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第02章 エンドーサ王国編
07 いざ、エンドーサ王国へ
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国の下地を作った蓮太は長とリージュを呼び、これから本来の行き先であるエンドーサ王国首都へと向かう事を伝えた。
「レンタ様抜きでも本当にこの地は大丈夫なのでしょうか?」
「ああ、大丈夫だと思うよ」
「端から見ると何の変哲もない頑丈な外壁にしか見えないのだが……」
そこは蓮太だ、抜かりはない。
「内側からはそう見えるだろ? でも──そうだな、一回外から見てみるか」
蓮太は二人を連れ外壁の外に出た。
「あ、あらっ!? 壁がありませんわっ!?」
「バ、バカな!? たった今私達が出てきたのに!?」
「ふっふっふ、これがエルフの国に仕掛けた隠蔽術なんだよ」
「「隠蔽術??」」
蓮太は二人に何をどうしたか説明する。
「まず国全体をスキル【イリュージョン】で森に偽装しているんだよ。で、外壁にはスキル【空間接続】を施してある。俺とエルフ以外が壁に一メートル以上近付くと対角線上に強制転移させられる仕組みになってるんだ。だから俺達以外は誰も入れない」
そう言い、蓮太は指をパチンと鳴らした。
「あ! 壁がちゃんと見えます!」
「そ。今まで二人には侵入者が見える景色を見せていたんだよ」
「これは……無敵じゃないか」
「そうだよ。このスキルは俺より強くないと破る事はできない。しかも俺と常時リンクしてるから異変もすぐに察知できるんだよ。何かあったらすぐに駆けつけられるようにね」
二人は目を点にして驚いていた。
「この国はまさに楽園ですね。さすがレンタ様です!」
「これには正直驚いた。これならレンタがいない間も問題はなさそうだ」
「当たり前だろ。半端に助けるくらいなら最初から助けないよ。俺が助けるといったら必ず助ける。まぁ、気分次第なところもあるけど」
「ふふっ、レンタ様は女性だけを助けるのですよね?」
「……さ、さて! そろそろ行こうかな! 二人とも! しばらく俺抜きで頑張ってみてな! 【転移】!」
「「あ、逃げた」」
蓮太は誤魔化すように街道から森に入る直前の位置へと転移していった。
「あの調子ですとエンドーサでも何かやらかしそうですねぇ」
「やらかすでしょう。しかも今のエンドーサは少しおかしいですからね。レンタなら心配はいらないと思いますが……」
「大丈夫でしょう。さ、私達はゆっくりと壁の中でレンタ様の帰りを待つとしましょうか」
「はっ」
こうしてエルフ達の安全を確保したレンタは本来の目的地であるエンドーサ王国の首都を目指し街道を歩き始めた。
「エンドーサか、どんな国だろうな。たしかバハロス帝国って国の奴らが国内でなにやら企ててるんだっけ。……ふむ、ここはいきなり首都に行かずに町とか村を見て回ろうかな」
実態を知らなければ動くに動けない。そう考えた蓮太はまずエンドーサにある町を見る事にした。
しばらく歩くと街道が二股に分かれ、看板に左が首都【エンドーサ】と書かれ、右が【イシュガルの町】と書かれていた。
「んじゃまずは右だな。こっちの方がより帝国に近い位置にあるようだし……調べるにはちょうど良いだろう」
そしてまたしばらく街道を歩く。途中馬車と何回かすれ違い、蓮太の機嫌はすこぶる悪くなっていた。
「……クソだな。エンドーサってのはノイシュタットと同じで亜人や獣人に寛容じゃなかったのか? 馬車の中で亜人や獣人が奴隷扱いされてんじゃねぇか。ったく……イラつくぜ……」
今騒ぎを起こすのは不味いと考え、蓮太は心を殺し、黙って馬車を見送った。そしてその不快感は町に着いてさらに増した。
「さぁ~いらっしゃいいらっしゃい! バハロス帝国から輸入された奴隷市だっ! どれも役立つ事間違いなしっ! 役に立たなかったらストレス発散に使ってくれて構いませんっ! 蹴ろうが殴ろうがこの奴隷の首輪がある限り主には逆らえないようになっています!」
