無双転生~チートスキルで自由気ままに異世界を生きる~

夜夢

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第02章 エンドーサ王国編

09 煽り倒そう

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 獣人達をエルフィリアに預けた蓮太は普通にイシュガルの町に戻っていた。目的は戻ってくるだろう商人に扮した帝国兵達の正体を衆目に晒す事だ。

 そのためにもまず蓮太はイシュガルの町にいた警備兵達を味方につける事にした。 

「お、今日も町の雑用かい?」
「はい。皆さん困ってるみたいですし、こういった仕事は誰もやりたがらないので」
「まぁ……冒険者って言ったら魔物を狩るか貴族か商人の護衛ってイメージだもんなぁ。地味な仕事を嫌うって言うかさ、俺達とは真逆だよな」
「なに言ってるんですか。皆さんが町を守ってくれているからこそ、冒険者も好き勝手したい事ができるし、町の住人も安心して暮らせてるんじゃないですか」
「お前……まだ若いのによくわかってるなぁ~。そうさ、俺達の仕事は地味も地味だ。だが誰かがやらなきゃ困る者もいる仕事なんだよ。俺達は有名になりたくて兵士をしているんじゃない。皆の生活を守るために兵士をしているんだよ」
「もちろんわかってますよ。お互い頑張りましょうね」
「おうっ! そうだ、もし町の事で何か困った事になったらいつでも俺達に頼りなよ!」
「ありがとうございますっ! ではっ!」

 これまで依頼をこなしていない蓮太はFランクのままだった。これが幸いしたのか、雑用ばかりしていても特に疑われる事もなかった。雑用はほとんどの冒険者が嫌がり避けるクエストだ。実績のない駆け出し冒険者を装おっている蓮太はこうして町の住人や兵士達の信頼を得ていた。

「しっかし遅いな。あれから一週間だぞ? まさか戻って来ないんじゃないだろうな。奴らも金塊がただの石ころに変わってるなんて気付いているはずなのになぁ」

 その頃帝国兵達はイシュガルの町ではなく、一つ手前の村に集まっていた。

「すまん、俺達がやらかしたせいで……」
「いや、気にするなよ。やられたならやり返したら良い。今度は俺達がそいつに奴隷を売り付けてやるよ。で、しばらくイシュガルの町に留まるんだ。また石ころに変わったが最後、お前達と合流して徹底的にボゴる! どうよ?」
「そ、そいつは良いな! よっし、めちゃくちゃにしてやんぜっ!!」

 遅くなっていた理由はエンドーサ国内に散らばっていた帝国兵達が集合していたからだった。帝国兵達は二度と騙されないよう綿密に計画をたて、蓮太に一泡吹かせようと作戦会議を開いたのだった。

 そして最初の邂逅から十日後、帝国兵達は再びイシュガルの町にやってきた。

「さぁ~奴隷市の再開だよ~! 見た目は汚いが具合は極上! そこのお兄さんっ、一匹いかがですか~!」
「い、いらねぇよ!」
「あ、そっちのお姉さんはどうですか! このオスガキ去勢済みですよ!」
「い、いらない……わよっ」
「本当に? ちなみに……ですよ?」
「そ、そんなにっ!? うっ……うう……い、いらないわっ!」
「おや残念。さあさあ、どなたか購入される方はいらっしゃいませんか~! 今なら一匹白金貨一枚だよ!」

 ここでこの世界における貨幣の価値をまとめておく。蓮太は日本生まれなので、わかりやすく現代日本の価値と比較しておく。

・銅貨一枚 百円
・銀貨一枚 千円
・金貨一枚 一万円
・白金貨一枚 十万円
・黒金貨一枚 百万円
・虹金貨一枚 一千万円 

 これが円換算した場合におけるこの世界の貨幣価値である。

 獣人一人につき十万、町の市には百人近い獣人が檻に詰め込まれていた。蓮太はこの帝国兵達が町に近付いてきた瞬間からすでに気配を読み、遠くから視ていた。

「……あの女やべぇな。買いそうになってやがる。
しかしまぁ……まだ町の外に何人かいるな。これはおそらく罠だな。どうせ俺がまた石ころで買った所を押さえるつもりなんだろうな。バカな奴らだなぁ……」

 蓮太はニヤリと笑い、市へと向かった。すると帝国兵の一人が蓮太に気付き、客引きをしていた男に合図を送った。

「来ました、あのガキです」
「よし、やるぞ」

 蓮太が市に近付くと客引きをしていた男が蓮太に声を掛けてきた。

「おっ、そこの坊っちゃん! 獣人の奴隷はいかがかな?」
「なんですか急に。今クエストの最中なので」
「まぁまぁ! 奴隷がいればクエストもあっと言う間に達成ですよ! 今なら一匹白金貨一枚だ! 今買わなきゃ売れちゃうよ~」

