69 / 85
第06章 竜界編
02 母登場
しおりを挟む
蓮太は光竜と共に敵のいなくなった塔を進む。どうやら先に行った火竜達がかなり暴れたようだ。
《レンタ様、お身体の具合はどうですか?」
《う~ん……。確かに強くっていうか安定した感じはあるけど……。そこまで大幅にレベルアップしたって感じはないかな》
《それで良いのです。レンタ様は元々強いので後は竜の 力さえ上手く制御できるようになれば父など一瞬で屠れるでしょう》
《屠れるって……。まあ良いや。それよりさ、お前らの母親は別なんだよな?》
《はい。と言いましても、別なのは遺伝子だけで、本体は一人です》
《んんん? 待て、意味がわからん》
すると光竜は詳しい説明を始めた。
《まず、私達の母は【無竜】といいます》
《無竜?》
《はい。自らは属性を持たず、属性を持つ分身体を生み出せる、それが私達の母です》
《……なるほど。だから母親は別なのか。お前達はその分身体から産まれたんだな》
《はい。ちなみに、人間からは失われた属性である氷、雷、邪属性にもなれますが……レンタ様はなぜか使えるようなので……》
《俺は特別でな。だが……全竜もその属性は入ってんだろ?》
《はい。全竜は全ての属性を等しく扱えます》
《やり辛そうな相手だなぁ……》
だが扱えるといったところでどの程度扱えるかにもよる。蓮太は全ての属性を最上級の練度で扱えるが、果たして全竜はどうなのだろうか。
《アニキ~!》
《む、来たか》
《兄ちゃ~ん!》
先に進むと扉の前で火竜達三体が待っていた。
《待たせたな、道中の掃除ご苦労さん》
《なんのなんの。それよりアニキは……ヤバい事になってますね》
《うむ。光と闇の属性が突出しているな。そもそも光と闇の属性は他の属性より優位にある。その二つに特化した主は……まさに怪物だな》
《怪物って……。まぁ、お陰さまでな。それより中に入らないのか? 母親がいるんだろ?》
《い、いやぁ~……。兄ちゃんを待ってたんだよっ。何か感じない?》
《はぁ?》
言われて気配を探ると、扉ごしに緊張感が走った。
《……なぁ、なにこれ?》
《さぁなぁ~。多分親父がまたなんかやらかしたんじゃね? 多分キレてる》
《全く、あの父ときたら……。すまんな主。我らはここで待っておるが故、主一人で入られよ》
《どんだけ怖がってんだお前ら……》
だが怖がって当たり前だ。話をそのまま聞くなら、無竜は全属性に分身できる上、本体は全属性耐性を持っている事になる。ある意味全竜より厄介な相手だ。
《父も母に何回瀕死においやられても反省しないので。こうして別居状態なのです》
《やれやれ。なぜに全竜の怒りを俺に向けられなきゃならんのか。だがこうしていても仕方ないし、いっちょ行ってくるわ》
《《頑張って!》》
そして蓮太は一人扉を開き中に進んだ。
《全竜ぅぅぅぅぅぅっ! あなた何しに──って、あら? 全竜じゃない? 誰かしら?》
《初めまして。俺はレンタ。あなたの子供達から血を注がれ竜になった元人間っす》
《え? に、人間? またまた……。嘘は良いわ。人間にしては強すぎる力を感じるもの》
《嘘じゃないんだけどなぁ~……》
いつの間にか扉は閉まっていた。室内はファンシーな家具で満ちており、無竜は天崖付きのベッドに座っている。
《地上に降りた子ども達は六体、明らかに属性は足りてないのにあなたは全竜になっている。だからあなたが人間なんてありえない話なの。あなた……全竜が他所で作った子じゃないの?》
《悪いけど俺は全竜を見た事もない。俺は人間の時に全属性を扱えていたからね。多分そのせいじゃないかな》
