112 / 227
第5章 グラディオン大陸編
23 やる奴はやられる覚悟をもて
しおりを挟む
王城地下牢。そこでシュトラーゼ王国国王の命は風前の灯となっていた。国王を痛め付けているのはシュトラーゼ王国にて伯爵の地位にある男。この男が守旧派を率いている頭だ。
「そろそろ頷いてくれませんかねぇ? それとも……まだ私を楽しませたいのかな? いやぁ、さすが国王様だ。国民のために我が身を犠牲にするその姿勢……感服ですよ」
男はペンチのような器具で国王の歯をつまみ、残る最後の一本を引き抜いた。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ! ごふっ……!」
王の口内は紅に染まっている。歯がないせいか最早何を言っているのかもわからない。
これまでに王は散々痛め付けられてきた。最初に目隠しをされ、椅子に縛り付けられた。そして手足を固定され、まず爪の間に針を通される。全部の爪に針が通ると、今度はそれを軸にし、全ての指から爪が剥がされた。だがそれでも王は折れず、決して屈しなかった。
俺は今死にかけている王の後ろに立っていた。拷問伯爵がこれまでどんな拷問を王にしてきたか、俺は王の記憶を読んでいた。
(……ぬるっ。これで拷問伯爵とはなぁ……。俺んとこじゃ日常茶飯事だったぜ。まだまだ抉る所が残ってんじゃん)
それが率直な感想だ。
未だに首を縦に振らない王に伯爵が言った。
「まぁ、どうせ認めた所で助かりはしないのですがね。今頃王妃や王女も滅茶苦茶になっているでしょうしねぇ~」
「ひ……ひはふぁぁぁぁぁっ!!」
「ひははははっ、何を言っているかわかりませんねぇ~」
俺はこの温さに飽きてきた。
「もう良いだろ。【位置交換】」
「え?」
「ほ……」
「完全回復魔法【エクストラヒール】」
「むぉっ!?」
俺はまず王と伯爵の居場所を交換してやった。そして姿を現し王の傷を癒した。
「な、ななななんですかこれはっ!? 見えませんし動けませんよっ!?」
「お前、ちっとうるせぇから黙っとけ」
そう言い、俺は伯爵の口にトーキックを御見舞いしてやった。
「ぐぼらっ!? は、はははは歯がぁぁぁぁ……っ!」
伯爵の歯が全て折れ床に転がった。
「お、お主……誰じゃ?」
「初めまして、国王。俺はイージス大陸で邪神国デルモートを率いている国王ジェイドだ。あんたの妻と娘はすでに救出済みだ。今は改革派のアジトにいてもらっているよ」
「な、なんと! ぶ、無事なのか!」
「まぁ……な。大分汚されて壊れていたが治療してやったからな。ああ、ちなみに上で暴れていた奴らはもう城にはいないぞ。守旧派で残っているのはこいつと城にいなかった奴らだけだ。まぁ、そいつらも潰しに行くがな」
妻子の無事を知り王は安堵した。
「そ、そうか……。すまぬ、助かった……!」
「なに、構わんよ」
ここで俺は目の前にいる王を試す事にした。
「さて、あんた随分やられてたみたいだが……。今ならこいつに仕返しし放題だぜ? ちょっとやってみるかい?」
王は首を横に振った。
「……いや。私はいい。拷問されはしたが其奴も元は家臣だった男。やられてやり返していたらキリがないからの。妻子が無事で私も命が助かったのだ。私からは何もしない」
「そうか。ま、良いだろう」
とりあえずは合格だな。ここで感情に任せて憂さ晴らしするような王なら不合格だ。そんな奴は俺の作る世界に必要ない。
「じゃあ今から改革派のアジトに送る。そこで妻達と再会し、ゆっくり休むと良い」
「お、送る?」
「ああ。【転送】」
「うぉ……」
俺は王をアジトに転送してやった。
「歯らぁぁぁぁぁっ! わらひの歯らぁぁぁぁぁっ!」
「うるっせぇっつってんだろうが。歯くらいでガタガタ言ってんじゃねぇよ。お前にはこれから地獄が待ってんだからよぉ……ひひっ、うははははははははっ!」
「ひぃっ!?」
ちなみに目隠しはしていない。視覚を塞ぐ事は確かに有効だが、俺くらいのレベルになるとむしろ視覚で恐怖を与える方が有効となる。なんせ俺はイカれてるからな。ああ、楽しみだ。
一方、その頃王は。
「……ぉぉあ? ど、どこだここは?」
「「「「こ、国王様っ!?」」」」
「あぁぁぁぁ、あなたぁぁぁぁぁっ!」
「お、お父さま!? い、今どこから!?」
改革派の面々の前へと転送された王は即座に理解した。
「な、なるほど。送るとはこう言う意味だったか」
「国王様、まさかジェイド様に?」
「うむ。後一歩で死ぬ所だった。だが完全回復魔法とやらで治療されてな……」
「おぉぉぉっ! さ、さすがジェイド様!」
そこで王女が何かに気付いた。
