無双転生~チートスキルで自由気ままに異世界を生きる~

夜夢

文字の大きさ
上 下
15 / 85
第02章 エンドーサ王国編

02 こんな生活も悪くない?

しおりを挟む
 リージュの所有物になってから一週間が過ぎた。

「そっちに逃げたぞレンタ!」
「ほいほい。【ロックブラスト】」
《ブォォォォォォォン!?》

 巨大猪の頭蓋を魔法の石礫が貫く。蓮太に向かい突進してきた巨大猪は大きな音をたて地面に伏した。

「楽勝っ」
「うむ。良くやってくれたなレンタ。さあ里に戻るぞ。いつものように頼む」
「了解っと」

 リージュが弓で進路を変え、蓮太が魔法でとどめをさす。二人は実に良いコンビになっていた。この連日の狩りで里の食糧事情は豊になっていた。

 蓮太はいつものようにアイテムボックスから巨大猪の死体を取り出し、魔法で血抜きをしてから台座の上に置いた。

「リージュ、今日も巨大猪を狩れたなんて凄いじゃない!」
「おかげで最近ちょっと太っちゃったわぁ~」
「私達は少し痩せすぎていたからな。今くらいがちょうど良いだろう」

 リージュは巨大猪を解体し、長に捧げる分を取り分けた。

「レンタよ、これを長に」
「ははっ」

 蓮太は取り分けられた肉塊を受け取り長の家に向かう。

「失礼しま~す、本日の貢ぎ物です」
「ご苦労様。ふふっ、すっかり里に馴染んでいますね」

 いつも長の隣に控えているエルフが蓮太から肉を受け取り貯蔵庫に運ぶ。

「馴染んでるんですかね、自分ではよくわからないっす」
「馴染んでいると思いますよ。里のエルフ達からも最近食事に困らなくなったと話しになっています」
「俺はただリージュに使われているだけなんで」
「ふふっ。所で……リージュとは仲良くしていますか?」
「いきなりですね。まぁ……ぼちぼち仲良くはしていますね」
「あら、ぼちぼちですか。里の者からは毎日のようにと聞こえてきていますが?」
「全部知ってるんじゃないっすか」

 所有物になってからも毎日母乳を飲み、反応したら処理されている。むしろ最近はリージュの方から進んで母乳を飲まないかと誘ってくる。

「レンタ、見ての通りこの里には男がいません。昔はもっと仲間もいましたが、魔物の襲撃や食糧難で数は減る一方でした。増やそうと思っても人間は私達エルフを敵対視していますし、増やせなかったのです。私が何を言いたいかわかりますか?」
「さっぱりですね。俺は今リージュの所有物なので。リージュが言うなら従いますよ」
「そう……わかりました。今夜リージュと共にもう一度顔を出してください。良いですね?」
「伝えておきます」

 そして夜、俺はリージュと共に再び長の家を訪ねた。

「長、リージュ参りました」
「ご苦労様。リージュ、こちらへ」
「はっ」

 長はリージュを近くに呼び、なにやら耳打ちを始めた。リージュが時折蓮太に視線を送る。

「本気ですか長」
「ええ。あなたから彼に伝えてくれるかしら」
「わかりました」

 話しを終えたリージュが蓮太にこう告げた。

「レンタ、今夜は長の御相手になるのだ」
「は、はぁっ!?」

 長を見るとニコニコと笑ってはいたが、頬は赤く染まっていた。

「御相手って……御相手?」
「そうだ。いつも私相手にしている事を長にするのだ」
「え? リージュは何とも思わないのか?」
「何故だ? 長がそう言っているのだから従うのは当然だろう?」
「は、はぁ……」

 エルフにはエルフのルールが存在するらしい。

「レンタ、私の相手は不満ですか?」
「え?」
「まさか! レンタは毎晩のように私に処理させるほどの不埒者です。長相手に不満などあるはずもないでしょう! そうだな、レンタ!」
「ま、まぁ……。不満は……ないかな」
「長よ、レンタもこう言っておりますが故!」
「ありがとう、リージュ。では寝所へ参りましょうかレンタ」
「マジかぁ……」