《それこそありえない話だわ。人間にロストマジックを復活させる知恵なんてあるはず──なるほど。あなた……異世界人ね》
《ほう。異世界の存在を知っているのか》
蓮太は無竜の口から飛び出した異世界という単語に驚きを示した。
《永く生きていますからね。異世界人にも会った事があるわ。異世界人は不思議な力を扱え、私達の知らない知識を有する者、それなら属性が足りなくても全竜に至れた可能性があるわ》
《ああ、俺は異世界人だ。だが一度死んでから神の力でこの世界の人間に転生している》
《神? ああ、あのボンクラね。あなたも次元の裂け目に落ちた口かしら?》
《知ってんのか!?》
《ええ。会った事もあるわ。口ばかり達者ですぐイキる小物でしょ?》
《あ、ああ》
蓮太は驚きの連続だった。今初めて神の存在が確かにあったのだと実感していた。
《よくあのケチな神から力をもらえたわね》
《あ、ああ。最初ショボいスキルしか渡さないようだったからシメたんだ》
《ぷっ、あははははっ。あなた、神をシメちゃったの? あははははっ、面白い人間ね~》
なにやら今の話が無竜のツボに入ったらしい。
《そうそう。でさ、そうやって最強のスキルをもらったわけよ》
《あはははっ。で? 何をもらったのかしら?》
《ああ、万物創造だ》
《……え? う、嘘でしょう?》
《マジだ。俺は異世界の知識を持っている。それを使って全属性を極めたのさ》
すると笑っていた無竜の顔から笑みが消え、蓮太に鋭い視線が向けられた。
《あなた……レンタと言ったわね。目的はなに? まさか私達を根絶やしにしにきたの?》
《はぁ? なんでそうなる!?》
《決まってるじゃない。私達竜は最強の存在であり、頂点に立つ生物よ。しかも私達竜の血や骨、内臓は死者をも蘇らせられる薬を作るための素材になるわ。あなたの目的は……竜の死体、違う?》
《全く違う! 俺は神竜になるために竜界に来たの! 今の俺は力が強すぎて地上じゃ暮らせないらしいからな!》
《確かに……。それだけの力だと地上では暮らせないわね。でも……神竜って本気? 今全竜が挑戦中だからアレが諦めるまで受けられないわよ?》
《知っている。だからまず全竜をボゴって試練をあきらめさせる。試練はそれからだ》
すると無竜がまた笑いながら近付いてきた。
《あははははっ、良いじゃない。全竜をボコボコにするって最高! 私でも出来ない事はないけど疲れるのよねぇ。それに、あいつは私が殴っても一時だけ反省してやられた事すぐ忘れるし》
《手を焼いてるみたいだな》
《ホントにね。あれは力があるが故に勘違いしてんのよ。自分は何をしても許されるってね。おかげで竜界は亜竜の山よ。亜竜は知恵もない出来損ないだからいくら威嚇しても効かないし。困ってたのよ》
《ああ……かなりの数がいたなぁ……》
そこで無竜が蓮太にある提案をしてきた。
《あなたが全竜を反省させたら望みを叶えてあげるわ》
《望みを?》
《ええ。私に叶えられる範囲でだけどね》
《ふ~む……。なら……ぜひとも一戦交えたいのだが。あそこで》
《へ? あ、あそこって……。ほ、本気?》
《ああ。だめか?》
《あっ──》
蓮太は無竜の尻尾に自分の尻尾を絡ませた。
《だ、だめよっ……。私は全竜の妻で……》
《その全竜は浮気三昧なんだろ? 最近愛してもらったか? 全く相手にしてもらってないんだろ?》
《そ、そうだけどっ──! だ、だめよぉ……っ。まだ全竜と戦ってもないのに……っ》
口ではそう言いながらも、抵抗らしい抵抗はない。そればかりか自らベッドに向かい下がっている。
《俺に無属性もくれよ、無竜。全竜はボゴる。前払いでな?》
《あぁ……、そんな情熱的に求められたらっ……お、堕ちちゃうわっ!》