「ち、ちょっと待って! あいついったいいくつスキルが使えるの!? 知ってるだけでも【転移】、【転送】、【透明化】に【聖魔法】……」
それに王妃が続く。
「【浄化】に【記憶操作】も使ってたわね」
さらに婦人達も続く。
「【飛行】、【気配遮断】。おそらく【剣術】も使えますね」
その場にいた皆は黙ってしまった。
「……少なくとも十以上は使えそうだな。この世界で人間が使えるスキルは一人一つ。確か邪神国には神が顕現したと聞く……。彼の力はその神から与えられたものではなかろうか……」
国王はなかなかに鋭かった。
「神から……。で、ではジェイド様は神の使徒様!?」
「うむ……。あの地には聖神教もあったはず。それを潰して邪神国を立ち上げたのだ。只者ではあるまい」
「あのスケベそうな男が~? 信じらんないな~……」
そう呟く王女を王は叱責した。
「バカ者。それすら相手を油断させる手段かもしれぬのだ。彼を敵に回したが最後、全ての命は泡のように消えるだろう。今回彼には世話になってしまった。何を要求されるか怖いが……従わなければならんだろうな……」
そこで王は態勢を崩した。
「こ、国王様!」
「む……。少し血を失い過ぎたようだ……。すまぬが肉を。回復し彼の帰りを待つとしよう」
「はっ!」
そして俺は……。
「とりあえず悲鳴が聞きたいから傷は治してやんよ。【エクストラヒール】」
「は、歯が……」
「さあ、これからお前に本当の拷問ってやつを味あわせてやるよ。ま、ゆっくり楽しんでくれ。ひはっ、ひははははははははっ」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
俺は何から始めようか嗤いながら伯爵を見下ろすのであった。
「そろそろ頷いてくれませんかねぇ? それとも……まだ私を楽しませたいのかな? いやぁ、さすが国王様だ。国民のために我が身を犠牲にするその姿勢……感服ですよ」
男はペンチのような器具で国王の歯をつまみ、残る最後の一本を引き抜いた。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ! ごふっ……!」
王の口内は紅に染まっている。歯がないせいか最早何を言っているのかもわからない。
これまでに王は散々痛め付けられてきた。最初に目隠しをされ、椅子に縛り付けられた。そして手足を固定され、まず爪の間に針を通される。全部の爪に針が通ると、今度はそれを軸にし、全ての指から爪が剥がされた。だがそれでも王は折れず、決して屈しなかった。
俺は今死にかけている王の後ろに立っていた。拷問伯爵がこれまでどんな拷問を王にしてきたか、俺は王の記憶を読んでいた。
(……ぬるっ。これで拷問伯爵とはなぁ……。俺んとこじゃ日常茶飯事だったぜ。まだまだ抉る所が残ってんじゃん)
それが率直な感想だ。
未だに首を縦に振らない王に伯爵が言った。
「まぁ、どうせ認めた所で助かりはしないのですがね。今頃王妃や王女も滅茶苦茶になっているでしょうしねぇ~」
「ひ……ひはふぁぁぁぁぁっ!!」
「ひははははっ、何を言っているかわかりませんねぇ~」
俺はこの温さに飽きてきた。
「もう良いだろ。【位置交換】」
「え?」
「ほ……」
「完全回復魔法【エクストラヒール】」
「むぉっ!?」
俺はまず王と伯爵の居場所を交換してやった。そして姿を現し王の傷を癒した。
「な、ななななんですかこれはっ!? 見えませんし動けませんよっ!?」
「お前、ちっとうるせぇから黙っとけ」
そう言い、俺は伯爵の口にトーキックを御見舞いしてやった。
「ぐぼらっ!? は、はははは歯がぁぁぁぁ……っ!」
伯爵の歯が全て折れ床に転がった。
「お、お主……誰じゃ?」
「初めまして、国王。俺はイージス大陸で邪神国デルモートを率いている国王ジェイドだ。あんたの妻と娘はすでに救出済みだ。今は改革派のアジトにいてもらっているよ」
「な、なんと! ぶ、無事なのか!」
「まぁ……な。大分汚されて壊れていたが治療してやったからな。ああ、ちなみに上で暴れていた奴らはもう城にはいないぞ。守旧派で残っているのはこいつと城にいなかった奴らだけだ。まぁ、そいつらも潰しに行くがな」
妻子の無事を知り王は安堵した。
「そ、そうか……。すまぬ、助かった……!」
「なに、構わんよ」
ここで俺は目の前にいる王を試す事にした。
「さて、あんた随分やられてたみたいだが……。今ならこいつに仕返しし放題だぜ? ちょっとやってみるかい?」
王は首を横に振った。
「……いや。私はいい。拷問されはしたが其奴も元は家臣だった男。やられてやり返していたらキリがないからの。妻子が無事で私も命が助かったのだ。私からは何もしない」
