上 下
70 / 82
第7章 東の大陸編

17 闇竜対策

しおりを挟む
 邪竜を仲間にしたローグは一度屋敷に戻り、仲間達とともに最下層にいると思われる闇竜について邪竜の話を聞く事にした。

《あ~……。闇竜ね、ありゃあかなりヤベェ奴っす》
「ヤバい? 何がどうヤバいんだ?」

 そう問い掛けると邪竜は闇竜について語り始めた。

《闇竜は味方に対してはまぁ良い奴なんスけどね、敵には全く、これっぽっちも容赦がないんっスわ》
「容赦がない? 竜なんて全員容赦なくない?」
《いや、違うんスよ》
「何が?」

 邪竜は闇竜の力を思い出し微かに身体を震わせていた。

《俺達は基本力対力で戦うんス》
「まぁ……そうだね」
《けど……闇竜は違うんスよ。闇竜のスキルは【マインドハック】って言いまして……。なんて言うか、昔の辛い記憶を読み取り、さらにその記憶を改竄して癒えたはずのトラウマを思い出させ、それを再び抉るんスよ……》

 その話を聞いたローグは一瞬で闇竜の危なさに気付いた。

「闇竜は精神を攻撃してくるのか……」
《そうっス。そのスキルは敵の精神がぶっ壊れるか、トラウマを乗り越えるかしないと終わらないんっスよ》
「……良し、闇竜は無視して次の竜を探しに行こう!」
「「「待てぃっ!」」」

 逃げようとするローグに皆が一斉にツッコミを入れた。

「何だよ! そんな危ない竜相手に出来るかよっ!? 精神壊れるまで攻撃され続けるとかどんな地獄だよっ!?」

 部屋の入り口を塞いだジュカは諭すようにこう言った。

「しかしローグ様。闇竜を仲間に迎えないと竜界へは行けないのではないでしょうか? アクアさんが妊娠してしまったのですから、彼女の親である無竜と全竜には挨拶した方がよろしいのでは」
「うぐ……っ。ぐぅ……! わかったよ! トラウマ攻撃くらい乗りきれば良いんだ! はははっ、か、簡単じゃないか! さ、さぁ──行くぞ!」
「「「「いってらっしゃ~い。」」」」
「何でだよ!?」

 今度はローグが全員にツッコミを入れた。

「リヒト、行くぞ?」
「い、いや……っ! わ、私はまだ竜と戦うには力不足でしてっ!」

 なぜかわざとらしく咳き込めリヒト。

「ならアビス行くぞ?」
《い、いや……! お、俺はまだ本調子じゃないんで! そ、それに! 邪より上位の闇に勝てる訳ねーじゃねっスか!》

 リヒトも邪竜もローグと視線を合わそうともしなかった。さらにジュカはいつの間にか自分の空間に逃げ込んでいた。

「お前ら……そうだ! ゾルグならっ!? 【転移】っ!」

 全く行く気のないリヒト達をあきらめ、ローグはアースガルドへと転移し、国王代行として働いていたフローラにゾルグの居場所を尋ねた。

「ゾルグさんでしたらギルオネスで正式に弟のマルコ様が皇帝に即位するらしく、今は国に戻っておられます」
「なん……だとっ!?」

 頼みの綱であったゾルグがいないと知り、ローグはその場にガックリと崩れ落ちた。

「えっ? ど、どうかなさったのですか、ローグさん!?」
「実はな……」

 ローグはゆっくりと顔を上げ、フローラに事情を話した。 

「闇竜……ですか。それならば城にいる竜達に何か良い案はないか尋ねてみてはいかがでしょう?」
「それだっ! さすがフローラだ! 頼りになるっ!」
「いえいえ。愛する夫のためですもの、知恵も絞りますわ」

 わずかな光明を得たローグはすぐさま中庭に走ると火竜達を集め何か良い案はないかと尋ねた。

《《》》

 竜達は一様に口を揃えてそう言った。それを聞いたローグはまさに開いた口が塞がらなかった。そしてそこに水竜がトドメの一言を発した。

「彼女はねぇ……本気でヤバいわ。今まで何人も敵対した奴はいたけど、全員もれなく壊されてるわよ」
「……ちなみに、壊れた奴はどうなったの?」
「そうねぇ。赤ん坊みたいになってたわ」
「おいおい……。せ、聖竜は何かないか?」

 ちらりと聖竜を見るが、聖竜はカプセルハウスの隅っこでいじけていた。

《水竜ばっかり……水竜ばっかり……! ぐすっ……》

 ローグは聖竜に触れないでおく事にした。 

「解決法はないか。お前達すら恐れる闇竜相手にどう戦えば良いんだ……」

 さすがに解決法がなしでは迷宮には戻れない。万が一にも精神を壊されるわけにはいかない。

 すると土竜が肉を抱えながらこう言った。

《主よ、闇竜の【マインドハック】は発動までわずかだがラグがある》
「ラグ?」
《うむ。主ならばそのわずかな時間で闇竜を戦闘不能にできるのではないか?》

 それを聞いたローグは勢いよく立ち上がり、そして土竜の目の前に大量の肉を出した。

《に、肉祭り!?》
「アース! さすがアースだっ! なんだかんだ一番頼りになるのはお前だよぉぉっ!」
《うぉぉぉっ! はぐはぐはぐはぐ──!》

 土竜は肉に埋もれながら次々とローグが出した肉にかぶりついていった。

「闇竜に有効な手は早期決着! 力を使われる前に倒せば良いんだ! よ~し、これならなんとかなりそうだ! ありがとうアース! 戻ったらまた肉追加してあげるよっ! 【転移】!」

 こうして解決法を見出だしたローグは迷宮最後の階層前へと転移していった。

 ローグが消えたカプセルハウス内で火竜と氷竜が話し合う。

《どう思う? 氷竜》
《知らん。だが、ロクなことにはならなそうだ》
《そうだな。ラグなんてほぼないに等しいのだからな》
《闇竜はある意味一番強い。その力は全竜をも倒せるからな》
《ああ、そう言えば一度壊れかけてたなぁ……》
《過去に傷がない者などいない。さて、あいつはどう乗り越えるのだろうな》

 火竜達はそっと空を見上げるのだった。
しおりを挟む
感想 1,948

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。