《堕ちちまえよ、無竜。今からお前を俺のモノにする。嫌なら拒め、本気でな》
《あぁぁ、もう……堕ち──》
その頃全竜の塔へと向かった水竜と闇竜はというと。
《水竜っ! しっかりっ!》
《うぐっ……げほっげほっ》
《ったくよぉ……。俺様がお楽しみの最中に邪魔しやがって。そんな所は母親そっくりだなぁおいっ!》
《うぐぅぅぅぅっ!》
全竜は容赦なく床に伏せる水竜の腹を蹴りあげた。
《なにもそこまでしなくてもっ!》
《あぁ? お前も俺様に逆らうのか? ガキだからって手加減しねぇよ?》
《あ……あぁぁ……》
《消えろ。それともお前が相手してくれんのか?》
《す、するわけないっ! 私の身体はレンタのだっ!》
《あぁ? 誰だそりゃ?》
《あぐっ!》
全竜は片手で闇竜の首を握り持ち上げた。
《レンタはっ、神竜になるために私達が血を与えた人間よっ! あんたなんかレンタに殺られちゃえっ!》
《人間? ひははははははっ、何を言うかと思えば人間だと? くだらねぇ。そんな人間に股を開いたお前もくだらねぇな。この首……捩切ってやろうか?》
《や、やめてパパ!》
《あぁん?》
水竜が蹴られた腹を押さえながら立ち上がる。
《んだよ、バカが口開いてんじゃねぇよ。誰に似たか知らねぇバカが。お前は一番の出来損ないだ。軽々しくパパ~なんて言ってんじゃねぇよ。身の程を弁えろや、カスが》
《うっ……うぅぅぅぅっ!》
《はははははっ、泣いてんのか? 雑魚が。おらよっ!》
《あぐっ!》
全竜は水竜に向かい闇竜を放り投げた。
《二度と面見せんじゃねぇぞ、クソガキが》
《あ、あんたなんか……》
《あ?》
《あんたなんかレンタに殺されちゃえっ! 何が全竜よっ! あんたなんかよりレンタの方が強いんだからっ!》
《アァァァァァッ!?》
全竜は怒り水竜の頭を踏みつけた。
《ふざけた事ぬかしてんじゃねぇぞゴラッ! 俺様が一番強ぇんだよ! 人間から竜になったばかりの雑魚が俺様より強いだ? なら連れて来いや! お前らの前で八つ裂きにしてやらぁっ!》
《や、八つ裂きになるのはあんたなんだからぁっ! せ、せいぜい種でもばら蒔いてなさいよっ!》
《テメェ……。そいつを殺したら次はテメェだ。首洗って来いやっ!》
あぁぁぁぁぁっ!!
全竜は水竜と闇竜を蹴り飛ばし、部屋から追い出した。
《す、水……竜……っ》
《う……うぅぅぅっ! あ、あんな奴……死ねば良いっ! 闇竜……、レンタの所に……うっ……》
《水竜!》
水竜はあまりの痛みで気を失ってしまった。闇竜は水竜を担ぎ無竜の塔へと向かう。
《レンタ……、レンタァァァァッ!》
闇竜は痛みに耐えながらも、必死に無竜の部屋へと向かうのだった。
《レンタ様、お身体の具合はどうですか?」
《う~ん……。確かに強くっていうか安定した感じはあるけど……。そこまで大幅にレベルアップしたって感じはないかな》
《それで良いのです。レンタ様は元々強いので後は竜の 力さえ上手く制御できるようになれば父など一瞬で屠れるでしょう》
《屠れるって……。まあ良いや。それよりさ、お前らの母親は別なんだよな?》
《はい。と言いましても、別なのは遺伝子だけで、本体は一人です》
《んんん? 待て、意味がわからん》
すると光竜は詳しい説明を始めた。
《まず、私達の母は【無竜】といいます》
《無竜?》
《はい。自らは属性を持たず、属性を持つ分身体を生み出せる、それが私達の母です》
《……なるほど。だから母親は別なのか。お前達はその分身体から産まれたんだな》
《はい。ちなみに、人間からは失われた属性である氷、雷、邪属性にもなれますが……レンタ様はなぜか使えるようなので……》
