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第01章 転生編
02 輪廻転生
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死者は死んだ星で生まれ変わるものである。これは死んだ者の魂は輪廻の輪に組み込まれるからといわれているが、正直な所は誰にもわからない。
さて、謎の生き物により命を奪われた蓮太だが、いったいどこで死んだのだろうか。もちろん地球には頭が三つもある巨大な犬など存在しない。つまり、蓮太はどういったわけか地球の輪廻から外れ、地球には存在しない巨大な犬がいる異なる世界の輪廻の輪に組み込まれる事になった。
その大元が今魂だけとなった蓮太の目の前にいた。
《誠に申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁぁっ!》
「……え?」
蓮太にしてみれば久しぶりの会話だ。だがその会話の始まりは白い衣に身を包んだ若い男が魅せる見事なまでの土下座から繰り出された豪快な謝罪だった。
「……なんの事?」
《え?》
「え?」
今一つ会話が噛み合わない。
《えっと……もしかして……ご自身に何が起きたかわかっていらっしゃらない……ので?》
「何がって言うか……頭が三つあるバカでかい犬に食い殺されたくらいしか」
《なるほどなるほど。……変だとは思いませんでしたか?》
「まぁ……普通はあんな犬いるわけないし、多少変だなとは思ってるかな」
《は、はは……ですよねぇ~。じ、実はですね……》
若い男はスッと立ち上がり現状の説明を始めた。
《──というわけでして》
「え、神? は!? 俺異世界で死んだの!? ってかいつの間に!?」
《蓮太様が崖から落下した際にですね、丁度中腹くらいに次元の裂け目ができていまして。あ、私がサボって修復しなかったとかそんな事は決してありませんので!》
これはやったなと蓮太は思った。だが生きていた所で家族もいなければ恋人もいない。地球にあるのは悪辣な労働環境のみだ。
「話は大体わかったよ。それで、俺はこれからどうなるの? 天国に行けちゃったりする?」
《え? あんな所に行きたいんですか? 行きたいならそう取り計らいますが》
「ちょっと待った! 天国について説明を」
《えっとですね……》
聞いた所、天国とはとんでもなく退屈な場所らしい。何か娯楽があるわけでもなく、ただただ真っ白い部屋で眠るか、疑似太陽の下で日向ぼっこをするような場所らしい。
「却下! そんな場所には死んでも行きたくないっ!」
《あははは~、もう死んでるんですけどね?》
「あんたのせいだろ!?」
《さーせん》
馴れてきたのか最初の土下座はどこへやら、男の態度がどんどんチャラくなってきた。
《ってか、ぶっちゃけ俺が女神の裂け目にインスコしてっ時にさぁ~、逆に何してくれてんのってぐふぅっ……!》
気付いた時にはソウルアタック(ただの体当たり)を男の顔にぶちかましていた。
「お前のせいで死んだんだろ? な? あ?」
《ひ、ひぃぃぃっ!? あ、ヤンキーの方ですか?》
「言わせんなよ。俺の背な……ってもうねぇか」
《す、すんませんっした!!》
再び綺麗な土下座が披露された。
蓮太は幼い頃に事故で家族を全て失い、それからは嫌がる親戚の家を中学卒業までたらい回しにされていた。そんな環境でグレないわけがない。
「で? ぶっちゃけ俺ってどうなんの?」
《あ、はい。先ほども説明したようにですね、蓮太サンがお亡くなりになったのは俺の管理する世界でして》
「ああ、うん」
《死んだ者はすべからく輪廻の輪に組み込まれるんっす》
「前置きがなげぇよ」
《す、すんませんっ! で、ですから……、蓮太サンはもう地球の輪廻から外れて俺の世界の輪廻に組み込まれたんっす。なのでもう地球に生き返らせる事ができないんっすよ》
「ふ~ん。じゃあ俺は死んだままか?」
《い、いえ!》
再び男がスッと立ち上がる。
《よ~く考えたら悪いのは俺なので……、蓮太サンにはちょっぴりサービスを加えて俺の世界に転生してもらおうかと思ってます》
「あんたの世界って……。そりゃあれだろ? またあの犬に食い殺されるかもしれないんだろ? 断じて断るぞ」
《だからちょっぴりサービスするんっすよ》
「ちょっぴり?」
《た、多少……》
「殺しておいて?」
《か、簡単に死なないくらいには……》
「上司にバラしちゃおっかな~。すいま──」
《やめてぇぇぇぇぇっ!? 顔の形変わっちゃうっ! わ、わかりましたよ! 知識次第で誰にも負けないようになるスキルを与えますっ!》
「最初からそうしておけよな、人と人の間には情がなきゃなぁ~」
《は、はは……》
情の欠片もない蓮太だった。男は何も嫌だから渋っていたわけではない。神と呼ばれる者が魂に力を与えるためには今まで積んできた徳を使うのである。これまでの男の態度からわかるように、とても徳が高いとは言えない。つまりスキル一つ与えると男は最下級神になってしまうのである。だがそれでも上司である最高神の裁きは怖い。決して蓮太の脅しに屈したわけではないと付け加えておこう。
《で、では蓮太サンには俺からスキルを与えた上で、俺の管理する世界で赤ん坊からやり直してもらう事になりますが……》
「ちょっと待て。赤ん坊?」
《ひっ、あ、あの……転生だから仕方ないんっすよ!》
「むむむ……。受け入れるしかないか。まぁ良い。記憶はそのままなんだな?」
《それはもちろんですよ。やらかしたお詫びとしてそこはサービスさせていただきますので……どうか上には秘密に……》
「次はないからな?」
《は、ははは。もちろんっす。蓮太サンは俺の世界でのんびり暮らして人生を楽しんで下さいっ》
