61 / 82
第7章 東の大陸編
08 判決
しおりを挟む
今日で約束の一週間となる。ロデオは幾度となく瀕死に陥りながらもなんとか耐え抜いてきた。ここまで耐える事が出来たのは奇跡といえる。
「昨日はさほど石を投げられなかった。あの糞冒険者達がまた来て酷く汚されたくらいだ。……まだ耐えられる。今日の昼だ、昼まで耐えたら俺は解放されるんだ。後一時間……! 一時間だけ耐えきればっ……!」
今日はいよいよロデオが解放される日だ。今まで散々投石していた住民達はいつしか石を投げるのをやめ、近づく事すらなくなっていた。流石に可哀想だと思ったのか、あの少女が優しさを見せた事で自分の行いを恥じたのかはわからないが。
だが、中には遠慮なく痛めつけにくる者もいる。そう、こいつらだ。
「よぉ? 今日で磔の刑も終わりらしいじゃないか? いつもよりち~っと早いけどよ、祝いに来てやったぜ?」
いつも夕方前に来る冒険者達がいた。
「今日で最後なんだよな?だからよ、今日は特別なプレゼントを用意して来たんだ。まぁ……受け取れや」
冒険者は笑いながらそう口にし、中で何かが蠢いている袋を鞄から取り出した。それをロデオの前に突き出す。
「こん中にはよぉ、ムカデやら何やら気持ち悪~い蟲がいっぱい詰まっててよ? 集める時、ち~ぃっとばかり気持ち悪かったが、お前の為に頑張ったんだぜ? この俺がよ?」
ロデオは下卑た笑いを浮かべる冒険者を見下ろしながらこう言い放った。
「……糞が」
「ひゅう、今日はやたら元気じゃねぇの? 怪我も少ねぇみてぇだしよ?」
取り巻きの男が頭の男に告げる。
「アニキ、街の奴ら皆飽きたみたいでさぁ。最近は誰も近付いてませんぜ」
「んーだよ。じゃあ俺が皆の代わりにやってやんなきゃなぁ~? おい。誰か奴の足元に火を起こせ。今から奴の身体に蟲を投げるからよ。奴らは自然と火から逃げる為にアイツの身体ん中に入ろうと……」
だがその企みは陽が真上に昇った瞬間潰える事となる。男の背後から声が掛かった。
「お前が食らえよ。この人間のクズが。【次元転送】」
突如男の背後に現れたローグは蟲入りの袋を持った男をジュカからもらったスキル【次元転送】でとある場所へと送った。
そして残った取り巻き二人に一緒に来ていたゴートが言い放つ。
「時間だよ。これより先、こいつに手を出したらただの犯罪者だ。お前ら、冒険者登録抹消されたいのか?」
それを聞いた取り巻き達は叫びながら蜘蛛の子を散らすようにその場から消えて行った。
「「す、すいませんでしたぁぁぁぁぁっ!!」」
それを見届けたローグはロデオを地面に降ろし、傷を回復させ全身を綺麗に洗浄してやった。久しぶりに自由になったロデオは全身の凝りを解していく。
「よく耐えたねロデオ。ま、ギリギリで助かるように監視をつけてたんだけどね。もし本当にヤバそうだったら助けるつもりだったんだけど」
「……なぜだ。私は魔族だぞ? また人間を苦しめるとは思わなかったのか?」
「魔族にも色々いるのはわかってるよ。アスラも改心したし、俺の仲間にはジュカやワルプルギスもいるし」
ロデオはその名を聞いて青ざめた。
「ジ、ジジジジジュカっ!? あ、あの空間使いの!? アイツが人間の仲間に!? あ、ありえん!」
「嘘じゃないよ。会わせてあげようか?」
「い、いいいいいや、今はいいっ! それより……私はこれからどうなるのだ?」
その問い掛けにゴートが答える。
「とりあえずだ、お前の罪は精算された。だが、この街に置いておく事は出来ん。街からは追放、今後一切の立ち入りを禁止とする」
「そ、それだけ……か? 自分で言うのも何だが、私はお前達をかなり苦しめたはずだ。それが磔の刑に耐えただけで精算だと? バ、バカか!?」
困惑しているロデオにローグがこう告げる。
「俺が引き取る事で罪を軽くしたんだよ。お前にはこれから俺の国に来てもらう。ジュカの下で人間について一から学べ。あの少女の優しさに触れてわかっただろ? 人間には色んな奴がいるってさ。良い奴、悪い奴、無関心な奴、人間には様々な者がいる。俺だって悪い奴は殺す事もある。だがそれは正しい事だと自分で納得してやっているんだよ。そこに後悔なんて微塵もない。お前はどう考えた?」
そう問い掛けるローグにロデオが答える。
「わかっているさ。あれから散々考えた。私を助けるように願った人間がいた、私を毎日いたぶりに来た人間もいた。だから私はこう考えたのだ。これからは私を害する人間だけを苦しめてやろうとな」
「まぁ……、そうなるよね。なら良い人間に対してはどうだ? 助けになりたいとか、恩を返したいとか思わない?」
「それは……思うさ。だが、俺にはお前みたいな特別な力はない。助けてやりたくても無理だ」