 そして翌朝。

「うっ……太陽が眩しい……」
「ふふっ、おはよう……レンタ」

 朝日が差し込み目を覚ました。蓮太の腕を枕にし、長がぴったりと抱きついていた。

「本当にエルフを相手にできるのですね。やはりレンタは変わった人間です」
「そうですかねぇ。でも何でそんなに敵対してるんですか? エルフは見た目も人間に近いし……」
「美しい……でしょう?」
「否定できませんね」

 長は蓮太に甘えるように頬を擦り付ける。

「私達エルフが人間を憎むのは……人間が私達を拐い、商売道具にしていたからです」
「……なるほど。奴隷か!」
「……はい」

 長は伝え聞いた話を口にし始めた。

「はるか昔は私達エルフも町で人間と共に暮らしておりました。ですが人間は私達エルフを捕縛し、貴族や好色家に向け、奴隷として売り飛ばし始めたのです。私達エルフは抗議をしましたが、人間は知らぬ存ぜぬ。私達は人間から逃げるように分散し、世界中にある森へと隠れる事言ったしました。その時はまだ男のエルフもおりましたが、森での暮らしは厳しいもので、日々その数を減らしていきました」

 長の表情は見えないが、悲しみに震えている事はわかった。

「そしてある日、人間はエルフ狩りを始めたのです」 
「エルフ狩り……」
「はい。私達は魔物と同等の価値しかなく、ただの道具でしかなかったのだと言われたそうです。これに当日の長は怒り、人間と戦を始めました。ですが数で圧倒され、全ての男エルフは惨殺、女エルフは捕縛され、玩具にされ死に絶えました。私達はその戦から逃げることができた生き残りなのです。中には戦を知らないエルフもいますが、当時を知る私がいかに人間は残酷な生き物であるかを日々解いてきました」
「そうか……」
「中には良い人間がいる事も存じています。ですが、基本人間は欲望の塊、私達を性欲の対象としか見ず、心から愛してくれる者などいない。昨日まではそう思っていました」
「昨日まで?」

 そう言うと長は蓮太の上に移動した。

「昨夜、確かに私は愛を感じました。リージュも以前より笑みが増えたように思います。貴方は……他の人間とは違う。ちゃんとエルフを対等に扱っている。性欲の捌け口としてではなく、心から愛せる人間だと知りました」
「ちょっ、まだするんですか!?」
「しますともっ。だって数百年ぶりですもの」
「数百年……?」
「あら、年齢を聞いても変わらないのですね。嬉しいですわ……」
「そりゃあ……ねぇ……」
「さあ、先ずは私と子を成しましょう。その後はリージュ、その後に希望者を募るとしましょう。レンタ、私達エルフを救って下さいね」

 この後散々吸い付くされ、夜になりようやく解放されたのだった。
しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

ree
ファンタジー
古代宗教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教…人々の信仰により生まれる神々達に見守られる世界《地球》。そんな《地球》で信仰心を欠片も持っていなかなった主人公ー桜田凛。  沢山の深い傷を負い、表情と感情が乏しくならながらも懸命に生きていたが、ある日体調を壊し呆気なく亡くなってしまった。そんな彼女に神は新たな生を与え、異世界《エルムダルム》に転生した。  異世界《エルムダルム》は地球と違い、神の存在が当たり前の世界だった。一抹の不安を抱えながらもリーンとして生きていく中でその世界の個性豊かな人々との出会いや大きな事件を解決していく中で失いかけていた心を取り戻していくまでのお話。  新たな人生は、人生ではなく神生!?  チートな能力で愛が満ち溢れた生活!  新たな神生は素敵な物語の始まり。 小説家になろう。にも掲載しております。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...