《俺は特別でな。だが……全竜もその属性は入ってんだろ?》
《はい。全竜は全ての属性を等しく扱えます》
《やり辛そうな相手だなぁ……》
だが扱えるといったところでどの程度扱えるかにもよる。蓮太は全ての属性を最上級の練度で扱えるが、果たして全竜はどうなのだろうか。
《アニキ~!》
《む、来たか》
《兄ちゃ~ん!》
先に進むと扉の前で火竜達三体が待っていた。
《待たせたな、道中の掃除ご苦労さん》
《なんのなんの。それよりアニキは……ヤバい事になってますね》
《うむ。光と闇の属性が突出しているな。そもそも光と闇の属性は他の属性より優位にある。その二つに特化した主は……まさに怪物だな》
《怪物って……。まぁ、お陰さまでな。それより中に入らないのか? 母親がいるんだろ?》
《い、いやぁ~……。兄ちゃんを待ってたんだよっ。何か感じない?》
《はぁ?》
言われて気配を探ると、扉ごしに緊張感が走った。
《……なぁ、なにこれ?》
《さぁなぁ~。多分親父がまたなんかやらかしたんじゃね? 多分キレてる》
《全く、あの父ときたら……。すまんな主。我らはここで待っておるが故、主一人で入られよ》
《どんだけ怖がってんだお前ら……》
だが怖がって当たり前だ。話をそのまま聞くなら、無竜は全属性に分身できる上、本体は全属性耐性を持っている事になる。ある意味全竜より厄介な相手だ。
《父も母に何回瀕死においやられても反省しないので。こうして別居状態なのです》
《やれやれ。なぜに全竜の怒りを俺に向けられなきゃならんのか。だがこうしていても仕方ないし、いっちょ行ってくるわ》
《《頑張って!》》
そして蓮太は一人扉を開き中に進んだ。
《全竜ぅぅぅぅぅぅっ! あなた何しに──って、あら? 全竜じゃない? 誰かしら?》
《初めまして。俺はレンタ。あなたの子供達から血を注がれ竜になった元人間っす》
《え? に、人間? またまた……。嘘は良いわ。人間にしては強すぎる力を感じるもの》
《嘘じゃないんだけどなぁ~……》
いつの間にか扉は閉まっていた。室内はファンシーな家具で満ちており、無竜は天崖付きのベッドに座っている。
《地上に降りた子ども達は六体、明らかに属性は足りてないのにあなたは全竜になっている。だからあなたが人間なんてありえない話なの。あなた……全竜が他所で作った子じゃないの?》
《悪いけど俺は全竜を見た事もない。俺は人間の時に全属性を扱えていたからね。多分そのせいじゃないかな》
《それこそありえない話だわ。人間にロストマジックを復活させる知恵なんてあるはず──なるほど。あなた……異世界人ね》
《ほう。異世界の存在を知っているのか》
蓮太は無竜の口から飛び出した異世界という単語に驚きを示した。
《永く生きていますからね。異世界人にも会った事があるわ。異世界人は不思議な力を扱え、私達の知らない知識を有する者、それなら属性が足りなくても全竜に至れた可能性があるわ》
《ああ、俺は異世界人だ。だが一度死んでから神の力でこの世界の人間に転生している》
《神? ああ、あのボンクラね。あなたも次元の裂け目に落ちた口かしら?》
《知ってんのか!?》
《ええ。会った事もあるわ。口ばかり達者ですぐイキる小物でしょ?》
《あ、ああ》
蓮太は驚きの連続だった。今初めて神の存在が確かにあったのだと実感していた。
《よくあのケチな神から力をもらえたわね》
《あ、ああ。最初ショボいスキルしか渡さないようだったからシメたんだ》
《ぷっ、あははははっ。あなた、神をシメちゃったの? あははははっ、面白い人間ね~》
なにやら今の話が無竜のツボに入ったらしい。