「そうか。ま、良いだろう」
とりあえずは合格だな。ここで感情に任せて憂さ晴らしするような王なら不合格だ。そんな奴は俺の作る世界に必要ない。
「じゃあ今から改革派のアジトに送る。そこで妻達と再会し、ゆっくり休むと良い」
「お、送る?」
「ああ。【転送】」
「うぉ……」
俺は王をアジトに転送してやった。
「歯らぁぁぁぁぁっ! わらひの歯らぁぁぁぁぁっ!」
「うるっせぇっつってんだろうが。歯くらいでガタガタ言ってんじゃねぇよ。お前にはこれから地獄が待ってんだからよぉ……ひひっ、うははははははははっ!」
「ひぃっ!?」
ちなみに目隠しはしていない。視覚を塞ぐ事は確かに有効だが、俺くらいのレベルになるとむしろ視覚で恐怖を与える方が有効となる。なんせ俺はイカれてるからな。ああ、楽しみだ。
一方、その頃王は。
「……ぉぉあ? ど、どこだここは?」
「「「「こ、国王様っ!?」」」」
「あぁぁぁぁ、あなたぁぁぁぁぁっ!」
「お、お父さま!? い、今どこから!?」
改革派の面々の前へと転送された王は即座に理解した。
「な、なるほど。送るとはこう言う意味だったか」
「国王様、まさかジェイド様に?」
「うむ。後一歩で死ぬ所だった。だが完全回復魔法とやらで治療されてな……」
「おぉぉぉっ! さ、さすがジェイド様!」
そこで王女が何かに気付いた。
「ち、ちょっと待って! あいついったいいくつスキルが使えるの!? 知ってるだけでも【転移】、【転送】、【透明化】に【聖魔法】……」
それに王妃が続く。
「【浄化】に【記憶操作】も使ってたわね」
さらに婦人達も続く。
「【飛行】、【気配遮断】。おそらく【剣術】も使えますね」
その場にいた皆は黙ってしまった。
「……少なくとも十以上は使えそうだな。この世界で人間が使えるスキルは一人一つ。確か邪神国には神が顕現したと聞く……。彼の力はその神から与えられたものではなかろうか……」
国王はなかなかに鋭かった。
「神から……。で、ではジェイド様は神の使徒様!?」
「うむ……。あの地には聖神教もあったはず。それを潰して邪神国を立ち上げたのだ。只者ではあるまい」
「あのスケベそうな男が~? 信じらんないな~……」
そう呟く王女を王は叱責した。
「バカ者。それすら相手を油断させる手段かもしれぬのだ。彼を敵に回したが最後、全ての命は泡のように消えるだろう。今回彼には世話になってしまった。何を要求されるか怖いが……従わなければならんだろうな……」
そこで王は態勢を崩した。
「こ、国王様!」
「む……。少し血を失い過ぎたようだ……。すまぬが肉を。回復し彼の帰りを待つとしよう」
「はっ!」
そして俺は……。
「とりあえず悲鳴が聞きたいから傷は治してやんよ。【エクストラヒール】」
「は、歯が……」
「さあ、これからお前に本当の拷問ってやつを味あわせてやるよ。ま、ゆっくり楽しんでくれ。ひはっ、ひははははははははっ」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
俺は何から始めようか嗤いながら伯爵を見下ろすのであった。
0
お気に入りに追加
1,051
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
へなちょこ鑑定士くん、脱獄する ~魔物学園で飼育された少年は1日1個スキルを奪い、魔王も悪魔も神をも従えて世界最強へと至る~
めで汰
ファンタジー
魔物の学校の檻の中に囚われた鑑定士アベル。
絶体絶命のピンチに陥ったアベルに芽生えたのは『スキル奪取能力』。
奪い取れるスキルは1日に1つだけ。
さて、クラスの魔物のスキルを一体「どれから」「どの順番で」奪い取っていくか。
アベルに残された期限は30日。
相手は伝説級の上位モンスターたち。
気弱な少年アベルは頭をフル回転させて生き延びるための綱渡りに挑む。
男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国
てりやき
ファンタジー
『魔法が存在して、男女比が1対999という世界に転生しませんか? 男性が少ないから、モテモテですよ。もし即決なら特典として、転生者に大人気の回復スキルと収納スキルも付けちゃいますけど』
女性経験が無いまま迎えた三十歳の誕生日に、不慮の事故で死んでしまった主人公が、突然目の前に現れた女神様の提案で転生した異世界で、頑張って生きてくお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる