無双転生~チートスキルで自由気ままに異世界を生きる~

夜夢

文字の大きさ
上 下
38 / 85
第03章 バハロス帝国編

07 ドワーフは案外良い奴

しおりを挟む
 酒場に行った日の翌朝、起きるとドワーフ娘が二人同じベッドでスヤスヤと寝息をたてて寝ていた。

「俺……昨日何してたっけ」
 
 蓮太は昨夜の事をまるで覚えてもいなかった。そもそも酒が強かったのは前の身体の時であり、この身体で深酒をしたのは初めての事だった。

「……ちくしょう。途中から何にも思い出せん。スキル【酒耐性】は楽しく酒を飲むのに邪魔だと思って作らなかったんだよなぁ」

 蓮太は魔法で水を出し、それを飲みながら昨夜の事を猛省していた。すると二人がもそもそと起き、抱きついてきた。

「おはよ~お兄さんっ」
「あ、ああ。おはよ」
「おはよ~。昨日何戦したっけ~……。途中から全く思い出せないんだけど~」
「お、俺も途中で数えるのやめたからなぁ~……はは」

 嘘だ。最初から何も覚えていない。むしろどうやって店を出たかすら覚えていないのだ。

「ねぇねぇお兄さ~ん」
「なに?」
「今日は何時にお店行く?」
「え?」
「あぁ~! 覚えてないの!? 昨日始める前に明日も行くって言ってくれたじゃないの~!」
「あ、あぁ~、はいはい。思い出した思い出した! も、もちろん行くよ! そうだなぁ~……じゃあオープンからで」
「絶対だよ~? だからあんなにしてあげたんだからね?」
「わかってるよ」

 何一つ思い出せない事が本当に悔やまれる。しかし、それ以外にももう一度店に行かなければいけない理由はちゃんとある。蓮太が店に行った理由はドワーフのトップと交渉するためなのだ。昨日はこの両隣にいる小悪魔二人に上手いこと邪魔されてしまったが、今日こそ交渉をするのだと、蓮太は意気込んでいた。

 そして店がオープンし、一時間後。

「初めまして~。新人のウィズと~」
「同じく新人のケイで~す。ご一緒してもよろしいですか~?」
「おぉぉ……新人! 良いね良いねぇ~。それじゃあ新人さんには一番好きなお酒で歓迎一気してもらおっかな~」
「「店長~、シャンパンお願いしま~す」」

 今日も初手から蓮太の卓は大盛況だ。だが同じ轍は踏まない。この日のためにスキル【酒耐性(弱)】を装備してきた。これで女の子が四人に増えようが大丈夫なはずだ。

「……あれ? 今日オーナーは?」
「オーナーですか~? 今日は別のお店みたいですよ~」
「おぅ……」

 交渉する気満々で来たがいきなり出鼻を挫かれた。

「もしかしてツケの交渉とか~?」
「いや、金はある。ほら」

 そう言い、蓮太は卓に虹金貨を一枚置いて見せた。

「「「「虹金貨キターーー!!」」」」
「まぁいないんじゃ仕方ないな。ここには次いつ来るかわかる?」
「オーナー気まぐれだからね~。ちょっと店長に聞いてくるね~」

 ニャルが店長にオーナーの事を聞きにいってくれた。もし本当に気まぐれだとすると、昨日会えたのは偶然なのかもしれない。 

「店長もわからないそうです~。オーナーに会いたいなら他の系列店回ります?」
「……どんな店? ってか何件あんの?」
「ガールズバー二軒、スナック三軒、居酒屋五軒かなぁ? 他の町にもお店出してるから」
「そ、そうか! 他にも町があったの忘れてたわ!」

 辺境伯からは城下町の酒場にいるとしか聞いていなかったため、他の町の事などすっかり頭から抜け落ちていた。

「お兄さん、もしかしてオーナーに用があったの?」
「そうなんだよ。実はさぁ~」

 蓮太はグラスを傾けながら女の子達に事情を話した。

「──ってわけ」
「あぁ~……。鉱山ね。お兄さんノイシュタットの人だったんだ」
「まぁね」

 するとルビィが葡萄をつまみながらこう言ってきた。

「多分無理じゃないかなぁ~?」
「なんで?」
「うん。ほら、オーナー達ってさぁ、ヴェスチナ王国時代に散々こき使われてきたわけじゃない?」
「そう聞いてるな」
「だからもう仲間達のためにも二度と人間には従わないと思うよ」
「それは他のドワーフ達の総意?」
「うん。あ、私達は違うよ? お店にお金を落としてくれる人間さんは神様だもんっ」
「なるほどねぇ~……。あ、ボトル追加ね」
「「「「ありがとうございま~す」」」」

 蓮太はグラスを傾けながら考える。

(こりゃあ普通に交渉しても無駄……って言うか交渉にすらならねぇな。今の話だとドワーフの男連中はかなり人間を嫌っている。まったく、ろくな事しねぇな、ヴェスチナの奴らはよぉ……)

