無双転生~チートスキルで自由気ままに異世界を生きる~

夜夢

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第06章 竜界編

02 母登場

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 蓮太は光竜と共に敵のいなくなった塔を進む。どうやら先に行った火竜達がかなり暴れたようだ。

《レンタ様、お身体の具合はどうですか?」
《う~ん……。確かに強くっていうか安定した感じはあるけど……。そこまで大幅にレベルアップしたって感じはないかな》
《それで良いのです。レンタ様は元々強いので後は竜の 力さえ上手く制御できるようになれば父など一瞬で屠れるでしょう》
《屠れるって……。まあ良いや。それよりさ、お前らの母親は別なんだよな?》
《はい。と言いましても、別なのは遺伝子だけで、本体は一人です》
《んんん? 待て、意味がわからん》

 すると光竜は詳しい説明を始めた。

《まず、私達の母は【無竜】といいます》
《無竜?》
《はい。自らは属性を持たず、属性を持つ分身体を生み出せる、それが私達の母です》
《……なるほど。だから母親は別なのか。お前達はその分身体から産まれたんだな》
《はい。ちなみに、人間からは失われた属性である氷、雷、邪属性にもなれますが……レンタ様はなぜか使えるようなので……》
《俺は特別でな。だが……全竜もその属性は入ってんだろ?》
《はい。全竜は全ての属性を等しく扱えます》
《やり辛そうな相手だなぁ……》

 だが扱えるといったところでどの程度扱えるかにもよる。蓮太は全ての属性を最上級の練度で扱えるが、果たして全竜はどうなのだろうか。

《アニキ~!》
《む、来たか》
《兄ちゃ~ん!》

 先に進むと扉の前で火竜達三体が待っていた。

《待たせたな、道中の掃除ご苦労さん》
《なんのなんの。それよりアニキは……ヤバい事になってますね》
《うむ。光と闇の属性が突出しているな。そもそも光と闇の属性は他の属性より優位にある。その二つに特化した主は……まさに怪物だな》
《怪物って……。まぁ、お陰さまでな。それより中に入らないのか? 母親がいるんだろ?》
《い、いやぁ~……。兄ちゃんを待ってたんだよっ。何か感じない?》
《はぁ?》

 言われて気配を探ると、扉ごしに緊張感が走った。

《……なぁ、なにこれ?》
《さぁなぁ~。多分親父がまたなんかやらかしたんじゃね? 多分キレてる》
《全く、あの父ときたら……。すまんな主。我らはここで待っておるが故、主一人で入られよ》
《どんだけ怖がってんだお前ら……》

 だが怖がって当たり前だ。話をそのまま聞くなら、無竜は全属性に分身できる上、本体は全属性耐性を持っている事になる。ある意味全竜より厄介な相手だ。

《父も母に何回瀕死においやられても反省しないので。こうして別居状態なのです》
《やれやれ。なぜに全竜の怒りを俺に向けられなきゃならんのか。だがこうしていても仕方ないし、いっちょ行ってくるわ》
《《》》

 そして蓮太は一人扉を開き中に進んだ。

《全竜ぅぅぅぅぅぅっ! あなた何しに──って、あら? 全竜じゃない? 誰かしら?》
《初めまして。俺はレンタ。あなたの子供達から血を注がれ竜になった元人間っす》
《え? に、人間? またまた……。嘘は良いわ。人間にしては強すぎる力を感じるもの》
《嘘じゃないんだけどなぁ~……》

 いつの間にか扉は閉まっていた。室内はファンシーな家具で満ちており、無竜は天崖付きのベッドに座っている。

《地上に降りた子ども達は六体、明らかに属性は足りてないのにあなたは全竜になっている。だからあなたが人間なんてありえない話なの。あなた……全竜が他所で作った子じゃないの?》
《悪いけど俺は全竜を見た事もない。俺は人間の時に全属性を扱えていたからね。多分そのせいじゃないかな》
《それこそありえない話だわ。人間にロストマジックを復活させる知恵なんてあるはず──なるほど。あなた……異世界人ね》
《ほう。異世界の存在を知っているのか》

 蓮太は無竜の口から飛び出した異世界という単語に驚きを示した。

《永く生きていますからね。異世界人にも会った事があるわ。異世界人は不思議な力を扱え、私達の知らない知識を有する者、それなら属性が足りなくても全竜に至れた可能性があるわ》
《ああ、俺は異世界人だ。だが一度死んでから神の力でこの世界の人間に転生している》
《神? ああ、あのボンクラね。あなたも次元の裂け目に落ちた口かしら?》
《知ってんのか!?》
《ええ。会った事もあるわ。口ばかり達者ですぐイキる小物でしょ?》
《あ、ああ》

 蓮太は驚きの連続だった。今初めて神の存在が確かにあったのだと実感していた。

《よくあのケチな神から力をもらえたわね》
《あ、ああ。最初ショボいスキルしか渡さないようだったからシメたんだ》
《ぷっ、あははははっ。あなた、神をシメちゃったの? あははははっ、面白い人間ね~》

 なにやら今の話が無竜のツボに入ったらしい。

《そうそう。でさ、そうやって最強のスキルをもらったわけよ》
《あはははっ。で? 何をもらったのかしら?》
《ああ、万物創造だ》
《……え? う、嘘でしょう?》
《マジだ。俺は異世界の知識を持っている。それを使って全属性を極めたのさ》