「そんな事はないさ。力はなくともお前には頭があるだろう? その頭脳を使って悪人だけを懲らしめたらいい。俺は北の大陸を同盟で結んだが、それでも悪い奴らってのはどこにでもいる。正直手が足りないんだ。もし、お前が良い人間の助けになりたいと願うなら、俺がお前を拾ってやるよ。どうだ? 一緒に来てその頭脳を貸してくれないか?」
この誘いにロデオは悩んだ。仮に断ったとして野垂れ死ぬのは目に見えている。それなら悪人を苦しめる為に力を貸すのも悪くないのではと。
(何だかんだと目の前のこいつは私を何度も助けてくれたし、あの糞冒険者も追い払ってくれたんだよな……)
考えをまとめたロデオはローグを真っ直ぐ捉え、こう言葉を口にした。
「わかった、もう無闇に人を苦しめる事はしない。これからはしっかり対象を見極める事にする。そして、貴方の力になると約束しよう」
「そうか、アスラ! こっちへ」
「はいは~い」
建物の屋根からアスラが降りてきた。監視に回していたのはこのアスラだった。
「終わったの?」
「ああ。それで、お前達二人をこれから俺の国に連れていく。そこで少し教育を受けてもらおうと思う。行くよ、俺に掴まれってくれ」
「「はい」」
ローグはロデオとアスラが手にしっかりと掴まった事を確認し、ジュカのいる場所へと転移した。
「ジュカ」
「あら? ローグ様……と、あなた達は……アスラとロデオ?」
ジュカに名前を呼ばれたロデオはビクッと青くなり、下を向いていた。平気なのはアスラだけだったようだ。
「久しぶり~ジュカ。ねぇねぇジュカさ~、ローグとバトった?」
「もしかしてあなたも戦ったの?」
「まさか。戦う前に魔族だってバレてたし、それに……勝ち目なさそうだったからやめた」
「あなたは昔からそう言うとこあったわねぇ」
「あ、でも水竜の呑んだくれには勝ったよ」
「水竜に? 凄いわね」
ローグは自分と同じ勝ち方をしたアスラに何も言えなかった。
「ところでローグ様、確か東の大陸に行っていたのでは?」
「あ、あぁ。実はジュカにこのロデオとアスラをつけて人間界について教育させようって思ってさ」
「私に……ですか。それは無理ですね」
「なぜ?」
するとジュカがローグに抱き着いてきた。
「私も旅がしてみたいのです! 二人の教育なら私より人間に頼んだ方がよろしいと思いますわ。そうですね……、ワルプルギスがなついているゾルグさん辺りなら面倒を見てくれるかと」
「ゾルグか、なるほどね。確かに魔族は一括りにしておりいた方が良いかな。ジュカ、ゾルグ達を呼んできてもらえるかな?」
「かしこまりました」
数分後、ジュカがゾルグとワルプルギスを連れて戻ってきた。
「ローグ、俺に話があるんだって?」
「ああ」
するとロデオの姿を見たワルプルギスがはしゃぎ出した。
「お~、ロデオじゃないか! 久しぶりだな、まだ弱いままか?」
「ワルプルギス……。あなたこそまだ頭の悪い辻斬りなんて真似してないでしょうね?」
そう言い合いながらも二人は握手を交わしていた。どうやら仲は良いらしい。
「ゾルグ、新しく仲間が増えた。あの二人は魔族だが悪い奴らじゃないからさ」
「また魔族か。ローグ、お前魔族に優しすぎじゃないか?」
「別に優しくしてるつもりはないんだけどね。リューネみたいに暴れて反省しないならともかく、こいつらはちゃんと反省して勝手に暴れないって誓わせてるからね。そうじゃなかったら倒してるよ」
「まったく……。で、俺に話とは?」
「うん。ワルプルギスもなついてるようだし、ゾルグにはあの二人の面倒も見てもらえないかなと」
「はぁぁ……。これまた面倒な。ワルプルギスだけでも修行の邪魔だと言うのに」
「そう言わないでさ、頼むよゾルグ。ゾルグにしか頼めないんだよ~」
ローグに懇願され満更でもないゾルグは仕方なくロデオ達を引き受ける事にした。
「わかったわかった。俺が面倒見てやる」
「さすがゾルグだ。頼りになる!」
そしてローグはロデオに言った。
「じゃあロデオにアスラ。これから君たちはこのゾルグについて人間について学んでくれ」
「ああ、わかった。ローグ殿、微力ながらこのロデオ、人間について学び、貴方の国のために尽力しましょう」
「よろしく頼むよ。じゃあジュカ、アクアをあっちに待たせてあるからもう行こうか?」
「はいっ! うふふ……ローグ様との旅、楽しみですわっ」
こうして魔族二人を新たに仲間に迎え、ローグはジュカを連れてイムトスへと戻るのであった。
──一方その頃、ローグに飛ばされた冒険者の男はというと──
「ど、何処だよここ……暗くて何も見えねぇ……。それにさっきから何かカサカサと気味の悪い音が……」
男は暗闇の中足を一歩踏み出した。
──ブチュッ──
「ひっ!? い、今何か踏んだ!?」
男は思い出したかのように慌てて鞄を探り、そこから松明を取り出し火を灯す。その次の瞬間。
