スキルは見るだけ簡単入手! ~ローグの冒険譚~

夜夢

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第7章 東の大陸編

16 邪竜

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 二人の強さを確認したローグは、いよいよこの迷宮に来た目的である邪竜と闇竜のいるだろう階層へと向かう。

「邪竜と闇竜か。どんな竜なんだろうな……。考えても仕方ないし、気合い入れて行くとしますか」

 ローグはリヒトとハク、そしてジュカをの三人を連れ、地下498階層へと下りた。

 階層に下りた瞬間、なにかを察したリヒトがローグに助言する。

「ご主人、どうやらこの階層のボスはすでに殺られているようです。そしてあの竜が代わりに階層ボスになっているようです。気をつけて下さい」
「ああ、わかった」

 ローグはフロアの奥で腕組みをし、不敵に笑っている黒い竜に近付いて行った。

《おっと、そこで止まりな。それ以上近付いたら怪我じゃ済ませねーぞ? 俺ぁ優しい優しい邪竜様だからよぉ? とりあえず警告はしてやんぜ》

 しかしローグは邪竜の警告など構いもせず近付いて行く。

「ご主人っ! 危ないっ!!」

  邪竜の尾が凄まじい速度でローグの頭上から襲い掛かってきた。だが、リヒトがローグに当たる直前に刀で尾を弾いた。

 尾を弾かれた邪竜はヒューッと息を吐き手を叩いて驚いていた。

《はっはー。今の一撃を弾くかよ? なかなか良い仲間持ってんじゃねぇの、銀髪》

 ローグは邪竜の左腕による攻撃を片手で受け止めていた。邪竜は尾だけに見せかけ、ちゃっかり左手でも攻撃を繰り出していた。これがリヒト一人であれば、今頃リヒトの脇腹は抉られていただろう。

「すみません……。油断しました」
「大丈夫だリヒト。後は俺に任せて下がっていてくれ。竜を仲間にするためには主となる者が力を見せないとダメなんだ。今日お前達を連れて来たのは俺の戦い方を見せるためだ。ハクも大丈夫だから力を抑えてくれ。それとジュカ。空間の中から戦いを見る事は可能かな?」「ええ、問題ありませんわ」
「わかった。ならお前達はジュカの空間の中で見ていてくれ」
「「はい、ご主人!」」

 二人はジュカが開いた空間の中へと入る。そしてジュカが空間の中へと入る前にローグに言った。

「二人に戦い方を見せるためとはいえ……遊び過ぎないようにお願いしますよ?」
「はははっ、少しだけ善処しよう」
「頼みますよぉ……ローグ様」

 ジュカは半泣きになり空間へと消えていった。そして先に入っていた二人に外の映像を見せる。

「これで見えますでしょうか?」
「ああ、問題ない」
「ん、見える」
「……では、ローグ様の戦い方を見学しましょう」

 ローグは腕組みをしたまま待つ邪竜に言った。

「まさか律儀に待っててくれるなんてなぁ」
《はっ、優しいだろ? しっかし……せっかく良い寝床が見つかったと思ったのによ。まさか邪魔が入るとは思いもしなかったぜ》
「そうかい。なら……お前に勝ってもっと良い場所に連れてってやろう。お前、負けたらちゃんと仲間になれよ? ああ、ちなみにこれから行く所には他の竜達もいるから」

 それを聞いた邪竜はわずかに反応を示した。

《お前……ドラゴンスレイヤーか? 後残り何体よ?》
「そうだな、お前を含めて五体だ。二体は竜界にいるらしいから地上だと三体だな」

 邪竜は笑った。

《ハッハー! お前、なかなか強ぇんだなぁっ! だが……それもここまでよ。俺を並の竜と一緒にしてもらっちゃあ困るぜ? まずは小手調べだ》

 そう言い、邪竜は腕組みを解き両翼を広げる。

《【ダークネスフィールド】》

 邪竜は固有スキルを使った。すると辺りに邪気を含んだ黒い霧のようなものが充満していった。

《この邪気が俺の能力を何倍にも引き上げる。さっきの様に受け止められたら……少しは認めてやるぜ。オラァァァァァッ!》

 邪竜は先程と同じく、鋭い爪の生えた左腕を振りかぶり、ローグに殴りかかる。対するローグはそれを片手で受け止めようとしたが、完全には受けきれず僅かに後退した。

「おいおい、こっちは強化してるってのによ。まさか少し下がっただけで吹き飛びもしねぇとはな。おめぇ……まじで何者だよ」

《スキル【ダークネスフィールド】を入手しました》

 ローグはニヤリと笑いながら邪竜に言った。

「さてな、その身体で知ると良い。次は俺の番だよな、いくぞ! 【セイントオーラ】」

 ローグの身体が聖なる光に包まれる。それと同時に、ローグの周囲にあった黒い霧が霧散した。

《んなっ!? そりゃあ聖竜の!! お前っ!》
「さあ、戦いの時間だ。死ぬなよ、邪竜! 【ホーリーツインキャノン】!!」

 ローグは邪竜に向け両手から聖なる光の砲撃を放つ。だがこの技は予備動作があからさま過ぎるため、対面した相手にはどんな技がくるかわかってしまう欠点もある。そして予想通り邪竜はその砲撃を躱わした。

《ふぅぅ……っ。それも使えんのかよ! 危ねぇ危ねぇ……》
「当たらないよな、やはり」
《ふん、ただ真っ直ぐ飛んでくるだけの攻撃なんか百年経っても当たるかよっ! 次は俺の番だぜ。食らえっ! 竜魔法【ダーククリムゾンフレア】!》

 邪竜は身体の正面で両手を重ね、ローグに向け真っ直ぐ黒い炎の塊を放った。

《闇の炎に焼かれちまいなっ! 骨も残さねぇぜ!》
「なるほど。避けるだけじゃお前と一緒だ。なら俺はこうしよう。竜魔法──【ホーリーノヴァ】!」

 ローグは竜魔法で邪竜の竜魔法を相殺する。それと同時に両手に刀を構え、相殺した爆発に紛れ、縮地を使い一足飛びで邪竜との距離を詰める。

《しまっ──!》
「遅いっ! 竜技【ドラゴンファング】!」

 ローグは二本の刀を同時に振り下ろす。それはまるで竜が爪で敵を切り裂く様に見える。これは躱わせないと判断した邪竜は右腕を捨てた。

 ローグの刀により邪竜の右腕が斬り落とされた。

《ちいっ! 右腕がイッちまったか!》
「まだまだ行くぞっ! 竜技【ドラゴンストーム】!」

 ローグは回復する暇を与えない。今度は刀を水平に構え、回転しながら邪竜に連撃を叩きつける。

《ぐぅっ! くあぁぁぁぁぁぁっ!! ちくしょうっ!!》

 邪竜は翼を閉じ、前面をガードする。邪竜の翼は瞬く間に斬り傷が増していった。

「次の攻撃で最後だ。気張れよ、邪竜!」
《舐めんなっ! 俺は負けねぇぇぇぇっ! くらえぇぇぇぇっ!! 竜魔法【イビルノア】!!》

 ガパァッと開いた邪竜の口から黒い球体が飛び出してきた。だがローグはそれを難なく躱わし、邪竜の背後を取る。

「加減はする。耐えてくれよ? 食らえ──【ネオ】!」

 不可視の攻撃が邪竜の身体に穴を開けていく。

《な、なんだこれはっ!? み、見えねぇっ! ぐっ! ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!》

 邪竜は全身穴だらけとなり、やがて地に伏した。

《マ、マジ……かよっ。み、見えねぇ……攻撃とか……ひ、卑怯だろ……。ぐふっ!》
「耐えたようだな。邪竜、これは俺の勝ちって事で良いよな?」
《は……っ、見たら……わかんだろ……。もう、一歩も……動けね……よ。ぐふっ……》
「よし、ならこれを飲むと良い」
《むぐっ!?》

 ローグは邪竜の口に【上級回復薬】を突っ込んだ。

《んぐっ……。ハイポーションか……。ふぅ、ありがてぇ……》
「一つ聞くけど……ヒールで治るのか?」
《んあ? どうかな。ありゃあ神聖魔法だからな……。逆に傷つくかもしんねーな》
「なるほど。【ヒール】」

 ローグは確認のために邪竜の身体に回復魔法を施してみた。

《んぎゃあぁぁぁっ!? いってぇぇぇぇっ! な、何しやがるっ!?》
「確認だよ確認。最初はエクストラヒールで回復させようとしたんだけどさ。念のために薬にしておいて良かった。危うく殺すところだった」
《さ、最上級回復魔法かよ。それを食らってたら瀕死……悪くて一撃死だな》
「なんだ、なら最初からそれ使えば良かったのか」
《ぬかせ。あ~……負けちまったかぁ。約束通り仲間んなってやんよ》

 そう言い、邪竜が手を差し出した。そしてローグがそれに応える。

「これからよろしくな、【アビス】」
《アビス? そりゃあまさか俺の名前かよ? はっ、良いねぇ……。アビスか、強そうだ》

 それを受けたジュカは戦闘が終わったと判断し、空間を開く。そして三人が空間の中から現れた。

「お疲れ様でした、ローグ様」
「うん、どうだった? リヒト、ハク」

 リヒトがローグに言った。

「驚きました。私以外にも竜技を使える者がいたとは。失礼ですが、それをどこで?」
「俺の父親が師匠から習ったそうなんだよ。教えたのは多分光竜だ。俺は今その光竜を探しているんだよ。光竜だけ行き先が全くわからなくてさ。けど、ようやく手掛かりが見つかったって感じかな。リヒトのお陰だよ」
「そうでしたか。いやはや……、強かったですな、ご主人は。私など足元にも及びますまい」
「ははっ、冗談だよね? まだ目を開いてもないのにさ。いつか本気の手合わせをお願いしたいかな」
「はっはっは。怪我じゃ済みませんよ? ……私が」
「はははははっ。おっと」

 するとハクがローグに抱きつてきた。

「ローグ強い! また力上げた! 私よりずっとず~っと上になった!」
「ハクより上かぁ~。これで主って胸を張って言えそうだ」
「主、主~!」

 甘えてくるハクの頭を撫でつつ、ローグは邪竜を見る。

「さて、一度地上に戻るか。アビス、この階層の石持ってるよね?」
《ん? 石? あぁ、あの雑魚が落とした石な。ほらよ》

 邪竜はローグの手に大量の転移石を手渡した。

「何でこんなに?」
《暇だったからよ。運動代わりに遊んでたんだ》
「なるほど。そう考えるとなかなかに可哀想なボスだな。じゃあ地上に戻ろうか」
「「「「おー!」」」」

 こうして、新たに邪竜を仲間に迎えたローグは一度屋敷へと戻るのだった。
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