無双転生~チートスキルで自由気ままに異世界を生きる~

夜夢

文字の大きさ
上 下
3 / 85
第01章 転生編

03 転生

しおりを挟む
 この地に産まれ落ちてから一ヶ月。

「ほぎゃあっ、ほぎゃあっ」
「はいは~い、今ご飯あげるから良い子で待っててね~」

 蓮太はごく普通の一般家庭ではなく、いわゆるスラムと呼ばれる場所で新たな人生をスタートしていた。

「はい、今日は私のおっぱいよ~」
「んきゅっんきゅっ」

 母親は今仕事をしている。何とは言わないが父親が誰かもわからなくなるような仕事だとだけ言っておく。現に今ミルクを飲ませてくれている女性も仕事でミルクが出るようになっていた。

「ふふっ、可愛いなぁ~。私の赤ちゃんも早く産まれてきてくれないかな~。んっ……こ~ら、舐めるんじゃなくて吸うの!」
「はむはむ……」
「あ、こらぁっ!」

 今蓮太を抱えているのは生前の蓮太よりかなり年下の女性だ。ブラック企業に勤めていたせいか、そういった事とはずいぶんご無沙汰だった蓮太は今の生活を満喫していた。

「も~……。今からそんなんでどうするの? 成長したらとんでもない男の子になりそうだわ。あっ」
「ちゅるちゅる……」

 スラムの住人は助け合い、寄り添いながら生きていた。ほとんどの家庭で父親がおらず、支え合って生きるしか道はないのである。

「はい、もうおしまいっ! 他にもミルク飲ませなきゃいけない赤ちゃんいるんだからね~」
「……けふっ」

 辺りを見回すと赤ん坊が数人いた。蓮太と同時期に産まれた子ども達だ。

「やっぱりおかしいのはレンタだけね~。他の子達は普通に飲んでくれるし」
《……そいつら女だからじゃね?》

 そんな生活を楽しみつつ、蓮太は神からもらったスキルを理解しようと、一人になると日夜スキルと向き合う。

《まぁ必要ないんだけどね。俺がもらったスキルは【万物創造】。それこそスキルでもなんでも創り出せるチートスキルだ。まったく、誰のおかげでこれ以上赤ん坊が増えないと思ってるんだか》

 あまり増え過ぎてもスラムでは生活していく事ができない。そればかりか冒険者ギルドに登録できるようになる十二歳になると家を追い出されてしまう。これも計画せずにポンポン子どもを作っているせいだ。

《さて、今日はどんなスキルを創ろうかな~》

 だが万物創造も万能ではなかった。理由は一日に創り出せるスキルは一つだけ。だがこれでもこの世界においては比類する者がいないくらい万能であると言っておく。

《初日に【不死】を創り、翌日に【絶対防御】、それから【成長促進】に【探知】、【状態異常無効】に【武神】、【魔導王】、【鍛治神】に【アルケミスト】だ。ひとまずこれだけあれば生きる事に困らないだろう》

 それから十年後。蓮太は十歳となり、まだスラムで暮らしている。成長促進の効果もあってか、蓮太は周りの子ども達より大きく成長を遂げていた。

 身体は筋トレで引き締め、伸ばしっぱなしだった黒髪も十歳の誕生日にバッサリと切った。加えてなぜか地球にいた頃の顔と同じくなかなかの美形だ。

「うんうん、なんでか知らないけど俺の顔だな。さて……あと二年でスラムを出なきゃならないか。ちょっと恩返しでもしておきますか」

 蓮太は世話になったスラムの住人達のために【物質創造】というスキルを駆使し、建物や家財を新しい創り出し皆に与えていった。

「レンタ……、あんた凄いスキル持ってるのね~」
「全然凄くなんかないよ、母さん。俺のスキルは【大工】だからさ。ちょっと古い物を新しく見せてるだけだよ」
「そう? まるで別物に見えるけど」
「ははは、それは気のせいだよ」

 蓮太はスキルを偽った。もちろん母親の事を信用していないわけではない。だが周りまで信用できるかと言ったらそうでもない。過ぎた力というものは必ず話になる。それも悪い方にだ。仮に権力者が蓮太の本当の力を知ればどんな手を使ってでも自分のモノにしにきただろう。

「あと二年ね。レンタ、あんたこれからどうするか決めてる?」
「うん、もちろん。俺、十二歳になったらここを出て冒険者になるんだ」
「冒険者に? あはははっ、スキルが大工なのに冒険者って! あははははっ」

 本当の力を知らない母親は笑い転げていた。実際このスラムに来る客の九割が冒険者だ。残り一割は奴隷商人と、本当にロクでもない。

「レンタは顔が良いんだからさ、男娼でもしたら?」
「嫌だよ。別に母さん達の仕事をバカにするわけじゃないけどさ、俺には向いてないよ」
「やってみなきゃわからないじゃない。そんなにスラムが嫌なの?」
「嫌って言うか、そういうルールでしょ? 男は十二歳になったらスラムを出て自活する。それがここのルールじゃないか」
「そうなんだけどねぇ……。スキルが大工じゃねぇ~。安い日雇いの仕事しかないかもよ?」
「だから冒険者になるって言ってるじゃん。スキルは大工でもそれなりに強いし大丈夫だよ」
「……そ。まぁ……まだ先の話だけど無茶はしないでね」
「わかってるって。のんびりとその日暮らせる分稼げれば十分だし」

 蓮太は真面目に働く気などサラサラなかった。前世で散々苦労してきた蓮太の抱負は【働いたら負け】だった。十二歳になったら人里離れたどこか綺麗な景色の場所でのんびり自給自足しながら暮らすつもりだった。

 それから二年で蓮太は思い付き限りのスキルを創り、いよいよスラムを出る日となった。

「じゃあ母さん、たまには顔を見にくるから」
「ええ、待ってるわ。すぐに帰ってくるなんて事ないようにね」
「大丈夫だよ。母さんも身体に気をつけて」
「はいはい。じゃあ……行ってきなさいレンタ」
「行ってきますっ!」

 こうして準備を整えた蓮太はスラムを後にし、その足で真っ直ぐ冒険者が仕事を求めて集まる場所、冒険者ギルドへと向かうのだった。
しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

ree
ファンタジー
古代宗教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教…人々の信仰により生まれる神々達に見守られる世界《地球》。そんな《地球》で信仰心を欠片も持っていなかなった主人公ー桜田凛。  沢山の深い傷を負い、表情と感情が乏しくならながらも懸命に生きていたが、ある日体調を壊し呆気なく亡くなってしまった。そんな彼女に神は新たな生を与え、異世界《エルムダルム》に転生した。  異世界《エルムダルム》は地球と違い、神の存在が当たり前の世界だった。一抹の不安を抱えながらもリーンとして生きていく中でその世界の個性豊かな人々との出会いや大きな事件を解決していく中で失いかけていた心を取り戻していくまでのお話。  新たな人生は、人生ではなく神生!?  チートな能力で愛が満ち溢れた生活!  新たな神生は素敵な物語の始まり。 小説家になろう。にも掲載しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。 何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。 生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える そして気がつけば、広大な牧場を経営していた ※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。 7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。 5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます! 8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

処理中です...