「ぎ、ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! はっ、し、しまっ……!」
そこは一面蟲だらけの部屋だった。地面や壁は蟲が絡まりあって蠢き、空中も見たことが無い気持ち悪い蝶が飛び回っていた。その蟲達は、彼が叫んだ瞬間、彼を敵と認識し、排除する為に一斉に襲い掛かってきた。
「くっ、来るなぁぁぁぁっ! あ、あっちいけっ!!」
男は錯乱しながら松明を振り回しながらなんとか蟲を追い払おうとしたが、蟲は四方から次々と襲い掛かり、男の全身は一瞬で蟲だらけになった。最初に噛んだ蟲が男の身体を麻痺させ、肉食の蟲達が全身を次々と噛み千切っていく。男は生きたまま全身を蟲に食われ、ショック死した。やがて、全てを食べ尽くした蟲達は彼から離れ、辺りはまた静寂を取り戻した。男は何の因果か、自分でしようとした行動が自身の身に振りかかって死んだのであった。
「昨日はさほど石を投げられなかった。あの糞冒険者達がまた来て酷く汚されたくらいだ。……まだ耐えられる。今日の昼だ、昼まで耐えたら俺は解放されるんだ。後一時間……! 一時間だけ耐えきればっ……!」
今日はいよいよロデオが解放される日だ。今まで散々投石していた住民達はいつしか石を投げるのをやめ、近づく事すらなくなっていた。流石に可哀想だと思ったのか、あの少女が優しさを見せた事で自分の行いを恥じたのかはわからないが。
だが、中には遠慮なく痛めつけにくる者もいる。そう、こいつらだ。
「よぉ? 今日で磔の刑も終わりらしいじゃないか? いつもよりち~っと早いけどよ、祝いに来てやったぜ?」
いつも夕方前に来る冒険者達がいた。
「今日で最後なんだよな?だからよ、今日は特別なプレゼントを用意して来たんだ。まぁ……受け取れや」
冒険者は笑いながらそう口にし、中で何かが蠢いている袋を鞄から取り出した。それをロデオの前に突き出す。
「こん中にはよぉ、ムカデやら何やら気持ち悪~い蟲がいっぱい詰まっててよ? 集める時、ち~ぃっとばかり気持ち悪かったが、お前の為に頑張ったんだぜ? この俺がよ?」
ロデオは下卑た笑いを浮かべる冒険者を見下ろしながらこう言い放った。
「……糞が」
「ひゅう、今日はやたら元気じゃねぇの? 怪我も少ねぇみてぇだしよ?」
取り巻きの男が頭の男に告げる。
「アニキ、街の奴ら皆飽きたみたいでさぁ。最近は誰も近付いてませんぜ」
「んーだよ。じゃあ俺が皆の代わりにやってやんなきゃなぁ~? おい。誰か奴の足元に火を起こせ。今から奴の身体に蟲を投げるからよ。奴らは自然と火から逃げる為にアイツの身体ん中に入ろうと……」
だがその企みは陽が真上に昇った瞬間潰える事となる。男の背後から声が掛かった。
「お前が食らえよ。この人間のクズが。【次元転送】」
突如男の背後に現れたローグは蟲入りの袋を持った男をジュカからもらったスキル【次元転送】でとある場所へと送った。
そして残った取り巻き二人に一緒に来ていたゴートが言い放つ。
「時間だよ。これより先、こいつに手を出したらただの犯罪者だ。お前ら、冒険者登録抹消されたいのか?」
それを聞いた取り巻き達は叫びながら蜘蛛の子を散らすようにその場から消えて行った。
「「す、すいませんでしたぁぁぁぁぁっ!!」」
それを見届けたローグはロデオを地面に降ろし、傷を回復させ全身を綺麗に洗浄してやった。久しぶりに自由になったロデオは全身の凝りを解していく。
「よく耐えたねロデオ。ま、ギリギリで助かるように監視をつけてたんだけどね。もし本当にヤバそうだったら助けるつもりだったんだけど」
「……なぜだ。私は魔族だぞ? また人間を苦しめるとは思わなかったのか?」
「魔族にも色々いるのはわかってるよ。アスラも改心したし、俺の仲間にはジュカやワルプルギスもいるし」
ロデオはその名を聞いて青ざめた。
「ジ、ジジジジジュカっ!? あ、あの空間使いの!? アイツが人間の仲間に!? あ、ありえん!」
「嘘じゃないよ。会わせてあげようか?」
「い、いいいいいや、今はいいっ! それより……私はこれからどうなるのだ?」
その問い掛けにゴートが答える。
「とりあえずだ、お前の罪は精算された。だが、この街に置いておく事は出来ん。街からは追放、今後一切の立ち入りを禁止とする」
「そ、それだけ……か? 自分で言うのも何だが、私はお前達をかなり苦しめたはずだ。それが磔の刑に耐えただけで精算だと? バ、バカか!?」
困惑しているロデオにローグがこう告げる。
「俺が引き取る事で罪を軽くしたんだよ。お前にはこれから俺の国に来てもらう。ジュカの下で人間について一から学べ。あの少女の優しさに触れてわかっただろ? 人間には色んな奴がいるってさ。良い奴、悪い奴、無関心な奴、人間には様々な者がいる。俺だって悪い奴は殺す事もある。だがそれは正しい事だと自分で納得してやっているんだよ。そこに後悔なんて微塵もない。お前はどう考えた?」