「のんびりねぇ……。それはありがたいな。じゃあ頼む」
《ははっ!》
こうして神を脅し、蓮太はこの神が管理する世界へと転生するのだった。
さて、謎の生き物により命を奪われた蓮太だが、いったいどこで死んだのだろうか。もちろん地球には頭が三つもある巨大な犬など存在しない。つまり、蓮太はどういったわけか地球の輪廻から外れ、地球には存在しない巨大な犬がいる異なる世界の輪廻の輪に組み込まれる事になった。
その大元が今魂だけとなった蓮太の目の前にいた。
《誠に申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁぁっ!》
「……え?」
蓮太にしてみれば久しぶりの会話だ。だがその会話の始まりは白い衣に身を包んだ若い男が魅せる見事なまでの土下座から繰り出された豪快な謝罪だった。
「……なんの事?」
《え?》
「え?」
今一つ会話が噛み合わない。
《えっと……もしかして……ご自身に何が起きたかわかっていらっしゃらない……ので?》
「何がって言うか……頭が三つあるバカでかい犬に食い殺されたくらいしか」
《なるほどなるほど。……変だとは思いませんでしたか?》
「まぁ……普通はあんな犬いるわけないし、多少変だなとは思ってるかな」
《は、はは……ですよねぇ~。じ、実はですね……》
若い男はスッと立ち上がり現状の説明を始めた。
《──というわけでして》
「え、神? は!? 俺異世界で死んだの!? ってかいつの間に!?」
《蓮太様が崖から落下した際にですね、丁度中腹くらいに次元の裂け目ができていまして。あ、私がサボって修復しなかったとかそんな事は決してありませんので!》
これはやったなと蓮太は思った。だが生きていた所で家族もいなければ恋人もいない。地球にあるのは悪辣な労働環境のみだ。
「話は大体わかったよ。それで、俺はこれからどうなるの? 天国に行けちゃったりする?」
《え? あんな所に行きたいんですか? 行きたいならそう取り計らいますが》
「ちょっと待った! 天国について説明を」
《えっとですね……》
聞いた所、天国とはとんでもなく退屈な場所らしい。何か娯楽があるわけでもなく、ただただ真っ白い部屋で眠るか、疑似太陽の下で日向ぼっこをするような場所らしい。
「却下! そんな場所には死んでも行きたくないっ!」
《あははは~、もう死んでるんですけどね?》
「あんたのせいだろ!?」
《さーせん》
馴れてきたのか最初の土下座はどこへやら、男の態度がどんどんチャラくなってきた。
《ってか、ぶっちゃけ俺が女神の裂け目にインスコしてっ時にさぁ~、逆に何してくれてんのってぐふぅっ……!》
気付いた時にはソウルアタック(ただの体当たり)を男の顔にぶちかましていた。
「お前のせいで死んだんだろ? な? あ?」
《ひ、ひぃぃぃっ!? あ、ヤンキーの方ですか?》
「言わせんなよ。俺の背な……ってもうねぇか」
《す、すんませんっした!!》
再び綺麗な土下座が披露された。
蓮太は幼い頃に事故で家族を全て失い、それからは嫌がる親戚の家を中学卒業までたらい回しにされていた。そんな環境でグレないわけがない。
「で? ぶっちゃけ俺ってどうなんの?」
《あ、はい。先ほども説明したようにですね、蓮太サンがお亡くなりになったのは俺の管理する世界でして》
「ああ、うん」
《死んだ者はすべからく輪廻の輪に組み込まれるんっす》
「前置きがなげぇよ」
《す、すんませんっ! で、ですから……、蓮太サンはもう地球の輪廻から外れて俺の世界の輪廻に組み込まれたんっす。なのでもう地球に生き返らせる事ができないんっすよ》
「ふ~ん。じゃあ俺は死んだままか?」
《い、いえ!》
再び男がスッと立ち上がる。
《よ~く考えたら悪いのは俺なので……、蓮太サンにはちょっぴりサービスを加えて俺の世界に転生してもらおうかと思ってます》
「あんたの世界って……。そりゃあれだろ? またあの犬に食い殺されるかもしれないんだろ? 断じて断るぞ」
《だからちょっぴりサービスするんっすよ》
「ちょっぴり?」
《た、多少……》
「殺しておいて?」
《か、簡単に死なないくらいには……》
「上司にバラしちゃおっかな~。すいま──」
《やめてぇぇぇぇぇっ!? 顔の形変わっちゃうっ! わ、わかりましたよ! 知識次第で誰にも負けないようになるスキルを与えますっ!》
「最初からそうしておけよな、人と人の間には情がなきゃなぁ~」
《は、はは……》
情の欠片もない蓮太だった。男は何も嫌だから渋っていたわけではない。神と呼ばれる者が魂に力を与えるためには今まで積んできた徳を使うのである。これまでの男の態度からわかるように、とても徳が高いとは言えない。つまりスキル一つ与えると男は最下級神になってしまうのである。だがそれでも上司である最高神の裁きは怖い。決して蓮太の脅しに屈したわけではないと付け加えておこう。
《で、では蓮太サンには俺からスキルを与えた上で、俺の管理する世界で赤ん坊からやり直してもらう事になりますが……》
「ちょっと待て。赤ん坊?」
《ひっ、あ、あの……転生だから仕方ないんっすよ!》
「むむむ……。受け入れるしかないか。まぁ良い。記憶はそのままなんだな?」
《それはもちろんですよ。やらかしたお詫びとしてそこはサービスさせていただきますので……どうか上には秘密に……》
「次はないからな?」
《は、ははは。もちろんっす。蓮太サンは俺の世界でのんびり暮らして人生を楽しんで下さいっ》
「のんびりねぇ……。それはありがたいな。じゃあ頼む」
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