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第4章 シーガロン大陸編

01 シーガロン大陸

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 超高速飛空艇を飛ばす事一日、俺達はグラディオン大陸をスルーし、シーガロン大陸へと到着していた。

「うぅぅ……さ、さみぃ……っ!」
「ミーニャは平気!」
「そりゃお前達は毛皮着てるからな……」

 どうにも我慢ならなくなった俺は【創造】でスキル玉を創り出しスキルを願った。

《スキル【環境適応】を習得しました》

 しばらくすると寒さにも慣れてきた。 

「ふう……、全く。一面銀世界とはな。何が平地は雪が積もらないだ。滅茶苦茶積もってんじゃねーか。あいつは後でヤキ入れだな」

 オーナーの話では雪が積もるのは山のみだったはず。だが今は大陸全土が雪に包まれている。気候変動でもあったのだろうか。

 そこは後で確かめるとして、俺は目的地である山脈に囲まれた盆地を探す。探すと言うか、すぐに見つかった。

「ここしかないだろうな」

 シーガロン大陸は中心部に高い山が並んでそびえ立っている。その中心部が円形の盆地になっていた。もしかすると元は一つの山で、あの盆地は火山の跡なのかもしれない。

「よっし、着陸するぞ~。どこかに掴まっておけよ~」
「がうっ!」

 俺は盆地の端にゆっくりと飛空艇を着陸させていく。着陸の風圧で視界はブリザードだが地面に降りられさえすれば良い。どうせ降りたら船は一度消すからな。

「よっし、着陸成功。ミーニャ、子供達は無事か?」
「がうっ。皆無事~」
「オーケー。じゃあ船を降りようか」

 俺は子供を抱えるミーニャをさらに抱え、スキル【飛行】で雪スレスレに浮かぶ。 

「さて、里に向かおうか。空から見た感じだと近くに建物が見えたから多分あそこだろう」

 俺は三人を抱えたままゆっくりと里に向かい飛んでいく。数分くらい飛んだだろうか。やがて簡素な柵に囲まれた集落が目に入った。入り口にはまぁまぁ立派な体躯をした白虎族のオス二人がこちらを警戒して立っていた。

「止まれ! 何者だっ!」

 俺は指示に従い空中で停止する。

「えっと……俺はジェイド。昔ここから拐われた白虎族の少女はいなかったか?」
「なに?」
「ほら」

 俺はマントの下からミーニャの顔を出して見せた。 

「うぉっ!? ま、ままままさか……ミーニャ……様?」
「あん? ミーニャ……様?」
「ま、間違いない! あの毛並みはミーニャ様だっ! す、すぐに長様に知らせなければっ!!」

 見張りの一人が集落の中へと消えていった。

「ミーニャ、お前もしかしてお偉いさん?」
「わからない。でもパパは里で一番強かった」
「……そうかぁ」

 やがて先ほどのオスを置いてきぼりにしながらさらに立派な体躯のオスがダッシュで駆け寄ってきた。

「あ、パパ」
「あれが?」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! ミーニャ! ミーニャァァァァァァァァァァッ!! ぬおあっ!?」

 ミーニャの父親は盛大に転び雪に埋まった。

「だ、大丈夫か?」
「ふんぬぅぅぅぅぅっ!」

 俺が心配して声を掛けるも、ミーニャの父親はがばっと立ち上がり再び駆け寄ってきた。

「あぁぁぁ……間違いない……! 五年前に行方不明となっていた我が娘……! ミーニャ! ミーニャ!!」
「ただいまっ、パパッ!」

 ミーニャは俺の腕から飛び跳ね父親の前に着地した。二人の子を抱えてだ。

「あぁぁぁ、ミーニャ……? ん? な、なんだ……そ、その両腕に抱えた小さい白虎は……」
「ミーニャとジェイドの赤ちゃん! この前産まれた!」
「な、なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 父親の叫び、いや、咆哮が周囲の山々に反響する。一部ではその咆哮のせいで雪崩が起きていた。

「あ、ああああかあか赤ちゃんだとぉぉぉぉぉぉっ!! ミーニャ! お前っ! まだそんな歳じゃない……」
「ん。四ヶ月前にきた。その前からもジェイドとはいっぱいしてる! ジェイド私の主っ!」
「あ、あああ主!? ほ、誇り高き白虎族が人間に従うばかりか人間の子を産んだのかぁぁぁぁぁっ!!」

 不味いな。父親の血管がもちそうにない。今にも血涙を垂れ流しそうだ。

「まぁまぁお義父さん。落ち着いて下さいよ」
「お、おおおおお義父さん!? き、貴様にお義父さんと呼ばれる筋合いはねぇぇぇぇっ! お、おおお俺の娘に滅茶苦茶しやがって……! ……コロス。俺の全力をもってぶち殺したらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ちょっと挑発してみたらミーニャの父親はどこぞの戦闘民族の様に気を練り始めた。

「パパ、やめた方が良いよ。ジェイドのレベルは一万以上だよ?」
「……な、なに?」

 父親の気が霧散した。

「い、今なんと?」
「一万。ジェイドのレベル。私もジェイドほどじゃないけど【限界突破】で今レベル三千はある」
「さ、ささささ三千!? あ、だからか! レベルを上げて成体になったんだな? じゃあスキルも全て……」
「ん。全部覚醒してる」

 父親は軽く深呼吸をし、俺を見る。

「さ、先ほどは済まなかったねぇ。ミーニャがクソ弱い人間に誑かされたのだと勘違いしてしまったようだよ。強いなら強いって言って下さいよ、ねぇ?」

 俺のレベルを知った父親はまるで借りてきた猫のように大人しくなってしまった。 

「いやまぁ……、別に自慢するほどでもないし? ミーニャの父親を暴力で屈服させるとか考えてもなかったもんで。あ、とりあえず雪歩きにくいんで消しちゃいましょう【紅炎】」

 俺は里の上空、中心部に近い場所を狙い紅炎を放った。すると里に積もっていた雪は瞬く間に溶け、地面はカラカラに乾いてしまった。

「なぁっ!? ゆ、雪が消えたぁぁぁっ!?」
「あれ? 不味かったですかね?」
「い、いや……。不味くはない、不味くはないぞ……うん。ジ、ジェイド殿と言ったかな? よ、ようこそ白虎族の隠れ里へ。む、娘の父として歓迎しますぞ」
「ああ、うん。ありがとう」
「ささ、立ち話もなんですし、是非とも我が家へ!」
「そうだな。ミーニャ、行こうか」
「がうっ!」

 こうして俺達は無事目的地へと辿り着いたのであった。
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