そう問い掛けるローグにロデオが答える。
「わかっているさ。あれから散々考えた。私を助けるように願った人間がいた、私を毎日いたぶりに来た人間もいた。だから私はこう考えたのだ。これからは私を害する人間だけを苦しめてやろうとな」
「まぁ……、そうなるよね。なら良い人間に対してはどうだ? 助けになりたいとか、恩を返したいとか思わない?」
「それは……思うさ。だが、俺にはお前みたいな特別な力はない。助けてやりたくても無理だ」
「そんな事はないさ。力はなくともお前には頭があるだろう? その頭脳を使って悪人だけを懲らしめたらいい。俺は北の大陸を同盟で結んだが、それでも悪い奴らってのはどこにでもいる。正直手が足りないんだ。もし、お前が良い人間の助けになりたいと願うなら、俺がお前を拾ってやるよ。どうだ? 一緒に来てその頭脳を貸してくれないか?」
この誘いにロデオは悩んだ。仮に断ったとして野垂れ死ぬのは目に見えている。それなら悪人を苦しめる為に力を貸すのも悪くないのではと。
(何だかんだと目の前のこいつは私を何度も助けてくれたし、あの糞冒険者も追い払ってくれたんだよな……)
考えをまとめたロデオはローグを真っ直ぐ捉え、こう言葉を口にした。
「わかった、もう無闇に人を苦しめる事はしない。これからはしっかり対象を見極める事にする。そして、貴方の力になると約束しよう」
「そうか、アスラ! こっちへ」
「はいは~い」
建物の屋根からアスラが降りてきた。監視に回していたのはこのアスラだった。
「終わったの?」
「ああ。それで、お前達二人をこれから俺の国に連れていく。そこで少し教育を受けてもらおうと思う。行くよ、俺に掴まれってくれ」
「「はい」」
ローグはロデオとアスラが手にしっかりと掴まった事を確認し、ジュカのいる場所へと転移した。
「ジュカ」
「あら? ローグ様……と、あなた達は……アスラとロデオ?」
ジュカに名前を呼ばれたロデオはビクッと青くなり、下を向いていた。平気なのはアスラだけだったようだ。
「久しぶり~ジュカ。ねぇねぇジュカさ~、ローグとバトった?」
「もしかしてあなたも戦ったの?」
「まさか。戦う前に魔族だってバレてたし、それに……勝ち目なさそうだったからやめた」
「あなたは昔からそう言うとこあったわねぇ」
「あ、でも水竜の呑んだくれには勝ったよ」
「水竜に? 凄いわね」
ローグは自分と同じ勝ち方をしたアスラに何も言えなかった。
「ところでローグ様、確か東の大陸に行っていたのでは?」
「あ、あぁ。実はジュカにこのロデオとアスラをつけて人間界について教育させようって思ってさ」
「私に……ですか。それは無理ですね」
「なぜ?」
するとジュカがローグに抱き着いてきた。
「私も旅がしてみたいのです! 二人の教育なら私より人間に頼んだ方がよろしいと思いますわ。そうですね……、ワルプルギスがなついているゾルグさん辺りなら面倒を見てくれるかと」
「ゾルグか、なるほどね。確かに魔族は一括りにしておりいた方が良いかな。ジュカ、ゾルグ達を呼んできてもらえるかな?」
「かしこまりました」
数分後、ジュカがゾルグとワルプルギスを連れて戻ってきた。
「ローグ、俺に話があるんだって?」
「ああ」
するとロデオの姿を見たワルプルギスがはしゃぎ出した。
「お~、ロデオじゃないか! 久しぶりだな、まだ弱いままか?」
「ワルプルギス……。あなたこそまだ頭の悪い辻斬りなんて真似してないでしょうね?」
そう言い合いながらも二人は握手を交わしていた。どうやら仲は良いらしい。
「ゾルグ、新しく仲間が増えた。あの二人は魔族だが悪い奴らじゃないからさ」
「また魔族か。ローグ、お前魔族に優しすぎじゃないか?」
「別に優しくしてるつもりはないんだけどね。リューネみたいに暴れて反省しないならともかく、こいつらはちゃんと反省して勝手に暴れないって誓わせてるからね。そうじゃなかったら倒してるよ」
「まったく……。で、俺に話とは?」
「うん。ワルプルギスもなついてるようだし、ゾルグにはあの二人の面倒も見てもらえないかなと」
「はぁぁ……。これまた面倒な。ワルプルギスだけでも修行の邪魔だと言うのに」
「そう言わないでさ、頼むよゾルグ。ゾルグにしか頼めないんだよ~」
ローグに懇願され満更でもないゾルグは仕方なくロデオ達を引き受ける事にした。
「わかったわかった。俺が面倒見てやる」
「さすがゾルグだ。頼りになる!」
そしてローグはロデオに言った。
「じゃあロデオにアスラ。これから君たちはこのゾルグについて人間について学んでくれ」
