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第5章 グラディオン大陸編
18 根本的な原因
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孤児院で暮らし始めて再び一ヶ月、職員全てが妊婦になっていたため、ナビリア商会から複数奴隷を購入し、新たな職員にした。三食昼寝付きの待遇は奴隷達にも評判が良く、もちろん給料もしっかり払っている。
「わ、私達奴隷なのにこんな貰えるんですか!?」
「す、すげぇ……。普通の仕事より倍以上貰えるなんて……」
「労働には対価を支払うものだ。お前達はそれだけの働きをした。これからも期待しているぞ?」
「「「「は、はいっ! ジェイド様っ!」」」」
いつからだろう。何となく疑問に思っていた。
「こぉらぁぁぁぁぁっ! なんっで俺が働かされてんだパァァァァァァァム!!」
「あ、気付いた」
「ふざけんなよ!? 俺は国王だぞ! こう見えて忙しいんだよっ!」
「は? あたしは妊婦だけど? しかもあなたが無理矢理種付けしたね。何? やっぱり捨てるの?」
「ぐっ……!」
ここ最近はいつもこうだ。パームは何かにつけ妊婦を強調し、俺を働かせる。しかも孤児院の運営費は全て俺のポケットマネーから支払われている。奴隷の購入費用は自業自得だから仕方ないとして、全員の食費やら給料、遊行費まで払うのはおかしいのではなかろうか。
「院長先生~、えっちぃ事しよ~?」
「任せとけ!」
何とも単純な俺だった。
俺は孤児達を愛でながら考える。
「何で孤児とかできるんだろうな。育てられないなら作らなきゃ良いのによ」
それを見ながらパームが言った。
「わからない? それしかやる事がないからよ。それに、戦があれば父親は息子に家督を譲るの。けど女の子はなにも得られない。皆が望むのは長男で、それ以外は必要とされないのよ」
「ああ、だから女の子が多いのか」
捨てられる子供の大半が女の子だった。俺に言わせたらなんて勿体ない事をと言った所だが、貧しく生きるもの達にはこれが当たり前となっているらしい。
「こんな可愛いのにな~」
「あぁんっ! 院長先生の愛を感じるっ!」
それはさておきだ。
「なぁパーム。いつから俺は院長になったんだろうな」
「このアジトを作った時からじゃない?」
「いやいや、パーム孤児院じゃんここ」
「ジェイド孤児院ってなんか流行らなそうじゃん。だから私の名前にしただけだし」
「人の名前を何だと思ってやがる」
孤児達にも奴隷達にも俺がここのトップだと思われていた。
「ま、今さら言っても仕方ないか。つーか最近新しい孤児やたら増えてね?」
「そうね。最初の三倍以上いるわ」
「ノートメアってそんな治安悪い国だっけ? 俺んとこのシーメルと取引してるくらいだから栄えてるかと思ってたわ」
パームが言った。
「栄えてるのは一部の人達だけよ。商人とか土地持ってる人とかね。野菜は足が早いから買ってもらえないし、材木もたんまりあるでしょ? 一般家庭はそれほど裕福じゃないのが現実よ」
「ほ~ん」
俺はこの現実がどうにかならないか考える。
「この国の特産品は?」
「特産品? ん~……なんだろ。思い浮かばないわね」
「は? なんか有名なモンとかねーの?」
「全く」
シーメルの奴らはノートメアから何を買い付けているのか気になった。
「ちょっと出てくるわ」
俺は気になった事は解決しないとスッキリしない性格だった。俺は孤児に愛をたっぷり注入し、シーメルへと向かった。
「おう、代表呼べ」
「あ、ジェイドはん! 代表なら事務所にいまっせ」
「わかった」
俺はシーメルの代表達が集まる事務所の場所を聞き向かう。
「お~、ジェイドはんやないか。どないしたん?」
「久しぶりだな。ちょっとノートメアの件でな。今時間良いか?」
「えぇけど? 何が聞きたいん?」
俺は代表にノートメアとどんな取引をしているか尋ねた。
「買ってない?」
「せや、うちらは売ってるだけであそこからはな~んも買っとらんで」
「んじゃ商人とか土地持ってる奴らは何で稼いでんだ?」
「ああ、商人にはうちらの商品を捌いてもらっとる。土地持っとる奴には酒を作らせとるんや」
以外と悪どい商売してんなこいつら。
「それじゃあノートメアは痩せ細る一方じゃないか」
「しゃあないやん。あそこから買えるモンは全部イージス大陸で手に入るからのう……。買ってやりたくても買う物がないんよ」
「なるほど……。これは思っていたより大問題だな」
「ん? ジェイドはん、今ノートメアにおるん?」
「ああ。孤児院で何故か院長になってる」
「……似合わんのう」
代表の顔が倍に腫れ上がった。
「まぁとにかくだ。あっちで何か作るから出来たら買え。良いな?」
「ば、ばがりばじだ……ぐふぅ……」
こうして俺は現状を把握し、孤児院へと戻った。
「おかえり、何かわかった?」
「……ああ。思っていたよりノートメアは酷い状況だって事がわかった。まさか売り物がなにもなかってとはな……」
「で、どうすんの?」
俺は頭を悩ませる。
「別に豊かになるだけならそこらにダンジョン作って潜らせれば良いだけだがよ、国同士の取引で一方的に吸い上げられる今の状況が気に食わん。ってかイージス大陸にはダンジョンやら魔の森があるからなんでもあるんだわ。あっちになくてこっちにない物なんて一つもねぇ」
「……なら何か作れば良いじゃない」
「簡単に言うなよ。全ての職人に謝れお前。簡単に誰にでも作れて売れるモンなんてそれこそ子供しかねーじゃん」
