上 下
66 / 227
第3章 エンバッハ帝国編

15 狙い

しおりを挟む
 いよいよパーティーが始まる。俺はまず主催者として壇上からスピーチする事にした。

「って、ちょい待ちぃっ! なんで隣にシュヴァイト王国の女王がおんねんっ!?」
「……ぽっ」

 女王は頬を赤く染め照れていた。

「そりゃあ……良い関係になったからに決まってるだろう?」
「良い……関係? ま、まさかあんた!?」
「……大変美味でした」
「「「「やったんかいっ!?」」」」

 俺は隣にいた女王ミラを腕に抱える。

「ああやった! そしてこれからもやりまくる! このパーティーの目的、それはこの大陸を一つにまとめあげることだ!」
「な、なんだと!? それは宣戦布告かっ!」
「違う違う。別に国はいくつあっても良い」
「な、何を言いたいのかわかりかねるぞ……」

 俺は集まる王達に向かってこう言った。

「この大陸は他の大陸に比べたら小さいだろう? そして何よりこの大陸の人間は他の大陸の人間より弱い。これはあちらの大陸の事をよく知るシーメルの商人達ならわかるはずだ」
「……まぁ確かにのう。この大陸の人間は限界レベルが低い。あんな聖神教なんて言うボケが威張ってられたんもこの大陸の人間がクソ弱いからや」

 王達は何も言えなかった。これは、これまで聖神教こそが最強だと信じ込ませられていたからである。対し、シーメルの商人達は違う。表面上では関わりを保ちつつも、心底信じてはいなかった。

「俺は来るかもしれない他大陸からの侵略に備えるため、この大陸の意思を一つにまとめあげたいと思っている」
「どうするつもりだ? まさか、無理矢理武力でか?」
「武力で抑えたところで反発は起こる。ならなぜ反発が起こるか。それは各国に差があるからに他ならない。そしてそれ以上に民に差がある。これら全ての問題を解決するために……我ら邪神教は立ち上がった!」

 俺は力説する。

「邪神教は信者を等しく守り、貧しさや差別などをけっして許さない。貧しい者がいたら施し、差別があれば原因を取り除く! 邪神教団は聖神教なんていう似非宗教団体とは根本から違うのだ! 良い機会だ。ここに集まったみんなには俺のレベルを教えておこう。俺のレベルは……一万だ」
「「「「い、いいいい一万っ!?」」」」  
「そうだ。そして……俺には限界はない。無限に強くなれる。他大陸からの侵略? そんなもんクソだ。俺にはエンバッハ帝国だろうが世界だとうが対した差はない。俺は信者をどんな手を使ってでも守る。エンバッハがグラムヘイズに手を出した結果どうなったか、賢い貴殿方にはわかるはずだ。グラムヘイズはすでに邪神教団に入団済みだ。だから俺は誰からでも守るし、良い暮らしができるように手を差し伸べる。これが邪神教団の神、邪神デルモートの目指す世界だからだ」

 ここでだめ押し。邪神自らに登場してもらう。

「聞け人間。妾こそが唯一無二の神! 妾はこのジェイドの力でもって現世に顕現したのだ。ジェイドは神である妾の半身。ジェイドの後ろには常に神である妾がついておる。何もせず天界から人間を見下ろす神と妾は違うのだ! 妾はなにも与えない神を認めん。妾こそが人間に寄り添える神なのだ! 信者にはこのジェイドによる絶対的な守護を与えよう。皆で争いのない国を作っていこうではないか!」

 これにシュヴァイト王国女王が賛同する。

「私はすでにジェイド様のモノ。内にジェイド様の熱意をこれでもかと感じました。邪神教、素晴らしいではないですか。私はこの考えに賛同いたしますわ」

 そして貿易都市シーメルも賛同の意を表明する。

「レベル一万とかどの大陸にもおらんわ。邪神教、ええやないか。金ばかりたかってきた聖神教とは大違いや。ワシらは入団するで! 迷う事なんぞないわ。シーメルは邪神教一択や!」

 いきなり二国が落ち、残るモルーゲン王国とエンブラント王国は置いてきぼり感が否めない。

「で、では国はそのままに、我らは邪神教団に入れば争いはなくなると?」
「そうだな。邪神教は信者同士の争いも禁じている。破った場合は死あるのみだがね」
「ふむ。するとあれか、もしモルーゲンがシュヴァイトに戦を仕掛けたら……」
「だ、誰がするか! エンブラントこそグラムヘイズに仕掛けるだろうが!」

