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第1章 再誕

12 対碧の騎士

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 全ての聖騎士を屠り、俺は夜営地にいた碧騎士の下へと向かった。

「ん? 誰……?」
「邪神教団、ジェイドだ。碧騎士【ウッド】だな。恨みはないがその生命……刈り取らせてもらうぞ」

 俺は地面に向かい血にまみれた剣を振った。

「邪神教団? ははっ、弱小組織の弱小団員が僕の生命を刈り取る? ははははっ、笑えない冗談だね」
「冗談じゃないからな。お前が連れてきた奴らは全員あの世で待ってるぜ?」
「……一万人を殺ったのか。ま、それくらい僕でも出来るけどね」

 そう言いウッドは身体に風をまとい、空中へと浮かび上がる。

「良いよ、やろうか。先手は君に譲ってあげるよ。この風をまとった僕に何か攻撃出来るならやってみれば?」
「……良いんだな? 後から泣いても知らねぇぞ?」
「泣く? 泣くのはあんただよ。初撃が通じなかった場合、僕の風であんたの全身を切り刻むんだからさぁぁぁぁぁぁっ! 来いよ! 邪神教徒っ!」

 そう叫びウッドはその全身を暴風で覆った。仮に弓矢で攻撃した所で奴の身体には届かないだろう。

「じゃあ先手もらうわ。【魅了】」
「……え?」

 ウッドの瞳が濁る。ウッドは俺の魅了を食らい、魅了状態へと陥っていた。

(な、なんだよこれっ! ぼ、僕の身体どうなっちゃったんだよっ!)
「まずその邪魔な風を止めな」

 俺がそう命令すると、ウッドはまとっていた暴風をピタリと止めた。 

(な、なんで奴の言葉に従ってんの僕の身体っ! くそっ! 身体がいうことをきかないっ!)
「くくっ、良いザマだな。じゃあ続いてその邪魔な鎧も脱いでもらおうか」
(や、やめろぉぉぉぉっ! 脱ぐなっ! 脱ぐな僕の身体ぁぁぁぁぁっ!)
「ああ、服まで全部脱げよ?」
(そ、そんなっ……!)

 ウッドは俺の命令に忠実に従い、鎧も服も全て脱ぎ捨て全裸になった。

「お前……女だったのか?」
(うわぁぁぁぁぁぁっ! 見るなっ! 見るなぁぁぁぁぁぁぁっ!!)

 今から殺す相手がまさか女の子だったと知り、俺は悪い虫が出た。

「そうかそうか。女の子か」
(ん? あ、あいつ……なんで自分も脱いで……。い、いや……ま、まさか……! や、やめろぉぉぉぉっ! そんなの近付けるなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!)

 俺はそのまま近づき、ウッドを鑑定した。

「なるほど。名前は【リーシャ・ケンウッド】な」
(あぁぁぁぁ……、いやだ……! いやだぁぁぁぁっ!)
「ここには誰も助けに来ねぇよ。今からたっぷり可愛がってやるからよ。後ろ向いて尻を突き出しな」
(や、やだやだやだぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 僕にそんなの擦り付ける……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!)

 夜の森に淫らな水音が響き渡る。それは朝方まで続けられた。

(うぁ……、もう……やめて……)
「くくくっ、中々良かったぞリーシャ。お前の初めては俺だ。邪神教徒の俺がお前の初めての男だ。どうだ? 悔しいか?」
(うぅ……うぅぅぅっ!)

 俺は置いてあった剣を握り締め、ウッドに話し掛ける。

「魅了解除」
「あ……、あぁ……ぁぁ……っ! な、なん……で……」
「さあ、選択の時間だ。死ぬか邪神教徒になるか選べ」
「……え……っ」

 ウッドは問い返す事しか出来なかった。

「このまま殺すには勿体ないからなぁ。俺は小さい女が大好きなんだよ。邪神教徒になって俺に従うなら殺さないでおいてやるよ。生きる道を選ぶか、それとも聖神教の敬虔な信者として死ぬか選べ」
「ぼ、僕は……っ、し、死にたくない……っ! た、助けて……っ!」

 ウッドは命乞いを始めた。 

「せ、聖神教に入ったのだって……! 強ければ何でも許されるから入ったんだっ……! なのにアレしろコレしろって……! 僕はのんびりだらだらと暮らしたかったんだっ! なのにこんな森に送られて……!」
「あ~、そう言うのは別に聞きたくねぇよ。同情もしねぇし」
「だ、だからっ! 助けてって言ってる! 邪神教徒にもなるし、あんたに従うから!」
「じゃあ……聖神教を裏切るんだな?」
「あ、ああ……」

 俺はニヤリと嗤った。

「まぁ良いだろう。じゃあ邪神教の入門試験だ。お前が自分で動いて俺から種を搾り出してみせな」
「んなっ!? ……わ、わかったよ……。けど……僕初めてだから下手でも文句言うなよっ!」
「ああ」

 こうして碧騎士ウッドことリーシャは聖神教を裏切り、邪神教徒となった。なお、入門試験はパーフェクトだった。

「ま、魔王様! 御無事でしたか!」
「え? ジェイド魔王なんて呼ばれてるの? あはははっ、ウケる~」
「おや? ジェイド様……。そちらの方は?」

 俺はリーシャを連れアジトへと帰還した。リーシャはもう碧の鎧は着ていない。普通の服を着た普通の少女になっている。そして何故か抱きついて離れなくなっている。

「こいつは碧騎士ウッドだった者だ」
「……え? えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
「ジェイド~、あいつうるさい」
「ああ、全くな」

 モーリーはもはや何が何だかわからないと言った様子だった。

「な、なんでこのアジトに連れて来たのですか!? 我々のアジトの場所がバレるじゃないですか!」
「あぁ、リーシャは俺の熱心な勧誘を受け邪神教徒になったんだよ」
「へへへ~、すっごく熱心な勧誘だったよ~。僕あんなにされたの初めてだった!」
「よ、四騎士の一人が……じ、邪神教徒に? あ……あぁぁぁっ! さすが魔王様ですっ! まさか宿敵を仲間にしてしまうなどっ!」
「まぁな。じゃあ俺は部屋でこいつに邪神教とはなにかをたっぷり教え込むからよ。しばらく誰も近付けさせんなよ?」
「え? まだするの? もうっ、ジェイドは本当に僕の事好き過ぎ~」

 そう告げ、俺達は自室に籠った。一人残されたモーリーは野望に燃えていた。

「聖女も死に、一万の聖神教徒も死んだ。そして四騎士の内の一人が我らの仲間に……! これは我ら邪神教が時代の流れに乗ったという事! 邪神様っ! ついに我らが悲願、打倒聖神教が叶う時がきましたぞっ! 魔王様を与えて下さりありがとうございますっ! ははっ、ははははははっ!!」

 モーリーが邪神に感謝を捧げているその時、俺はリーシャに快感を与えていたのだった。 
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