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第2章 改革

16 勧誘

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 俺はミーニャに服を選ばせている間、オーナーと並びソファーに座っていた。

「いやぁ、こんな大口は久しぶりでした。ここ最近ではあなた様が一番のお客様でしたよ」
「……公爵婦人よりもか?」

 そう言った瞬間、オーナーの雰囲気が一変し、裏の顔を覗かせはじめた。

「さぁ、なんの事でしょうか。私にはサッパリですな」 
「ネタは割れてんだ。傘下のいくつか潰れてただろ? あれは俺が殺った」
「なっ!?」

 オーナーはソファーから立ち上がった。

「テメェ……、何モンだ! 国の犬か!」
「違うね。それなら公爵婦人の名を出すのはおかしいだろう? なにせ公爵婦人は国王の実弟の妻。秘密裏に処理しているはずだろう」
「これは違うってのか?」
「今日来たのはただの買い物だ。いや、本当は公爵婦人のスキャンダルを握ろうとして来たんだけどな? あまりに商品が素晴らしかったから夢中で買い物しちまった。それだけだ」
「スキャンダル? テメェ……何嗅ぎ回ってやがる……」

 俺はオーナーに言った。

「お前が公爵婦人とつるんでいるのは後ろ楯が欲しいからだろう? 違うか?」
「……関係ねぇ」
「俺は公爵婦人のスキャンダルを掴み、公爵に邪神教の素晴らしさを叩き込みたい」
「邪神教……? テメェ……邪神教徒か」
「ああ。公爵以外の貴族はすでに落ちた。残す公爵にさえ首を縦に振らせればこの国の国教は邪神教となる。そうなった暁には……お前の組織、応援してやらない事もない」
「……は? テメェ……本気か?」
「マジだ。今日の取り引きで俺はお前を気に入っちまったようだ。俺も昔は散々悪どい商売してきたからよ」
「あん? 例えば?」

 俺は過去を振り返った。

「そうだなぁ……。例えば二束三文の骨董品を高く売り付けたり、女を借金地獄に叩き落として風俗やらせたり、あぁ、ここじゃ魔法があるから必要ないかも知れないが、健康な臓器を売買してたりもしたな」
「ご、極悪人じゃねぇか!?」
「まぁ、そんな時代もあったって事だ。で、そんな過去があるから俺はお前をそんな悪人とも言いきれねぇ。できれば仲間にしたいくらいだ」
「……信用ならねぇ。お前は傘下の組織を潰した野郎だ」
「使えない傘下なんていくつあっても無駄だろうよ。ここの場所を売るような奴らだぞ? まぁ、血樽魔の刑にしてやったが」
「あ、ありゃお前が殺ったのか!? 生首並べるとかキチガイにも程があるぞ!?」
「遊び心だ。中々ここに辿り着けなくてイラついてたのもあるがな」

 オーナーは困惑していた。

「国教は最初の一歩にすぎん。ゆくゆくは国を盗る。そしたらお前らは国公認の闇組織だ。今よりもっとやり易くなるだろう。だが、このまま公爵婦人の味方をするなら残念だが消えてもらうしかない。長い目で見た時、どっちが得かは商人のお前ならわかるだろう?」
「……その話が本当ならな。お前にそんな力があるのか?」
「ふむ。もっともな質問だ。そうだな、どうすれば俺の力に納得できる?」


 オーナーは笑いながら言った。

「金だ。何をするにも金が大事だ」
「そうだな」
「二百億、二百億で公爵婦人の情報を売り、なおかつハメるまで協力してやる。国教になったら三百億、国を盗ったら五百億だ。それで俺達はお前の下になってやる」 
「計一千億か。なら……このドラゴンの核十個で良いか?」
「なっ!?」

 俺は男の前にダンジョンで得たドラゴンの核を十個並べて置いた。

「ドラゴンの核……だとぉっ!? お前……、いや! あなた様はドラゴンスレイヤー!?」
「あん? それが何かは知らないが、ドラゴンなら百体以上は狩ってるな」
「ひ、ひゃ……」

 男の顔が青ざめ、オーナーの顔に戻る。

「も、もしかして……肝とかもあったり……?」
「肝も牙も鱗も翼も爪も全部持ってるぞ」
「……はっはっは! いやぁ~、あなた様も人が悪い! それならそうと最初に言って下さいよ~。あ、一千億とか冗談です。公爵婦人の件も全面的に協力致しましょう!」
「ど、どうしたんだ急に……」
「ドラゴンを単独で狩れる人間なんて敵に回したら最後じゃないですか。あなた様とは良い関係を築きたく……」
「変わり身はぇぇなぁ……」
「商人ですから!」

 話はまとまった。国を盗った後に迎える予定が今すぐ傘下になってしまった。

「あ、今日のような商品が入りましたら最優先でお届けにあがりますので。近々入荷予定が」
「初モノだろうな?」
「ええ。我が商会専用の飼育場で生産しておりますので。あ、場所をさすがに勘弁して下さいよ? 商売ですので」
「わかってるよ。他には絶対売るなよ? 全部俺が買い取るからな」
「好きですねぇ~旦那も」
「あれは味わったら抜け出せない薬みたいなもんだからなぁ~。やると生きる活力が沸く!」
「ほっほ。では詳細は数日後、商品受け渡しの際に。場所はどうしましょう?」
「そうだな。王都に屋敷を買う。扱ってるだろ?」
「もちろんです。では下見に参りましょうか」
「ああ」

 話がまとまった時、ミーニャが新品の服を着てやってきた。

「あるじ! ミーニャこれがいい!」
「オーナー、あれも頼む」
「ありがとうございます!」

 この後、俺はオーナーに案内され今すぐ住める状態の屋敷に向かう。もちろんその場で購入し、その日の夜、俺はミーニャとベッドに入った。

「あるじ! もっかい!」
「くっ……尊い……!」

 相手は獣人、体力もかなり多い。俺はミーニャが疲れて眠るまで求めに応じたのであった。 
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