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第3章 エンバッハ帝国編

10 新たなスキル

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 スキル玉は保管しておこう。そう思った俺の考えは地下六十一階層に下りてからすぐに霧散した。

《スキル【テイム】を習得しました》

「おぉぉぉ……御褒美だ! これはここまで耐えた御褒美に違いないっ!」
《《》》

 地下六十一階。そこには人の形をした魔物の町があった。しかも全員恐ろしいまでに美しい。俺はこの状況を見るなり、スキル玉に手を伸ばしていた。

 スキル【テイム】は魔物を使役できるようになるスキルだ。どうにかこの魔物達を仲間に出来ないかとスキル玉に願った結果、スキル玉が自動で最適なスキルをくれた。中々優秀な玉だ、


《いらっしゃいませ~。お兄さんカッコいいですね! 何飲まれます?》
「この店で一番高い酒持ってこんか~い! あ、後女の子全員集めて。お前ら全員飲み放題だ!」
《《》》

 ここは天国か。

《お兄さんどこからきたんですか~?》
「あん? 地上からに決まってるだろ~?」
《ですよね~。あはははは》

 ヤバい。マジで楽しい。こんな店に入るのは極道時代に兄貴がシノギでやってたスナック以来だ。

「あ、そうだ。ここ料金ってどうなってんの?」
《ウチは安いですよ~。一時間セットで四百ゴールドです》
「……」

 俺は聞きなれた説明に危うさを感じた。だが良い。金なら腐るほどある。

《お兄さんもしかして~……ボッタクリだと思ってます~?》
「はははは、まさか。楽しい時間は金に変えられない。そうだろ? 飲め飲め! 飲まないなら口移ししてやるぞ~?」
《きゃ~! お兄さんそれ別料金~!》
「はははははっ! いくらでも払ってやるぜぇぇぇっ!」

 その後、キッチリ本番までし、店が閉まると言うので俺はチェックした。

《ありがとうございました~。こちらお会計になりま~す》
「ん。……一、十、百、千、万、十万、百万……一千万。四千万か。ほい」
《……へ?》

 俺は普通に四千万ゴールド支払った。円換算で四億。馬鹿げた金額だが、今の俺には端金でしかない。

《あ、ありがとう……ございました~》
「おう。いやぁ、楽しかったよ。じゃあな~」

 魔物達はあっさり金を支払った俺を見送り、似たような店を開いている魔物を集めすぐに動き出した。

《ついにきた獲物っ! あいつから根こそぎ奪い尽くすわよみんなっ!》
《《》》

 一方の俺はそんな事になっているとは露知らず、宿屋に入り女将を所望していた。

《これは特別ですよ? 今晩だけのサービス。良いですね?》
「ああ、金ならいくらでも払う。今晩って言うかもう朝だけどね。夜まで頼めるかな?」
《畏まりました。では……ご堪能あれ……》

 一ヶ月。俺は一ヶ月の間で地下六十一階を全て制覇し、全ての魔物を孕ませ終えた。消し飛んだ金は二百億ゴールド。総資産の一割にも満たない額で俺は楽しみまくった。だがまだテイムはしていない。確かに美人揃いだったがどうしてもと言うほどではなかった。



 地下六十二階層へと向かう俺をお腹を大きく膨らませた魔物達が総出で見送ってくれた。

「……ダンジョンコアを破壊するのはやめよう。ここもなくなってしまうからな。うん、また来るとしよう」

 続く地下六十二階層も夜の街だった。ちなみに上が飲み屋だとするとここは風呂屋だった。

《お兄ちゃん……、気持ち良い~?》
「……っ! 最高だぁぁぁぁっ! 【テイム】!」
《え? あ……お兄ちゃん!》

 俺は小さい魔物を即テイムし、持ち帰った。場所はエンバッハ帝国の村があった場所。今ここは無人の村になっている。そこにテイムした魔物達の楽園を作る事にした。

《お兄ちゃん、ここに住んでいいの?》
「ああ、ここにお前達のための町を作ってやるからな~。全部俺に任せておけ!」
《お兄ちゃんっ、ありがとうっ!》
「くぅぅぅぅっ、尊いっ!」

 それから数ヶ月かけ地下六十二階層から六十九階層を回った。その数ヶ月でテイムした魔物の数凡そ五千。その五千体の魔物で俺専用の天国をエンバッハ帝国の僻地に作りあげた。

「クイーン。ここはお前に預ける。ここは俺専用の歓楽街だ。もし野郎が来たら遠慮なく殺せ」 
《お任せ下さい主様。私達の操は主様のみに立てております。他の男などゴミ虫です。眼中にございません》
「頼んだぞ」  

 地下六十階層の魔物はSランクとかそんな範疇にないくらい強い。仮にこの魔物でエンバッハを攻めさせていたら一瞬で壊滅できるレベルにある。しかもそんな魔物はこれから俺の子を産む。これは、ここに地上最強の軍隊が誕生したと同義でもあった。

 俺は十分この階層を堪能したのでいよいよ最後のボス部屋に向かった。

《あら、いらっしゃい。ここまで辿り着ける人間がいたなんて驚いたわぁ》
「……おぉぉぉ……」

 地下七十階。ボスは九つの尻尾を持つ狐、九尾だった。九尾はキセルをふかしながら俺をじっくりと観察している。

《兄さん、あっちと遊んでみるかえ? 快楽地獄、精魂尽き果てるまで搾ってあげますわぁ》
「いや、とりあえずスキル玉だけくれ」
《え? あ……そんな……!》

 俺は一度九尾を倒しスキル玉をゲット。そして九尾を町に送り、再びボス部屋に入り直す。

《あら、いらっしゃい。ここまで……》

 以下同じセリフなので割愛する。俺はまずボスである九尾をテイムした。

《旦那様ぁっ、あちきは永遠に旦那さまの女でありんすぅぅぅぅぅっ!》
「やっべぇ……。こいつはマジやっべぇ……。おそらくこの階層でほとんどのチャレンジャーは終わるんだろうなぁ……。本当によく考えられてんぜ、このダンジョンはよ。ま、俺には御褒美でしかねぇけどな」

 俺は二体目の九尾を快楽で倒し、次の階層へと向かうのであった。






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