《そうそう。でさ、そうやって最強のスキルをもらったわけよ》
《あはははっ。で? 何をもらったのかしら?》
《ああ、万物創造だ》
《……え? う、嘘でしょう?》
《マジだ。俺は異世界の知識を持っている。それを使って全属性を極めたのさ》
すると笑っていた無竜の顔から笑みが消え、蓮太に鋭い視線が向けられた。
《あなた……レンタと言ったわね。目的はなに? まさか私達を根絶やしにしにきたの?》
《はぁ? なんでそうなる!?》
《決まってるじゃない。私達竜は最強の存在であり、頂点に立つ生物よ。しかも私達竜の血や骨、内臓は死者をも蘇らせられる薬を作るための素材になるわ。あなたの目的は……竜の死体、違う?》
《全く違う! 俺は神竜になるために竜界に来たの! 今の俺は力が強すぎて地上じゃ暮らせないらしいからな!》
《確かに……。それだけの力だと地上では暮らせないわね。でも……神竜って本気? 今全竜が挑戦中だからアレが諦めるまで受けられないわよ?》
《知っている。だからまず全竜をボゴって試練をあきらめさせる。試練はそれからだ》
すると無竜がまた笑いながら近付いてきた。
《あははははっ、良いじゃない。全竜をボコボコにするって最高! 私でも出来ない事はないけど疲れるのよねぇ。それに、あいつは私が殴っても一時だけ反省してやられた事すぐ忘れるし》
《手を焼いてるみたいだな》
《ホントにね。あれは力があるが故に勘違いしてんのよ。自分は何をしても許されるってね。おかげで竜界は亜竜の山よ。亜竜は知恵もない出来損ないだからいくら威嚇しても効かないし。困ってたのよ》
《ああ……かなりの数がいたなぁ……》
そこで無竜が蓮太にある提案をしてきた。
《あなたが全竜を反省させたら望みを叶えてあげるわ》
《望みを?》
《ええ。私に叶えられる範囲でだけどね》
《ふ~む……。なら……ぜひとも一戦交えたいのだが。あそこで》
《へ? あ、あそこって……。ほ、本気?》
《ああ。だめか?》
《あっ──》
蓮太は無竜の尻尾に自分の尻尾を絡ませた。
《だ、だめよっ……。私は全竜の妻で……》
《その全竜は浮気三昧なんだろ? 最近愛してもらったか? 全く相手にしてもらってないんだろ?》
《そ、そうだけどっ──! だ、だめよぉ……っ。まだ全竜と戦ってもないのに……っ》
口ではそう言いながらも、抵抗らしい抵抗はない。そればかりか自らベッドに向かい下がっている。
《俺に無属性もくれよ、無竜。全竜はボゴる。前払いでな?》
《あぁ……、そんな情熱的に求められたらっ……お、堕ちちゃうわっ!》
《堕ちちまえよ、無竜。今からお前を俺のモノにする。嫌なら拒め、本気でな》
《あぁぁ、もう……堕ち──》
その頃全竜の塔へと向かった水竜と闇竜はというと。
《水竜っ! しっかりっ!》
《うぐっ……げほっげほっ》
《ったくよぉ……。俺様がお楽しみの最中に邪魔しやがって。そんな所は母親そっくりだなぁおいっ!》
《うぐぅぅぅぅっ!》
全竜は容赦なく床に伏せる水竜の腹を蹴りあげた。
《なにもそこまでしなくてもっ!》
《あぁ? お前も俺様に逆らうのか? ガキだからって手加減しねぇよ?》
《あ……あぁぁ……》
《消えろ。それともお前が相手してくれんのか?》
《す、するわけないっ! 私の身体はレンタのだっ!》
《あぁ? 誰だそりゃ?》
《あぐっ!》
全竜は片手で闇竜の首を握り持ち上げた。
《レンタはっ、神竜になるために私達が血を与えた人間よっ! あんたなんかレンタに殺られちゃえっ!》
《人間? ひははははははっ、何を言うかと思えば人間だと? くだらねぇ。そんな人間に股を開いたお前もくだらねぇな。この首……捩切ってやろうか?》