そこら中で奴隷市が開かれていた。どの奴隷も活気がなく、痛めつけられているのか全身痣だらけだ。さらに言えば身体を洗えていないのか、ひどく臭う。
「さあ、そこのあなた! 奴隷はいかがですか? お安くしておきますよ?」
「バカな事を言うなよっ、エンドーサでは奴隷は禁止なんだ! 知らないのか」
「知っていますよ? しかし、私達の仕入先はバハロス帝国です。しかも……これはあまり大きな声じゃ言えませんが、こいつらはバハロス帝国に戦で負けた獣人の国の民です。元々人権などないに等しいのですよ。どうです? この牛の獣人なんかは夜でも活躍してくれますよ?」
「い、いらんいらんっ! 他をあたるんだな!」
「……ちっ」
他にも奴隷商人が町の住人に声を掛けてはいるが、誰も買いはしていないようだ。その点はエンドーサの民に好感が持てる。
「お前らが汚いから売れねぇんだよっ! その獣臭さを何とかしろっ!」
「あぐっ! うぅっ!」
獣人が八つ当たり気味に殴り付けられている。思わず逆上し、奴隷商人を消し飛ばしてしまおうかと思ったが何とか踏みとどまった。おそらくこれは罠だ。怒りに任せ手を出したが最後、奴らは国をあげてエンドーサに乗り込んでくるつもりなのだろう。
そもそもあの奴隷商人、商人と言うには身体が鍛えこまれ過ぎている。よく見ると手のひらに剣ダコが見える。あれは商人に偽装したバハロス帝国兵なのだろう。
だがこのままでは怒りが収まらない。そこで蓮太は奴らに一泡吹かせてやる事にした。
「ちょっと良いかな?」
「はいっ、いらっしゃいませっ! 購入ですか!?」
「まぁ……うん。俺はヴィスチナ王国の冒険者なんだけどさ、ちょうど今冒険に使える荷物持ちを探してたんだよ」
「おお、それならあの熊の獣人とかはいかがかな? 力はありますぞ?」
どうやらヴィスチナ王国がもうない事も知らないらしい。蓮太はこの奴隷商人をかなり下っ端と見た。
「いや、俺一人で使うんじゃなくてさ、クランで使いたいんだよ。一人二人じゃ全然足りなくて。本当ならバハロス帝国まで買い付けに行く予定だったんだけどさ、ここで買えるなんて思ってもみなかったんだよ」
「し、少々お待ち下さい!」
すると奴隷商人達が集まり何やら話し合いを始めた。
「あの、何人必要なのですか?」
「あればあるだけ全部」
「全部!? いや、待って下さいよお客さん。失礼だが金は持ってるんでしょうな?」
そこで蓮太はマジックバッグの中でアイテムボックスを開き、純金のインゴットを次々と取り出し、奴隷商人の手に並べていった。
「お、おおおお重っ!?」
「ヴィスチナってさ、鉱山ばっかりでやたらこういうの採掘できるんだよねぇ。あ、まだいる?」
「ほげぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
奴隷商人は重さに耐えきれず潰れてしまった。それを慌てて他の奴隷商人達が支えにきた。
「も、もう十分です! 今いる奴隷は全て売りますから!」
「あ、もう良いの? んじゃお開きって事で。奴隷達はもらっていくよ」
「は、はい」
そして蓮太は売られていた全ての奴隷を引き連れ一度町を出た。
「【ディスペルオール】」
「「「「っ!? く、首輪が外れた!?」」」」
町を少し離れた場所で蓮太は奴隷達の首輪を全て解除してやった。
「はい、後は自由だから。もう逃げていいよ」
「へ? 逃げ? あの……良いんですか? あなたは私達にあんな大金を支払ってたじゃないですか」
「ああ、あれは明日になればただの石に変わるから」
「は、はい!? 石!?」
「そ。あいつらあんまりムカついたからちょっと痛い目に遭わせたくてさ。あいつらは奴隷も全部失い、さらに得た金塊はただの石ころっていうダブルパンチを喰らったのさ。ざまぁ~って感じだよな、はははは」
獣人達は全員わけがわからないといった様子で固まっていた。