 なんか言い争いが始まった。

「あ~静まれ。どちらの場合も俺が相手になる。エンバッハの時は正式な戦で取り決め通り男だけ皆殺しにした。だが、信者同士の争いは違うぞ。信者が国として国に仕掛けた場合、その国は俺が地上から全て消し去る。仕掛けた方は全員、老若男女皆殺しだ。戦なんてバカな行為は許さない。国力の低い国なら入った方が安全だろう。何せ……どんな大国だろうと俺が相手になるのだからな」

 レベル一万の化け物が敵になる。これには残る二国も首を縦に振るしかなかった。

「……そうだな。平和が一番だな。うん」
「違いない。我らモルーゲン王国も邪神教団に入ろう」
「エンブラント王国もだ」
「ありがとう。だが言っておくがこれは強制ではない。信者になりたくないと言う民がいても仕方のない事だ。なので皆さんには信者になった者のリストを作成してきてもらいたい。協力してくれたら邪神教は貴国らの問題を解消するために動くと約束しよう」

 こうして、俺の力説でまず各国のトップが邪神教団に入った。この後、集まった者には極上の料理や酒が振る舞われ、皆満足して客室へと戻っていった。

 そして俺の部屋にはミラが来ていた。娘はもう寝かしつけてきたらしい。

「あぁっ、もっと深い繋がりを下さいませっ! 私、ジェイド様の子が欲しいですわぁっ!」 
「まだまだ。もっと楽しんでからな。簡単に妊娠させてしまったらしばらく抱けなくなるだろう?」
「そ、そんなに私を求めて……。こんな子持ちのオバサンなのに……」
「ミラさんは美しい。しばらくは帰しませんよ?」
「は、はい……っ。私もしばらく帰りたくありませんっ。妊娠するまで帰りませんわぁっ!」

 こうして、パーティーの夜は更けていくのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

最強魔法師の壁内生活

雅鳳飛恋
ファンタジー
 その日を境に、人類は滅亡の危機に瀕した。  数多の国がそれぞれの文化を持ち生活を送っていたが、魔興歴四七〇年に突如として世界中に魔物が大量に溢れ、人々は魔法や武器を用いて奮戦するも、対応しきれずに生活圏を追われることとなった。  そんな中、ある国が王都を囲っていた壁を利用し、避難して来た自国の民や他国の民と国籍や人種を問わず等しく受け入れ、共に力を合わせて壁内に立て籠ることで安定した生活圏を確保することに成功した。  魔法師と非魔法師が共存して少しずつ生活圏を広げ、円形に四重の壁を築き、壁内で安定した暮らしを送れるに至った魔興歴一二五五年現在、ウェスペルシュタイン国で生活する一人の少年が、国内に十二校設置されている魔法技能師――魔法師の正式名称――の養成を目的に設立された国立魔法教育高等学校の内の一校であるランチェスター学園に入学する。

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

へなちょこ鑑定士くん、脱獄する ~魔物学園で飼育された少年は1日1個スキルを奪い、魔王も悪魔も神をも従えて世界最強へと至る~

めで汰
ファンタジー
魔物の学校の檻の中に囚われた鑑定士アベル。 絶体絶命のピンチに陥ったアベルに芽生えたのは『スキル奪取能力』。 奪い取れるスキルは1日に1つだけ。 さて、クラスの魔物のスキルを一体「どれから」「どの順番で」奪い取っていくか。 アベルに残された期限は30日。 相手は伝説級の上位モンスターたち。 気弱な少年アベルは頭をフル回転させて生き延びるための綱渡りに挑む。

強制無人島生活

デンヒロ
ファンタジー
主人公の名前は高松 真。 修学旅行中に乗っていたクルーズ船が事故に遭い、 救命いかだで脱出するも無人島に漂着してしまう。 更に一緒に流れ着いた者たちに追放された挙げ句に取り残されてしまった。 だが、助けた女の子たちと共に無人島でスローライフな日々を過ごすことに…… 果たして彼は無事に日本へ帰ることができるのか? 注意 この作品は作者のモチベーション維持のために少しずつ投稿します。 1話あたり300~1000文字くらいです。 ご了承のほどよろしくお願いします。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

処理中です...