《や、やめてパパ!》
《あぁん?》
水竜が蹴られた腹を押さえながら立ち上がる。
《んだよ、バカが口開いてんじゃねぇよ。誰に似たか知らねぇバカが。お前は一番の出来損ないだ。軽々しくパパ~なんて言ってんじゃねぇよ。身の程を弁えろや、カスが》
《うっ……うぅぅぅぅっ!》
《はははははっ、泣いてんのか? 雑魚が。おらよっ!》
《あぐっ!》
全竜は水竜に向かい闇竜を放り投げた。
《二度と面見せんじゃねぇぞ、クソガキが》
《あ、あんたなんか……》
《あ?》
《あんたなんかレンタに殺されちゃえっ! 何が全竜よっ! あんたなんかよりレンタの方が強いんだからっ!》
《アァァァァァッ!?》
全竜は怒り水竜の頭を踏みつけた。
《ふざけた事ぬかしてんじゃねぇぞゴラッ! 俺様が一番強ぇんだよ! 人間から竜になったばかりの雑魚が俺様より強いだ? なら連れて来いや! お前らの前で八つ裂きにしてやらぁっ!》
《や、八つ裂きになるのはあんたなんだからぁっ! せ、せいぜい種でもばら蒔いてなさいよっ!》
《テメェ……。そいつを殺したら次はテメェだ。首洗って来いやっ!》
あぁぁぁぁぁっ!!
全竜は水竜と闇竜を蹴り飛ばし、部屋から追い出した。
《す、水……竜……っ》
《う……うぅぅぅっ! あ、あんな奴……死ねば良いっ! 闇竜……、レンタの所に……うっ……》
《水竜!》
水竜はあまりの痛みで気を失ってしまった。闇竜は水竜を担ぎ無竜の塔へと向かう。
《レンタ……、レンタァァァァッ!》
闇竜は痛みに耐えながらも、必死に無竜の部屋へと向かうのだった。
0
お気に入りに追加
1,226
あなたにおすすめの小説
ハズレ召喚として追放されたボクは、拡大縮小カメラアプリで異世界無双
さこゼロ
ファンタジー
突然、異世界に転生召喚された4人の少年少女たち。儀式を行った者たちに言われるがまま、手に持っていたスマホのアプリを起動させる。
ある者は聖騎士の剣と盾、
ある者は聖女のローブ、
それぞれのスマホからアイテムが出現する。
そんな中、ひとりの少年のスマホには、画面にカメラアプリが起動しただけ。
ハズレ者として追放されたこの少年は、これからどうなるのでしょうか…
if分岐の続編として、
「帰還した勇者を護るため、今度は私が転移します!」を公開しています(^^)

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
転生無双の金属支配者《メタルマスター》
芍薬甘草湯
ファンタジー
異世界【エウロパ】の少年アウルムは辺境の村の少年だったが、とある事件をきっかけに前世の記憶が蘇る。蘇った記憶とは現代日本の記憶。それと共に新しいスキル【金属支配】に目覚める。
成長したアウルムは冒険の旅へ。
そこで巻き起こる田舎者特有の非常識な勘違いと現代日本の記憶とスキルで多方面に無双するテンプレファンタジーです。
(ハーレム展開はありません、と以前は記載しましたがご指摘があり様々なご意見を伺ったところ当作品はハーレムに該当するようです。申し訳ありませんでした)
お時間ありましたら読んでやってください。
感想や誤字報告なんかも気軽に送っていただけるとありがたいです。
同作者の完結作品「転生の水神様〜使える魔法は水属性のみだが最強です〜」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/743079207/901553269
も良かったら読んでみてくださいませ。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる