、どうやら外れてしまったようだ……。ちゃんと命中するまで続けても良いだろうか?」
「タフですね。まぁ……俺もまだ元気なんで良いですよ?」
「元気なのはわかっている……。なにせ私の中にミッチリ入ってるからなぁ……。そんなに気に入ってくれたのか?」
「ええ、だんだん女になっていく団長さんが可愛くてねっ?」
「んはぁっ! か、可愛いなどと……! ふふふっ、嬉しいぞ……リクト殿っ!」

 団長は再び動き始めた。

「だ、団員ばっかりズルいですよっ! なら私達も騎士やめます!」
「はぁ? 見習いが何を……。見習いは妊娠、結婚以外では三年の拘束期間がある事を忘れたのか。残念だったな?」
「なら孕むだけです! リクトくんを渡して下さいっ!」
「ダメだ。リクトには私が奉仕するのだ。お前らのでる幕ない! リクトはなぁ……、こんな私でも愛してくれるのだ! 私にはもうリクトしかいないのだっ!」

 俺は団長にこう言った。

「団長さ、別に皆を帰さなくてもよくない?」
「な、なにっ!? リクト……、まさか奴らを選ぶ……のか?」
「いやいや、多分皆を帰したら団長が俺に溺れて辞めたとか言われるだろ? それじゃあまりにも国のために働いてきた団長が可哀想だしさ、ここは何事もなかったかのように振る舞ってだな、どうしようもないあの四人を一から鍛えるって目的で残しておいた方がいいって」
「し、しかし……。私は今すぐリクトとの子が欲しいのだ……」
「そりゃ孕ませますよ? でも報告しなきゃバレないでしょ? 皆には本当に強くなってもらってさ、強くなったら俺が抱くってことでどうかな? そしたら団長は役目を果たしてるし、何より皆も強くなるし万事解決じゃない?」
「……そんな事言って……、リクトは皆を抱きたいだけじゃないだろうな?」
「違うって。俺はのんびり平和に暮らしたいの。だからあまり騒いで欲しくないんだよ。ね? 頼むよ~」

 団長は折れた。

「り、リクトに頼まれたら飲むしかないじゃないか。全く……、お前たち、リクトの優しさに感謝しろよ? 強くなったら抱いてもらえるそうだ。まぁ、頑張るんだな」
「「「「は、はいっ! 死ぬ気で強くなります!」」」」

 この後団長は団員を一人欠いた事を副団長に報告し、また残る四人の不甲斐なさを諌めるためにも村に残ると付け加えるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

前世は悪神でしたので今世は商人として慎ましく生きたいと思います

八神 凪
ファンタジー
 平凡な商人の息子として生まれたレオスは、無限収納できるカバンを持つという理由で、悪逆非道な大魔王を倒すべく旅をしている勇者パーティに半ば拉致されるように同行させられてしまう。  いよいよ大魔王との決戦。しかし大魔王の力は脅威で、勇者も苦戦しあわや全滅かというその時、レオスは前世が悪神であったことを思い出す――  そしてめでたく大魔王を倒したものの「商人が大魔王を倒したというのはちょっと……」という理由で、功績を与えられず、お金と骨董品をいくつか貰うことで決着する。だが、そのお金は勇者装備を押し付けられ巻き上げられる始末に……  「はあ……とりあえず家に帰ろう……この力がバレたらどうなるか分からないし、なるべく目立たず、ひっそりしないとね……」  悪神の力を取り戻した彼は無事、実家へ帰ることができるのか?  八神 凪、作家人生二周年記念作、始動!  ※表紙絵は「茜328」様からいただいたファンアートを使用させていただきました! 素敵なイラストをありがとうございます!

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!

こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。 ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。 最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。 だが、俺は知っていた。 魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。 外れスキル【超重量】の真の力を。 俺は思う。 【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか? 俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

処理中です...