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第04章 魔族殲滅編

06 魔王、散る

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 大剣を破壊された魔王は蓮太から距離をとった。だがそれは完全に悪手だ。

「ホーリーレイ、ホーリーレイ、ホーリー……」
《ぐあはぁぁぁぁぁっ! は、速すぎるっ! 躱わしきれんっ! 何だこれはっ!》

 蓮太は離れた魔王に対し神聖魔法で攻撃しまくっていた。

「おらおら、踊れ踊れ。足貫くぞ」
《ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ!》

 状態異常も効かない、物理攻撃も反射する。それなら魔法で攻撃すれば良い。しかも魔族が知らない神聖魔法での攻撃だ。これは魔王にも効果抜群だった。

《はぁっはぁっ……! なんだその魔法はっ! なぜこうも簡単に我の身体を貫いてくるっ!?》
「そりゃ神聖魔法だからな。魔族には効果てきめんだろ。おらおら」
《し、神聖属性の攻撃魔法だとっ!? ぐぁっ!? バカなっ! それを使えるのは天使のみのはずっ! なぜ人間のお前が使えるっ!?》
「お前が知る必要はないな。おら、【ホーリーフレイム】」
《ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?》

 あまりに一方的な展開にラフィエルは唖然としていた。

「た、戦わなくて良かったですわ……。あんなの私には耐えきれません……」
「ハハハハハハッ! 何が魔王だ、たかだか魔法攻撃で死にかけるくらいのクソ雑魚じゃねぇか! 弱ぇ、弱ぇなぁぁぁぁっ!」
《ぐっ……!》

 魔王は聖なる炎で身体を焼かれ瀕死に陥っていた。

《おのれ……っ! ならばその魔法を封じるまでよっ! まさか人間にこの姿を見せる事になるとはな……! 変身っ!!》
「む?」

 魔王は身体を丸め黒い光を放つ。そして丸めた背中が裂け、新たな魔王が姿を見せた。これまでより一回り小さくなったが、その力は段違いに上がっている。

《……これで私にはもう魔法は効きませんよ。さあ、命乞いせよ、愚かなり劣等種》
「ふん、それで俺の攻撃を封じたつもりか?」
《なんだ──ふっ、その手には乗りませんよ。私は冷静、もう乱れる事はありません》

 変身した事で冷静さを取り戻したのか、魔王は簡単には挑発に乗らなくなった。

「なんだ、つまんねぇの。ゴミはゴミらしく死んどけっつーの」
《その言葉はそっくりそのまま返しますよ。【ダークレイ】》

 魔王は蓮太を真似、人差し指から黒い光を放った。

「反射」
《ぐあっ!? な、なんだとっ!? い、今何を……》
「あん? お前と同じく反射してやっただけだが?」
《ふざけるなぁっ! 反射は私だけのスキルだぞっ! それを人間が使えるだとっ! バカも休み休み言えっ!》
「本当なんだがな。さて、次は何を見せてくれんの?」

 蓮太は完全に遊んでいた。異世界で簡単に死なないために、生まれた瞬間からあらゆる準備を怠らなかった蓮太に死角はない。それが魔王相手でも生きていた。

《ならばこれで! 出でよ、魔剣エグゾダス!!》
「ほう」

 魔法を反射された魔王は自らの魔法でダメージを受け、今度は剣を出した。

《これで首を斬り落としてくれるわっ! 死ねぇぇぇぇっ、劣等種めっ!》
「反射」
《ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?》

 蓮太の首を狙い放たれた魔王の物理攻撃は再び自らを傷付けた。変身した魔王の首が裂ける。

《ごぼっ……、な、なぜ……》
「反射とか基本中の基本だろうよ。そんなの生まれた瞬間から身に付けてたわ。こんなスキルでイキってんじゃねぇよ」
《がはっ……、ダ、ダークヒール……!》

 魔王は首に手を当て傷を癒した。

《何者なのだ貴様はっ! 人間にこんな力はないはずだっ! 昔はあったかもしれんが今はその力も失われたはずだっ! だからそれまで待って地上に出てきたというのに──》
「なんだよ、人間が怖かったのか? 劣等種はお前じゃねぇか。魔王の名が泣いてるぜ、おい」
《ぐぬぬ……》

 魔王にはもう蓮太を攻撃する手段は残っていなかった。そこで怒りを殺し、蓮太を懐柔しようと試みる。

《わ、私は弱い。それは認めよう。だが……負けはしない。お前、私と組まないか?》
「はぁ?」
《私はお前には勝てん。だが他の人間は指一本あれば全て殺せる。私が世界を手に入れた暁にはその半分をお前を与えようじゃないか》
「半分だ?」
《そ、そうだ。私は糧があればそれで良い。お前には世界の半分、つまり……全てのメスをくれてやる。どうだ、私と組んで世界を支配してみないか?》