 ここで蓮太は男に言ってやった。

「買わなきゃ売れる? ちょっと前から見てたけど全然売れてないじゃん。嘘つき」
「なんっ──、は、ははっ。いや、売れてないのではなく、売る客を選んで……」
「客を選ぶ? そんな立場? 全部断られてる癖に。どうせ売れないんだから持って帰ったら?」
「このクソガ……」

 男はこめかみに血管を浮かび上がらせ歯ぎしりをしていた。今にも切れそうだ。見た目少年の標的に良いように馬鹿にされているのだ、切れないわけがない。

「なに?」
「い、いえいえっ、な、なんでもございませんよぉ~? はっ、ははは」
「あっそ。あとさ~、この国って奴隷禁止って知ってるよね? あんたらもこの国の商人ならわかってるんじゃないの?」
「も、もちろんですよ」
「なのに売っちゃうんだ。兵士さん呼ぼうか?」
「ぐぎぎぎぎ……! わ、私達は闇商人なので!」

 言い訳が苦しくなってきた。

「闇商人? それこそ違法じゃん。やっぱり通報──」
「うるっせぇぇぇぇぇっ!」

 ついに男が切れた。すると集まっていた町の人達は驚きその場を離れていった。

「テメェが前回買ったのはわかってんだよっ! 獣人に情けをかける甘ちゃんだってのもバレてんだっ!」
「はぁ?」

 すると男は腰に下げていた剣を抜き檻に向けた。

「良いか、これ以上舐めた口たたきやがったら獣人を殺す」
「殺す? 商品を殺す商人とか頭おかしいんじゃないの?」
「アァッ!? 舐めた口きくなっつったよなぁぁぁぁっ! オラ──あ?」

 切れた男は檻の中に剣を突き刺そうとした。だが剣は檻に刺さる事なく、その手前で止まった。

「な、なんだこれっ! さ、刺さらねぇっ!?」
「早くやって見せてよ。あれ? まさか刺せないとか? あんだけ偉そうに啖呵きっといて? ダッサ」
「お……おんどりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ! もう許せねぇっ! ガキが大人を舐めんなぁぁぁっ! ならテメェを斬ったらぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「「「「お、おい止めっ──」」」」

 男は仲間の制止を聞かずに蓮太に斬りかかる。

「死ねやゴラァァァァァァッ!」
「そこまでだっ!」
「んなっ!?」

 突如二人の間に黒い影が飛び込んできた。影は蓮太を守るように男の剣を盾で受け止めた。

「白昼堂々町の中で人殺しかっ!! しかも相手はまだ少年だぞっ!」
「う、うるせぇぇぇぇっ! そこ退けやぁっ!!」
「ぐっ! む? その剣の紋章……。貴様っ、バハロス帝国兵かっ!」
「ちっ、退け──なっ!?」

 男が逃げようと後ろを振り向く。するとすでに仲間達は他の兵士により捕らえられていた。

「ちくしょうっ! 離せって! 剣を抜いたのはあいつだけだろっ!」
「アホか。同じ剣を持っているだろうが! お前らも帝国兵だろうが!」

 そこに蓮太がさらに畳み掛ける。

「あ、兵士さん。町の外にもまだ仲間がいるみたいですよ」
「ほう? 協力感謝するっ!」

 それから三十分後、帝国兵達は全員捕縛された。

「少年、大丈夫だったか?」
「はい、皆さんのおかげでなんとか」
「うむ、危なかったな。奴らの事は前から怪しいと思っていたのだ。まぁ……あまり誉められた行動ではないがようやく尻尾を掴めた。後は俺達に任せてくれ」
「はい、もちろん」

 未だ暴れ逃げようとしている帝国兵達を連行していこうとする兵士に蓮太が問い掛ける。

「あの……あそこにいる獣人達はどうなるんですか?」
「む? うむ、彼らはもう自由だ。この国で暮らすも良し、元いた場所に戻るも良し、好きにして構わぬ」
「あ、あ~……。なんかもう獣人の国はないらしいですよ」
「そうなのか? それは困ったな」

 そこで蓮太がこう提案した。

「あ、俺ノイシュタットから来たんですけど……ちょっと貴族の方と知り合いなので引き取ってもらいましょうか?」
「君はノイシュタットから来たのか! あそこは同盟国だったな。なら……悪いが彼らを任せても良いだろうか? ノイシュタットは我が国より丁重に扱っているようだからな」
「はい。そろそろ一度戻ろうと思っていたので」
「そうか。ではそちらは君に任せるよ。じゃあまた」
「はいっ、ありがとうございます」

 そうして帝国兵達は見事に自爆し、捕縛されていった。

「さてと……」

 兵士達がいなくなった後、蓮太は檻から獣人達を解放し、一ヶ所に集めるのだった。
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