 それから酒も進み、だんだんと考えがまとまらなくなってきた。

「お・兄・さんっ」
「ん?」
「今日はもう閉店だって~」
「んぉ……、今何時?」
「わかんないけどぉ~……外はもう太陽昇ってるみたい」
「マジか……」

 店長がカーテンを開けると完全に朝だった。

「チェックで良いかな?」
「ん、いくら?」
「ありがとうございま~す」

 渡された伝票には黒金貨五枚とだけ書かれていた。

「……んじゃ虹金貨一枚で。残りは明日の分に回してくれる?」
「やぁん、明日も来てくれるの~? それじゃあ……今日は四人アフターしちゃう?」
「しちゃうしちゃう! 今すぐ行こうっ!」
「「やぁん、初アフター!」」 

 今日はまだしっかり覚えている。蓮太は四人引き連れ宿に入り、昼までハッスルし、夕方まで寝た。

「お兄さんっ、そろそろお店がはっじまるよ~」
「……三日目かぁ~。よっしゃ、行くか!」

 蓮太は四人引き連れ再び店に向かった。そして扉を開くとカウンターに見た事のある背中があった。

「兄ちゃん、俺を探してたんだって?」
「……いた」

 カウンターに座っていたのは初日に見たドワーフの棟梁だ。 

「話は店長から大体聞いている。ちょっと二階に行こうか」
「わかった」

 ドワーフの棟梁は顎で二階を指し、階段に向かって歩いて行った。蓮太は四人を一階に残し、棟梁に続き二階へと上がる。そして通された部屋で一対一の話し合いをする事になった。 

「で、又聞きじゃなくあんたの口から聞きたい。俺に何の用だ?」
「じゃあ単刀直入に。俺はノイシュタット王国の貴族だ。ここにはドワーフの採掘している鉱石と、それから作られる武器を卸してもらいにきた」
「無理だ。帰んな」
「そこを何とか!」

 するとドワーフの棟梁がテーブルに拳を落とし真っ二つに叩き割った。

「無理だって言ってんだろうがっ! 俺達ドワーフは人間の道具じゃねぇっ!」
「わかっている。ノイシュタットはヴェスチナと違い無茶な要求をする気はない。ちゃんと対価も支払う」
「そんなのは当たり前だ。最初はヴェスチナの奴らむ支払っていたさ。だがな、いつからか鉱山はヴェスチナの物だからそこから採れる鉱石は自分らの物だとか言いがかりをつけ、終いには武器を作らせてやると言ってきやがった! 確かに俺達ドワーフは鍛冶職人だ。だがなぁ……気に入らない奴に作ってやるつもりは微塵もねぇっ! わかったら二度とドワーフに関わるなっ!」

 ドワーフの棟梁はかなり苛立っていた。

「ヴェスチナの奴らだけじゃなく、人間全部が気に入らないのか?」 
「そうだな。人間の本性がとにかく気に入らねぇ。善人面して近づき、最後には俺達亜人を下に見やがる。なんでそんな奴らのために働かなきゃならねぇ。人間相手の商売なんぞ酒場だけで十分だ」
「そこは激しく同意だ。昨日、おとといとかなり楽しませてもらったし、美味しい思いもできたしな」

 すると、ドワーフの棟梁は呆れたようにこう言った。

「……けっ、まだ気付いてねぇのか。お前さん、散々ぼったくられてんだぜ? しかもつけた女はまだガキもいいところだ」 
「ぼったくりに関しては特に気にしてないな。後半はむしろ美味しい」
「……は? こ、この変わりモンがっ!」
「変わりモンか。まぁ変わってんだろうな。なんせ俺はエルフや獣人の王様やってっからな」
「……なに? エルフだと?」

 エルフと言った瞬間、ドワーフ棟梁の耳がピクリと反応した。

「お前さん、ノイシュタットの人間じゃないのか?」
「それとは別にエンドーサの国にある森で王様やって、んだよ」
「……エンドーサの森? ああ、あそこか。と、ところで話は変わるがな……」

 ドワーフ棟梁はどこか落ち着かない様子で話を切り出すのだった。
しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

ハズレ召喚として追放されたボクは、拡大縮小カメラアプリで異世界無双

さこゼロ
ファンタジー
突然、異世界に転生召喚された4人の少年少女たち。儀式を行った者たちに言われるがまま、手に持っていたスマホのアプリを起動させる。 ある者は聖騎士の剣と盾、 ある者は聖女のローブ、 それぞれのスマホからアイテムが出現する。 そんな中、ひとりの少年のスマホには、画面にカメラアプリが起動しただけ。 ハズレ者として追放されたこの少年は、これからどうなるのでしょうか… if分岐の続編として、 「帰還した勇者を護るため、今度は私が転移します!」を公開しています(^^)

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

転生無双の金属支配者《メタルマスター》

芍薬甘草湯
ファンタジー
 異世界【エウロパ】の少年アウルムは辺境の村の少年だったが、とある事件をきっかけに前世の記憶が蘇る。蘇った記憶とは現代日本の記憶。それと共に新しいスキル【金属支配】に目覚める。  成長したアウルムは冒険の旅へ。  そこで巻き起こる田舎者特有の非常識な勘違いと現代日本の記憶とスキルで多方面に無双するテンプレファンタジーです。 (ハーレム展開はありません、と以前は記載しましたがご指摘があり様々なご意見を伺ったところ当作品はハーレムに該当するようです。申し訳ありませんでした)  お時間ありましたら読んでやってください。  感想や誤字報告なんかも気軽に送っていただけるとありがたいです。 同作者の完結作品「転生の水神様〜使える魔法は水属性のみだが最強です〜」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/743079207/901553269 も良かったら読んでみてくださいませ。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...