「あんた最低ね」
「うっせうっせ! ま、とにかくだ。何かねぇかちょっと考えてみるわ」
俺は自室に孤児を連れ込み、身体を交えながら何かないかと考えるのだった。
「わ、私達奴隷なのにこんな貰えるんですか!?」
「す、すげぇ……。普通の仕事より倍以上貰えるなんて……」
「労働には対価を支払うものだ。お前達はそれだけの働きをした。これからも期待しているぞ?」
「「「「は、はいっ! ジェイド様っ!」」」」
いつからだろう。何となく疑問に思っていた。
「こぉらぁぁぁぁぁっ! なんっで俺が働かされてんだパァァァァァァァム!!」
「あ、気付いた」
「ふざけんなよ!? 俺は国王だぞ! こう見えて忙しいんだよっ!」
「は? あたしは妊婦だけど? しかもあなたが無理矢理種付けしたね。何? やっぱり捨てるの?」
「ぐっ……!」
ここ最近はいつもこうだ。パームは何かにつけ妊婦を強調し、俺を働かせる。しかも孤児院の運営費は全て俺のポケットマネーから支払われている。奴隷の購入費用は自業自得だから仕方ないとして、全員の食費やら給料、遊行費まで払うのはおかしいのではなかろうか。
「院長先生~、えっちぃ事しよ~?」
「任せとけ!」
何とも単純な俺だった。
俺は孤児達を愛でながら考える。
「何で孤児とかできるんだろうな。育てられないなら作らなきゃ良いのによ」
それを見ながらパームが言った。
「わからない? それしかやる事がないからよ。それに、戦があれば父親は息子に家督を譲るの。けど女の子はなにも得られない。皆が望むのは長男で、それ以外は必要とされないのよ」
「ああ、だから女の子が多いのか」
捨てられる子供の大半が女の子だった。俺に言わせたらなんて勿体ない事をと言った所だが、貧しく生きるもの達にはこれが当たり前となっているらしい。
「こんな可愛いのにな~」
「あぁんっ! 院長先生の愛を感じるっ!」
それはさておきだ。
「なぁパーム。いつから俺は院長になったんだろうな」
「このアジトを作った時からじゃない?」
「いやいや、パーム孤児院じゃんここ」
「ジェイド孤児院ってなんか流行らなそうじゃん。だから私の名前にしただけだし」
「人の名前を何だと思ってやがる」
孤児達にも奴隷達にも俺がここのトップだと思われていた。
「ま、今さら言っても仕方ないか。つーか最近新しい孤児やたら増えてね?」
「そうね。最初の三倍以上いるわ」
「ノートメアってそんな治安悪い国だっけ? 俺んとこのシーメルと取引してるくらいだから栄えてるかと思ってたわ」
パームが言った。
「栄えてるのは一部の人達だけよ。商人とか土地持ってる人とかね。野菜は足が早いから買ってもらえないし、材木もたんまりあるでしょ? 一般家庭はそれほど裕福じゃないのが現実よ」
「ほ~ん」
俺はこの現実がどうにかならないか考える。
「この国の特産品は?」
「特産品? ん~……なんだろ。思い浮かばないわね」
「は? なんか有名なモンとかねーの?」
「全く」
シーメルの奴らはノートメアから何を買い付けているのか気になった。
「ちょっと出てくるわ」
俺は気になった事は解決しないとスッキリしない性格だった。俺は孤児に愛をたっぷり注入し、シーメルへと向かった。
「おう、代表呼べ」
「あ、ジェイドはん! 代表なら事務所にいまっせ」
「わかった」
俺はシーメルの代表達が集まる事務所の場所を聞き向かう。
「お~、ジェイドはんやないか。どないしたん?」
「久しぶりだな。ちょっとノートメアの件でな。今時間良いか?」
「えぇけど? 何が聞きたいん?」
俺は代表にノートメアとどんな取引をしているか尋ねた。
「買ってない?」
「せや、うちらは売ってるだけであそこからはな~んも買っとらんで」
「んじゃ商人とか土地持ってる奴らは何で稼いでんだ?」
「ああ、商人にはうちらの商品を捌いてもらっとる。土地持っとる奴には酒を作らせとるんや」
以外と悪どい商売してんなこいつら。
「それじゃあノートメアは痩せ細る一方じゃないか」
「しゃあないやん。あそこから買えるモンは全部イージス大陸で手に入るからのう……。買ってやりたくても買う物がないんよ」
「なるほど……。これは思っていたより大問題だな」
「ん? ジェイドはん、今ノートメアにおるん?」
「ああ。孤児院で何故か院長になってる」
「……似合わんのう」
代表の顔が倍に腫れ上がった。
「まぁとにかくだ。あっちで何か作るから出来たら買え。良いな?」
「ば、ばがりばじだ……ぐふぅ……」
こうして俺は現状を把握し、孤児院へと戻った。
「おかえり、何かわかった?」
「……ああ。思っていたよりノートメアは酷い状況だって事がわかった。まさか売り物がなにもなかってとはな……」
「で、どうすんの?」
俺は頭を悩ませる。
「別に豊かになるだけならそこらにダンジョン作って潜らせれば良いだけだがよ、国同士の取引で一方的に吸い上げられる今の状況が気に食わん。ってかイージス大陸にはダンジョンやら魔の森があるからなんでもあるんだわ。あっちになくてこっちにない物なんて一つもねぇ」
「……なら何か作れば良いじゃない」
「簡単に言うなよ。全ての職人に謝れお前。簡単に誰にでも作れて売れるモンなんてそれこそ子供しかねーじゃん」
「あんた最低ね」
「うっせうっせ! ま、とにかくだ。何かねぇかちょっと考えてみるわ」
俺は自室に孤児を連れ込み、身体を交えながら何かないかと考えるのだった。
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