「ああ、わかった。ローグ殿、微力ながらこのロデオ、人間について学び、貴方の国のために尽力しましょう」
「よろしく頼むよ。じゃあジュカ、アクアをあっちに待たせてあるからもう行こうか?」
「はいっ! うふふ……ローグ様との旅、楽しみですわっ」
こうして魔族二人を新たに仲間に迎え、ローグはジュカを連れてイムトスへと戻るのであった。
──一方その頃、ローグに飛ばされた冒険者の男はというと──
「ど、何処だよここ……暗くて何も見えねぇ……。それにさっきから何かカサカサと気味の悪い音が……」
男は暗闇の中足を一歩踏み出した。
──ブチュッ──
「ひっ!? い、今何か踏んだ!?」
男は思い出したかのように慌てて鞄を探り、そこから松明を取り出し火を灯す。その次の瞬間。
「ぎ、ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! はっ、し、しまっ……!」
そこは一面蟲だらけの部屋だった。地面や壁は蟲が絡まりあって蠢き、空中も見たことが無い気持ち悪い蝶が飛び回っていた。その蟲達は、彼が叫んだ瞬間、彼を敵と認識し、排除する為に一斉に襲い掛かってきた。
「くっ、来るなぁぁぁぁっ! あ、あっちいけっ!!」
男は錯乱しながら松明を振り回しながらなんとか蟲を追い払おうとしたが、蟲は四方から次々と襲い掛かり、男の全身は一瞬で蟲だらけになった。最初に噛んだ蟲が男の身体を麻痺させ、肉食の蟲達が全身を次々と噛み千切っていく。男は生きたまま全身を蟲に食われ、ショック死した。やがて、全てを食べ尽くした蟲達は彼から離れ、辺りはまた静寂を取り戻した。男は何の因果か、自分でしようとした行動が自身の身に振りかかって死んだのであった。
0
お気に入りに追加
7,075
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい
斑目 ごたく
ファンタジー
「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。
さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。
失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。
彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。
そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。
彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。
そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。
やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。
これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。
火・木・土曜日20:10、定期更新中。
この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
捨てられた転生幼女は無自重無双する
紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。
アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。
ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。
アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。
去ろうとしている人物は父と母だった。
ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。
朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。
クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。
しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。
アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。
王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。