 すると笑っていた無竜の顔から笑みが消え、蓮太に鋭い視線が向けられた。

《あなた……レンタと言ったわね。目的はなに? まさか私達を根絶やしにしにきたの?》
《はぁ? なんでそうなる!?》
《決まってるじゃない。私達竜は最強の存在であり、頂点に立つ生物よ。しかも私達竜の血や骨、内臓は死者をも蘇らせられる薬を作るための素材になるわ。あなたの目的は……竜の死体、違う?》
《全く違う! 俺は神竜になるために竜界に来たの! 今の俺は力が強すぎて地上じゃ暮らせないらしいからな!》
《確かに……。それだけの力だと地上では暮らせないわね。でも……神竜って本気? 今全竜が挑戦中だからアレが諦めるまで受けられないわよ?》
《知っている。だからまず全竜をボゴって試練をあきらめさせる。試練はそれからだ》

 すると無竜がまた笑いながら近付いてきた。

《あははははっ、良いじゃない。全竜をボコボコにするって最高! 私でも出来ない事はないけど疲れるのよねぇ。それに、あいつは私が殴っても一時だけ反省してやられた事すぐ忘れるし》
《手を焼いてるみたいだな》
《ホントにね。あれは力があるが故に勘違いしてんのよ。自分は何をしても許されるってね。おかげで竜界は亜竜の山よ。亜竜は知恵もない出来損ないだからいくら威嚇しても効かないし。困ってたのよ》
《ああ……かなりの数がいたなぁ……》

 そこで無竜が蓮太にある提案をしてきた。

《あなたが全竜を反省させたら望みを叶えてあげるわ》
《望みを?》
《ええ。私に叶えられる範囲でだけどね》
《ふ~む……。なら……ぜひとも一戦交えたいのだが。あそこで》
《へ? あ、あそこって……。ほ、本気?》
《ああ。だめか?》
《あっ──》

 蓮太は無竜の尻尾に自分の尻尾を絡ませた。

《だ、だめよっ……。私は全竜の妻で……》
《その全竜は浮気三昧なんだろ? 最近愛してもらったか? 全く相手にしてもらってないんだろ?》
《そ、そうだけどっ──! だ、だめよぉ……っ。まだ全竜と戦ってもないのに……っ》

 口ではそう言いながらも、抵抗らしい抵抗はない。そればかりか自らベッドに向かい下がっている。

《俺に無属性もくれよ、無竜。全竜はボゴる。前払いでな?》
《あぁ……、そんな情熱的に求められたらっ……お、堕ちちゃうわっ!》
《堕ちちまえよ、無竜。今からお前を俺のモノにする。嫌なら拒め、本気でな》
《あぁぁ、もう……堕ち──》

 その頃全竜の塔へと向かった水竜と闇竜はというと。

《水竜っ! しっかりっ!》
《うぐっ……げほっげほっ》
《ったくよぉ……。俺様がお楽しみの最中に邪魔しやがって。そんな所は母親そっくりだなぁおいっ!》
《うぐぅぅぅぅっ!》

 全竜は容赦なく床に伏せる水竜の腹を蹴りあげた。

《なにもそこまでしなくてもっ!》
《あぁ? お前も俺様に逆らうのか? ガキだからって手加減しねぇよ?》
《あ……あぁぁ……》
《消えろ。それともお前が相手してくれんのか?》
《す、するわけないっ! 私の身体はレンタのだっ!》
《あぁ? 誰だそりゃ?》
《あぐっ!》

 全竜は片手で闇竜の首を握り持ち上げた。

《レンタはっ、神竜になるために私達が血を与えた人間よっ! あんたなんかレンタに殺られちゃえっ!》
《人間? ひははははははっ、何を言うかと思えば人間だと? くだらねぇ。そんな人間に股を開いたお前もくだらねぇな。この首……捩切ってやろうか?》
《や、やめてパパ!》
《あぁん?》

 水竜が蹴られた腹を押さえながら立ち上がる。

《んだよ、バカが口開いてんじゃねぇよ。誰に似たか知らねぇバカが。お前は一番の出来損ないだ。軽々しくパパ~なんて言ってんじゃねぇよ。身の程を弁えろや、カスが》
《うっ……うぅぅぅぅっ!》
《はははははっ、泣いてんのか? 雑魚が。おらよっ!》
《あぐっ!》 

 全竜は水竜に向かい闇竜を放り投げた。

《二度と面見せんじゃねぇぞ、クソガキが》
《あ、あんたなんか……》
《あ?》
《あんたなんかレンタに殺されちゃえっ! 何が全竜よっ! あんたなんかよりレンタの方が強いんだからっ!》
《アァァァァァッ!?》

 全竜は怒り水竜の頭を踏みつけた。

《ふざけた事ぬかしてんじゃねぇぞゴラッ! 俺様が一番強ぇんだよ! 人間から竜になったばかりの雑魚が俺様より強いだ? なら連れて来いや! お前らの前で八つ裂きにしてやらぁっ!》
《や、八つ裂きになるのはあんたなんだからぁっ! せ、せいぜい種でもばら蒔いてなさいよっ!》
《テメェ……。そいつを殺したら次はテメェだ。首洗って来いやっ!》


 全竜は水竜と闇竜を蹴り飛ばし、部屋から追い出した。

《す、水……竜……っ》
《う……うぅぅぅっ! あ、あんな奴……死ねば良いっ! 闇竜……、レンタの所に……うっ……》
《水竜!》

 水竜はあまりの痛みで気を失ってしまった。闇竜は水竜を担ぎ無竜の塔へと向かう。

《レンタ……、レンタァァァァッ!》

 闇竜は痛みに耐えながらも、必死に無竜の部屋へと向かうのだった。    
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