 蓮太は今のセリフを受けこう思った。魔王にはもう抗う手段がないのだと。

「そんなの別に興味ないしな。仮に興味あったとしてもだ、お前みたいな雑魚と組むかよ。最初から交渉になってねぇんだよバーカ」
《ぬぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! どこまでもバカにしおってぇぇぇぇぇっ!! ならばもう貴様などいらぬわっ!! この城に埋もれて死ねぇぇぇぇぇぇっ!》

 魔王は天井を突き破り空へと浮かび上がった。そして城に設置されていた爆破装置のボタンを押した。

《ハハハハハッ! これなら反射できまいっ!! 反射の弱点など把握済みだ! ハハハハ──は?》

 魔王が高笑いしていた時だった。城の天井にあった槍のような装飾が爆破の衝撃で吹き飛び、魔王の核を貫いた。

《ゴフッ──! な、なんだこれは──! わ、私の核が……あぁぁぁ……身体が維持できな──いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!》

 核を失った魔族は等しく死に至る。それは魔王でも例外ではない。魔王は自ら造り、自ら爆破した城の破片で核を失い、砂となり消え去った。

 そして蓮太はと言うと。

「おーい、ターニア」
「レンタ!」

 蓮太はラフィエルを連れターニアとの待ち合わせ場所に転移していた。蓮太の姿を見たターニアはすぐに駆け寄ってきた。

「魔王は?」
「倒した」
「本当!?」
「ああ。奴の核を貫いてやったからな」

 城の装飾が都合よく核を貫く確率など零に等しい。あれは蓮太による攻撃だったのだ。

 城の崩壊が始まってすぐに蓮太はラフィエルを連れ城の外に転移していた。そしてラフィエルに空間を出させ、装飾の槍を核に向け飛ばし、空間内に退避していた。これで魔王による反射攻撃を受ける事なく攻撃できたのだった。

「さすがレンタ! それで……その人は?」
「ああ、俺の奴隷でラフィエルだ。元は魔族だがなかなか使えるスキルを持っていたから仲間にした」
「ラフィエルですわ。私は空間を操る事ができます。よろしくお願いいたします」
「私はターニア。よろしくラフィエル」

 そうして二人の面通しを終え、蓮太は二人に言った。

「じゃあ行くか。行き先は浮遊大陸だ。良いな?」
「レンタ、魔王を倒した報告は?」
「いらねぇだろ。もう魔族はいないんだ、勝手に確認しろっつーの」
「ふふっ、確認された方は驚くかもしれませんね」
「? なにかしたの?」
「さあな。さ、もう行こうぜ。誰かに見つかったらせっかく偽装工作までしてきたのに無駄になっちまうからな」
「わかった」

 そうして、魔王を倒した蓮太はターニアとラフィエルを連れ浮遊大陸へと転移するのだった。

 そして魔王消滅から一ヶ月後、その報せを耳にしたロキやレーナ、エレン達が魔王城跡に集まっていた。

「こちらが勇者レンタ様の亡骸となります」
「そんな……! あぁぁ……レンタ!」
「嘘だろ……、だってあんな自信満々に……」
「うぅぅぅ……、レンタさんっ──!」

 魔王を倒した蓮太の亡骸は腐らないようにと特別に作られた棺に納められていた。

「魔王城の跡にこの折れた剣と共にもたれかかっておりました。発見した時にはもう息を引き取られて……」
「あぁぁぁぁ……っ、レンタ、レンタッ!」
「……やはり僕も行くべきだった! おそらくレンタは魔王を倒したは良いがそのまま力尽きたんだ……っ」
「それなら私もです……っ。私がいたら回復してあげられ……うっうっ……」

 その数日後、蓮太の遺体はノイシュタット王国へと運ばれ、ドワーフ達やエルフ達にも見守られつつ、盛大な葬儀とともに神の下へと送られた。

「惜しい奴を亡くしたな。だが……受けた恩は忘れねぇぜ棟梁! 俺達はこれからもノイシュタットのために働くからよぉっ! あの世で見守っててくれよ!」
「そんなぁっ、私のレンタ様がぁぁぁっ!」
「レンタ……、エルフィリアは私が守るからな……! 早く生まれ変わってまた会いに来いっ!」

 ノイシュタットでの葬儀が終わると蓮太の遺骨はドワーフ、エルフ、ノイシュタットと三つに分けられ、それぞれで墓を作る事となった。そしてこの三種族は蓮太を通し一つになる。

「レンタはもういない。だが私はレンタの遺志を引き継ぐつもりだ。ノイシュタットは亜人や獣人の味方となろう」
「ありがとうございます。ですが今はまだ返事を保留します。落ち着いたら返事は必ず」
「急がなくて良い。私もまだ立ち直れていないのだから……」

 こうして蓮太は全ての関わった人達を騙しきり、浮遊大陸へと逃亡したのだった。 
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