「って事でスッキリしたし、もう行って良いよ。じゃあな」
「あ──ま、待って下さいっ!」
「ん?」
スッキリし、町を離れようとした蓮太は一人の獣人に呼び止められるのだった。
「レンタ様抜きでも本当にこの地は大丈夫なのでしょうか?」
「ああ、大丈夫だと思うよ」
「端から見ると何の変哲もない頑丈な外壁にしか見えないのだが……」
そこは蓮太だ、抜かりはない。
「内側からはそう見えるだろ? でも──そうだな、一回外から見てみるか」
蓮太は二人を連れ外壁の外に出た。
「あ、あらっ!? 壁がありませんわっ!?」
「バ、バカな!? たった今私達が出てきたのに!?」
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「「隠蔽術??」」
蓮太は二人に何をどうしたか説明する。
「まず国全体をスキル【イリュージョン】で森に偽装しているんだよ。で、外壁にはスキル【空間接続】を施してある。俺とエルフ以外が壁に一メートル以上近付くと対角線上に強制転移させられる仕組みになってるんだ。だから俺達以外は誰も入れない」
そう言い、蓮太は指をパチンと鳴らした。
「あ! 壁がちゃんと見えます!」
「そ。今まで二人には侵入者が見える景色を見せていたんだよ」
「これは……無敵じゃないか」
「そうだよ。このスキルは俺より強くないと破る事はできない。しかも俺と常時リンクしてるから異変もすぐに察知できるんだよ。何かあったらすぐに駆けつけられるようにね」
二人は目を点にして驚いていた。
「この国はまさに楽園ですね。さすがレンタ様です!」
「これには正直驚いた。これならレンタがいない間も問題はなさそうだ」
「当たり前だろ。半端に助けるくらいなら最初から助けないよ。俺が助けるといったら必ず助ける。まぁ、気分次第なところもあるけど」
「ふふっ、レンタ様は女性だけを助けるのですよね?」
「……さ、さて! そろそろ行こうかな! 二人とも! しばらく俺抜きで頑張ってみてな! 【転移】!」
「「あ、逃げた」」
蓮太は誤魔化すように街道から森に入る直前の位置へと転移していった。
「あの調子ですとエンドーサでも何かやらかしそうですねぇ」
「やらかすでしょう。しかも今のエンドーサは少しおかしいですからね。レンタなら心配はいらないと思いますが……」
「大丈夫でしょう。さ、私達はゆっくりと壁の中でレンタ様の帰りを待つとしましょうか」
「はっ」
こうしてエルフ達の安全を確保したレンタは本来の目的地であるエンドーサ王国の首都を目指し街道を歩き始めた。
「エンドーサか、どんな国だろうな。たしかバハロス帝国って国の奴らが国内でなにやら企ててるんだっけ。……ふむ、ここはいきなり首都に行かずに町とか村を見て回ろうかな」
実態を知らなければ動くに動けない。そう考えた蓮太はまずエンドーサにある町を見る事にした。
しばらく歩くと街道が二股に分かれ、看板に左が首都【エンドーサ】と書かれ、右が【イシュガルの町】と書かれていた。
「んじゃまずは右だな。こっちの方がより帝国に近い位置にあるようだし……調べるにはちょうど良いだろう」
そしてまたしばらく街道を歩く。途中馬車と何回かすれ違い、蓮太の機嫌はすこぶる悪くなっていた。
「……クソだな。エンドーサってのはノイシュタットと同じで亜人や獣人に寛容じゃなかったのか? 馬車の中で亜人や獣人が奴隷扱いされてんじゃねぇか。ったく……イラつくぜ……」
今騒ぎを起こすのは不味いと考え、蓮太は心を殺し、黙って馬車を見送った。そしてその不快感は町に着いてさらに増した。
「さぁ~いらっしゃいいらっしゃい! バハロス帝国から輸入された奴隷市だっ! どれも役立つ事間違いなしっ! 役に立たなかったらストレス発散に使ってくれて構いませんっ! 蹴ろうが殴ろうがこの奴隷の首輪がある限り主には逆らえないようになっています!」
そこら中で奴隷市が開かれていた。どの奴隷も活気がなく、痛めつけられているのか全身痣だらけだ。さらに言えば身体を洗えていないのか、ひどく臭う。
