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第3章 エンバッハ帝国編

07 二人なら楽勝?

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 ミーニャがあまりにも簡単に敵を倒すため、ダンジョン再突入から一週間で俺達は地下四十階に辿り着いていた。

「ミーニャ、試しにボスを一人で狩ってみるか?」
「がうっ! ミーニャ、ボスかる!」
「わかった。ならミーニャに任せるよ」

 今のミーニャはレベル350。この階層にいる魔物の平均レベルが300くらい。まぁこれならミーニャ一人でもボスは倒せるだろう。

 俺達は意気揚々と扉を開き中を覗く。そして音速で扉を一度閉めた。

「……あるじ、ミーニャやっぱりいい」
「そう言うなよ。これも修行だ。頑張れミーニャ!」
「いやっ! あれ、きもちわるい!!」

 俺達が扉の隙間から僅かに見たもの。それは巨大なハエだった。しかも床にはそいつが産んだだろう蛆虫がうねうねと這い回っていた。

「あるじ、たたかってない。あれ、あるじにゆずる!」
「いやいや、修行だから」
「ミーニャもうじゅうぶん! でもあれ、むり!」

 ミーニャにも嫌いなモノがあったようだ。

「俺だって嫌だわ……。うっ、昔夏場に死んで蛆虫だらけになってた奴を思い出したわ……」

 中々事務所に来なかった兄貴を迎えに部屋に向かった時の事を思い出した。部屋に近付くと滅茶苦茶嫌な臭いがしたもんだ。扉を叩いたら中から蝿が飛び回る音が聞こえたし、開けたら大量のハエに襲われたんだ。兄貴は白骨化した頭に鉈がくいこんであり、恐らく抗戦中のヒットマンに殺られたのだろうと思った。だが、それより兄貴の身体にうねうねと動く白い蛆虫が無数に張り付いていた事に俺はショックを受けていた。

「うぅ……、嫌な記憶がよみがえってきたわ。もし死んだらあれに身体中の肉食われて卵産み付けられんのか……」 
「あるじ、きもちわるい……」
「俺だって気持ち悪ぃよ! ったく、マジでここ作ったやつ最低だな」

 中に入らない事には攻撃が出来ない。隙間から紅炎を放ってみたが炎は出なかった。

「くそ……。入るしかないのかよ……」
「あるじ、がんばる!」
「だぁぁもうっ!」

 俺は考える。出来れば一瞬で終わらせたい。

「後二つあるスキル玉……ここで使うか」

 俺はスキル玉を取り出し欲しいスキルを思い浮かべる。

《スキル【一撃殺虫】を習得しました》  

「よし、これで一網打尽にしてやらぁっ!」
「あるじ、いまのなに?」
「秘密兵器だ。お前に使わせようと思っていたが、お前まだ覚醒してないスキルあるし当分必要ないかと思ってな。じゃ殺ってくるわ」

 俺は布で口元を覆い扉の中に入った。そしてその数分後、再び扉を開きミーニャを中に招く。

「終わったぞ、入ってこいよ」
「え?」

 ミーニャはそんなバカなと思い中に入る。

「きもちわるいのいない! あるじなにした!?」
「ふっ、虫には殺虫剤だ。触りたくもなかったから中に入ってからすぐ殺虫剤を散布したった」

 そう、俺は中に入ってすぐに両手から殺虫剤をジェット噴射した。スキル【一撃殺虫】はどんな虫だろと一撃で殺す。しかも大気中を漂うため、虫は俺に近付けもしない。これがものの数分で終わった理由だ。

「あるじ、ずるい」
「賢いと言え。ほら、宝箱回収してこい、ミーニャ」
「がうっ」

 俺は巨大蝿の宝箱を開く。

「スキル玉ゲット。これでまた在庫は二つだな。出来れば残しておきたいが……どうやらこうやって使わせながら進ませるようなダンジョンらしい。本当に嫌なダンジョンだ」 
「あるじ! はこあつめた!」
「うし、なら二人で開けていくか」
「がうっ」 

 俺達は膨大な数の宝箱を延々開いていく。これだけ蛆虫がいたと言う事だ。実に気持ち悪い。倒すより宝箱を開ける方が面倒だなんて皮肉なもんだ。

「あるじ、ここ、なんかへんなにおい。はやくつぎいく!」
「あ~、無香タイプにしておけばよかったかな。おっと、これで最後だ。さ、次に進むか」

 こうして俺達は地下四十階層を攻略し、次に進んだ。

 地下四十一階。今度はゴーレムの階層らしい。岩や鉄、他にも何やら硬そうな金属で出来た様々なゴーレムがロボットのように襲い掛かってくる。

「ミーニャ、殺るか?」
「がうっ! これならきもちわるくない! ミーニャやる!」
「おう、なら頑張ってくれ」
「あぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!」

 敵のレベルが高くなって来たため、今の俺では倒してもスキルは奪えない。なので全くやる気がなくなってしまっていた。

「まぁ、ハエのスキルとかいらないんだけどさ。倒しても得たのがスキル玉だけってのがなぁ」

 地下四十一階は迷宮のように入りくんでいた。その行き止まり地点にはワープポイントがあり、それをゴーレムが守っている形になっていた。

「……めんどくさ」 
「あるじ、かいだんまだ?」
「ああ、アホみたいに広いからまだまだだ」 
「……ミーニャ、ここきらい」
「同感だ」

 オートマッピングで確認しながら進むが、とにかく広いし、階段に辿り着かない。もういっそ壁を壊して進もうかと考えたが、壁は傷一つつかなかった。

「あるじ、ダンジョンのかべはこわせない」
「……そうみたいだな。はぁぁぁ……」

 その後もワープに迷わせられながらも四十一階を攻略し終えた。

「……またか」
「あるじ、ミーニャもうかえりたい」
「同感だっ!」

 地下四十二階も迷宮だった。俺達はボス部屋のある階層まで無心で攻略を続けるのであった。
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