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第3章 エンバッハ帝国編

13 信者獲得のために

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 邪神に催促された数日、俺はどうやって信者を増やそうか考え、とある計画を立てた。

「パーティー……ですか」
「ああ。残ってる国のお偉いさんを呼んでパーティーを開く。俺達に悪意はないって事を知らしめなければならん。なら、直接見てもらった方が早いと思ってな」
「なるほど。それは名案に御座います。各国への招待状はこちらで手配しましょう。招待状は【エンブラント王国】、【シュヴァイト王国】、【モルーゲン王国】の三国でよろしいでしょうか?」

 そこで俺は首を傾げる。

「もう一つなかったか?」
「【貿易都市シーメル】ですね。あそこは国ではありませんし、商人ばかりの土地です。今回は呼ばなくても……」
「アホ」
「え?」

 俺はメイドに後ろを向かせ反省を促す。

「いいか、商人は各地を回るメッセンジャーだ。良い噂も悪い噂もまずは商人から流れる。スパイでもいれば話は変わるが、商人を蔑ろにするなど愚か者のする事と知れっ!」
「もっもっもっ! 申し訳ありませんっでしたぁっ!」
「それに、シーメルはこの大陸で唯一別の大陸と取引している国だぞ。むしろ他の国より丁重に扱うべきだろうが!」
「はっ、はっ……はぁぁぁぁいっ!」

 俺は最後に思いっきり反省させてやった。

「良いか、商人を舐めるな。シーメルに比べたら他の三つなどゴミに等しい。わかったら行け」
「も、申し訳……あ、歩けません……」

 俺はニヤリと嗤う。

「歩けないか……。そうか、ならもう少し反省していけよ。運んでやろう」
「あっ……。深く反省してしまいますぅぅぅぅっ!」

 その後、メイドは雫を垂らしながら多いに反省し、長期休暇に入ったそうな。

 それから一ヶ月後、各国に招待状が届いた。では反応を順に見ていこう。まずはエンブラント王国。

「陛下、いかがいたしましょう?」 
「うむ……。これにどういった意図が隠されておる……。まさか我らを集めて一網打尽に? むぅぅぅっ、読めん……」
「招待状には人数が記載されておりません。いっそ全兵を向かわせましょうか?」
「バカ者っ! それではエンバッハの二の舞ではないか! あのエンバッハですら全兵力をもってしてきた敗れたのだぞ!」
「ではどうするのです!」
「……信じるしかあるまい。行くのはワシ達王族のみとする。なお、末の子だけは体調不良とし残していく。もしワシ達に何かあった場合は頼んだぞ宰相……」
「……はっ!」

 次にシュヴァイト王国。

「女王陛下、エンバッハを滅ぼした者よりパーティーへの招待状が届いておりますぞ」
「あら、パーティー? 誘われているのは私だけかしら?」
「いえ、それが日にちと場所のみ記載されており、何人で誰がかは記載されていないのです」
「そう。宰相、これをどう読みますか?」
「はい。我が国は友好関係を期待すると親書を送っております。このパーティーはその答えではないかと」
「そうよね。こんな小さな片田舎の国なんて興味ないだろうし。それに、これは相手を知る良い機会です。パーティーには私と王女で向かいます」
「はっ!」

 そしてモルーゲン王国。

「陛下、これは罠でございます! もしこれに全兵をもってあたればエンバッハ帝国の再現となってしまうでしょう! 向かうなら少数精鋭で!」
「うむ。私も同意見だ。向かった先で全滅、その後奴らは国内を蹂躙する気だろう。こんな手に乗りはせんわ。向かうのは私と、守護騎士隊のみ。宰相、私達に何かあればすぐに国を捨てて逃げよ。良いな?」
「ははっ!」

 最後に、貿易都市シーメルの代表陣。

「パーティーか~、何人でも行っていいらしいで?」 
「お~、土産もくれるみたいやなぁ。どうする?」
「行くやろ当然! タダで飲み食いできて土産までもらえるんや。しかも、これは新しい取引先になる可能性すらある。行かな損やで」
「決まりやな。ワイら十人全員で行ったろか」
「「「「「おうっ!」」」」」

 ただの親睦会だとは思ってもらえず、各国は腹に一物を抱え、疑いながらパーティー会場であるエンバッハの首都へと終結する。日時は一番遠くにあるエンブラント王国の者が馬車でゆっくり来ても間に合う三週間後の昼。場所は旧エンバッハ帝国首都にある主城。各国はその日に間に合うように動き始めた。

 まず最初に着いたのはシーメルの運営陣十人。

「ようこそいらっしゃいました。此方に控え室がございますので」
「「「「ま、魔物!?」」」」

 俺はこの日に合わせて歓楽街から魔物の女達を呼んでいた。もちろん性接待などさせん。あれらは全て俺のモノだからな。精々が酌をさせるくらいだ。あとはまぁ目の保養でもしていってもらうつもりだ。

「ようこそ、シーメルの皆さん。俺がこの国の代表、ジェイドだ。来てくれてありがとう。是非楽しんでいってくれ」
「楽しむ? それだけ?」
「ん? それ以外に何があると? 俺は皆さんと親睦を深めたくてこのパーティーを開いたのです。裏なんてありませんよ。ああ、そうだ。皆さんに土産を」

 そう言い、俺はダンジョンで乱獲した希少金属をインゴットにしたセットをプレゼントした。

「こ、これはオリハルコンやんけ!?」
「こ、こっちはヒヒイロカネや!」
「アダマンタイトにダマスカス鋼?」
「い、良いんか!?」
「ええ。少ないですがお近づきの印に。もし良い関係になれるならば……安価で融通しても良いですよ?」

 商人達の目の色が変わった。

「契約しとこか。ワシらはこの国と国交を結ぶ。そっちは何を望む?」
「そうですね。特にはないのですが……、俺は邪神教徒でしてね。こういった希少金属が手に入るのも邪神様のお陰、よろしければ邪神教に入団していただければと」
「邪神教? まぁ……、ワシらは神より銭やからなぁ。信心なんて銭にもならんしなぁ……」
「そう言わずに。もし入団していただけるならいくらでも力になりますよ? 例えば……月に百億ゴールドの支援など……」
「よっしゃ! ワイらは今日から邪神教徒や! これから仲良うしような!」

 さすが商人だ。割りきるのが早い。

「ではこちらにサインを。信者が一人増す毎に一万ゴールド上乗せさせていきます。集めれば集めるほど儲かる。邪神様は素晴らしいでしょう?」
「一人につき一万ゴールド!? よ、よっしゃ! 帰ったら市民全員口説きおとしてくるわ!」
「よろしくお願いいたしますね。ではパーティー会場へどうぞ。美味い食事に美味い酒、美しい女性との会話をお楽しみ下さい。ああ、一つだけ。女性は美しいですが全員Sランク上位に属する魔物。くれぐれも手は出さないで下さい。命の保証はできかねますので」
「「「「は、ははは……」」」」

 こうしてシーメルの商人に続き、続々と各国の代表が訪れるのであった。

 
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