「さあ、そこのあなた! 奴隷はいかがですか? お安くしておきますよ?」
「バカな事を言うなよっ、エンドーサでは奴隷は禁止なんだ! 知らないのか」
「知っていますよ? しかし、私達の仕入先はバハロス帝国です。しかも……これはあまり大きな声じゃ言えませんが、こいつらはバハロス帝国に戦で負けた獣人の国の民です。元々人権などないに等しいのですよ。どうです? この牛の獣人なんかは夜でも活躍してくれますよ?」
「い、いらんいらんっ! 他をあたるんだな!」
「……ちっ」
他にも奴隷商人が町の住人に声を掛けてはいるが、誰も買いはしていないようだ。その点はエンドーサの民に好感が持てる。
「お前らが汚いから売れねぇんだよっ! その獣臭さを何とかしろっ!」
「あぐっ! うぅっ!」
獣人が八つ当たり気味に殴り付けられている。思わず逆上し、奴隷商人を消し飛ばしてしまおうかと思ったが何とか踏みとどまった。おそらくこれは罠だ。怒りに任せ手を出したが最後、奴らは国をあげてエンドーサに乗り込んでくるつもりなのだろう。
そもそもあの奴隷商人、商人と言うには身体が鍛えこまれ過ぎている。よく見ると手のひらに剣ダコが見える。あれは商人に偽装したバハロス帝国兵なのだろう。
だがこのままでは怒りが収まらない。そこで蓮太は奴らに一泡吹かせてやる事にした。
「ちょっと良いかな?」
「はいっ、いらっしゃいませっ! 購入ですか!?」
「まぁ……うん。俺はヴィスチナ王国の冒険者なんだけどさ、ちょうど今冒険に使える荷物持ちを探してたんだよ」
「おお、それならあの熊の獣人とかはいかがかな? 力はありますぞ?」
どうやらヴィスチナ王国がもうない事も知らないらしい。蓮太はこの奴隷商人をかなり下っ端と見た。
「いや、俺一人で使うんじゃなくてさ、クランで使いたいんだよ。一人二人じゃ全然足りなくて。本当ならバハロス帝国まで買い付けに行く予定だったんだけどさ、ここで買えるなんて思ってもみなかったんだよ」
「し、少々お待ち下さい!」
すると奴隷商人達が集まり何やら話し合いを始めた。
「あの、何人必要なのですか?」
「あればあるだけ全部」
「全部!? いや、待って下さいよお客さん。失礼だが金は持ってるんでしょうな?」
そこで蓮太はマジックバッグの中でアイテムボックスを開き、純金のインゴットを次々と取り出し、奴隷商人の手に並べていった。
「お、おおおお重っ!?」
「ヴィスチナってさ、鉱山ばっかりでやたらこういうの採掘できるんだよねぇ。あ、まだいる?」
「ほげぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
奴隷商人は重さに耐えきれず潰れてしまった。それを慌てて他の奴隷商人達が支えにきた。
「も、もう十分です! 今いる奴隷は全て売りますから!」
「あ、もう良いの? んじゃお開きって事で。奴隷達はもらっていくよ」
「は、はい」
そして蓮太は売られていた全ての奴隷を引き連れ一度町を出た。
「【ディスペルオール】」
「「「「っ!? く、首輪が外れた!?」」」」
町を少し離れた場所で蓮太は奴隷達の首輪を全て解除してやった。
「はい、後は自由だから。もう逃げていいよ」
「へ? 逃げ? あの……良いんですか? あなたは私達にあんな大金を支払ってたじゃないですか」
「ああ、あれは明日になればただの石に変わるから」
「は、はい!? 石!?」
「そ。あいつらあんまりムカついたからちょっと痛い目に遭わせたくてさ。あいつらは奴隷も全部失い、さらに得た金塊はただの石ころっていうダブルパンチを喰らったのさ。ざまぁ~って感じだよな、はははは」
獣人達は全員わけがわからないといった様子で固まっていた。
「って事でスッキリしたし、もう行って良いよ。じゃあな」
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