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第4章 シーガロン大陸編

11 クソ領主登場

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「設置場所はここで良いですかね、奥さん」
「あ、もっと奥で! そ、そこにっ!」

 なんて言うサービスもしつつ、町の住人全てに商品が行き渡った。これはつまり住人全てが冥王教に入ったと言う事になる。薪代が浮いたお陰か、最近では教会に寄付にくる住人の姿もみられるようになった。少し前までは煙たがられていたのにこれは大きな進歩でもあった。

「あの、メンテお願いしても大丈夫でしょうか?」
「はいはい。希望日時は?」
「あ、明日の朝十時くらいで! その時間だと夫も仕事でいませんので……」
「畏まりました。では明日十時に伺わせて頂きます」
「お願いします!」

 サービスを受けた女性の大半がこうしてメンテを申し出てくる。魔導具には劣化防止も付けているので壊れるはずがない。女性達が言うメンテとは別サービスで行ったサービスの方なのである。ちなみに、どうしてもと言う客以外にはきっちり避妊をしている。中にはこんな女性もいた。

「だ、ダメって言ったのにぃ~……」
「奥さんが綺麗すぎて我慢できませんでした。せっかくですし……もう一度します?」
「……ダメ。約束破ったから五回はしてもらうからね。あと……避妊しちゃダメよ?」
「喜んで」

 こうして町にはベビーブームが巻き起こる事になる。

 そして最近は町の外からも注文が入る事も多くなった。だか、今さら他の町や村に行くのも面倒なので、品物は現地の商人に渡し運ばせていた。もちろん冥王教に入る事が購入条件だ。そして貴族には決して売らない。もし売ったら殺すとキッチリ脅しをかけている。今の所破った商人はいない。

「さて、そろそろかな」

 貴族に売らない事にした理由はちゃんとある。もちろん全ての貴族に売らないわけじゃない。自分でこの店まで足を運び、俺の面接に合格した貴族のみに売る。どうしようもないクソ貴族には絶対に売ってやらない。特にここの領主だ。民の事を第一に考えなければならない貴族が自分のために薪を買い漁るなど言語道断だ。

 他の町や村にも商品が普及し始めた頃、店に領主の使いと名乗る執事がやってきた。

「は、はい?」
「だーかーらー。売らないって言ってんだろ」
「な、なぜです? お金ならいくらでも……」
「金の問題じゃねぇんだよ。金で何でも解決出来ると思ってんじゃねーよ。生憎俺は金には一切困っちゃいねぇんだよ。ついでに女にもな。売る相手は俺が決める。貴族たからって上から見てんじゃねーよ。帰ってそうご主人様に伝えんだな」
「……そのまま伝えます。どうなっても知りませんぞ!」
「はっ、次は脅しか? 芸がねぇな。出直してきな、三流が」
「くっ! 失礼するっ!」 

 俺は使いの執事を一蹴し追い返した。実に気分爽快だ。

「ハーデス」
「ん」
「今夜か明日の夜、必ずこの店か教会に不審者が現れる。お前は教会を頼む」
「わかった~。殺していい?」
「ああ。出来るだけ残酷に殺ってやれ」
「りょーかい」

 そして予想通りの翌日深夜、店に不審者が現れた。どうやら店を燃やしに来たらしい。俺は不審者を全裸に剥き、木から逆さ吊りにして水をかけていた。

「さっさと吐いちまえよ。お前らをよこしたのは領主なんだろ?」
「し、ししししら……ない……っ!」

 この寒空の下で全裸に水。まさに地獄だ。おそらく夜風で身が凍みているだろう。身に染みるじゃない、身が凍みるだ。文字通り氷始めている。

「知らないか。そうか。じゃ次来る奴が喋るまで待つわ。お前らはそこで凍死でもしてな。じゃあな~」
「まっ……」

 俺は賊を無視し店の中で温まる。窓からは木に吊るされた下品なオブジェが見える。実に汚い。

「り、リーダー! さ、さささ寒くて死にそうです!」
「耐えろっ! 朝まで耐えりゃ太陽が……!」

 世の中そんなに甘くない。朝、シーガロンには本当の意味での初雪が降った。いや、吹き荒れた。猛吹雪である。

「あ~……、ありゃもう死んでるな。あ、割れたな」

 賊の凍った身体は重さに耐えきれず、膝から割れ地面に落下していた。さっさと言えば助かったのによ。バカな奴らだ。

 その後も何度か襲撃があった。もちろんその度に撃退し、同じ目に合わせてやった。

「懲りねぇバカっているんだなぁ~。何人寄越す気だよ全く」

 中には喋り始めた奴もいた。

「お、俺達は金で雇われただけなんだ! この店やあんたに怨みがあるわけじゃねぇっ!」
「雇われたね。誰に?」
「そ、それは言えねぇ……っ!」
「ならお前も死ね。命乞いなんぞで俺が許すわけねーだろ。助かりたかったら俺が求める答えを言え」
「ち、ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉっ! この悪魔がっ! ろくな死に方しねぇぞテメェェェェェェッ!」
「はん、お前みたいなゴミに心配される謂われはねぇよ。じゃあな」

 結局その男も死んだ。これで計三十人は死んでいる。死体はスキル【転送】を創り、お嬢のダンジョンに送ってある。ここの子供たちには見せられないからな。こんな汚いものを見たらトラウマ必須だ。

 そしてついに痺れを切らしたのだろう。 

「道を開けろっ! この愚民どもがぁぁっ!!」
「り、領主様だ! 領主様が町に来たっ!!」

 領主が私兵を引き連れ町を訪れた。私兵の数は百。

「シスター、子供達を教会から出すなよ」
「は、はい!」
「ハーデス。奴らが店の前まで来たら結界を張ってくれ。あの次元が違うようになるアレだ」
「りょーかい」

 俺はハーデスと店の前に立ち、ついに噂のクソ領主と対面するのであった。
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