仲間に裏切られた勇者、事実を知り奮い立つ! ~世界を救う勇者アインの物語~

夜夢

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第1章 はじまり

第27話 決戦

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 帝都に向かい進む事半月、二人はついに皇帝エンドリクセンと邂逅を果たした。

《グフッ……グフフフフッ! ニクニクニクゥゥゥゥゥゥゥッ!》
「「「うわぁぁぁぁっ! 放せ化け物ぉぉぉっ! ぎあぁぁぁぁぁぁぁっ!」」」

 まるで山のような巨体を揺らし、滝のような唾液を垂らしながら人間を食べる怪物を見たリーリエは、そのあまりにおぞましい光景に眉をひそめた。

「あ、あれが皇帝……? 生きたまま人間を丸呑みに……うぅぅ……」
「あれは……もう完全に呑まれているな。自我すら保てていないようだ」

 エンドリクセンは言葉もたどたどしく、ただ食べる事だけを繰り返していた。食べる快楽に取り憑かれ、周りが見えてすらいない。

《アァぁァァあ……ッ! モットニクダァァァッ! ドコダニクゥゥゥゥゥゥゥッ!!》
「ア、アインさん……」        
「ああ、あれを倒せば帝国が平和になる。ここは俺がやろう。リーリエはどこか物陰に隠れてろ」
「は、はいっ」

 自我を保てていないエンドリクセンは何をするかわからない。そこでアインはリーリエをエンドリクセンの前に出さないようにした。

「エンドリクセン!!」
《ガァ……? ニ、ニクダ……! ニクガキタ!! ブホホホホホホッ!》
「スキルに呑まれたか! 貴様……何人食った!」
《……ニクゥゥゥゥゥゥゥッ!》

 もはや会話にならないほどエンドリクセンは食に対して執着していた。アインは聖剣デュランダルを抜き、エンドリクセンに向かい構える。

「もはや話にもならないか。こいよエンドリクセン、ここで貴様を終わらせるっ!!」
《ガァァァァァァッ!!》

 食糧を見たエンドリクセンはその巨体を揺らしながら真っ直ぐアインに向かい突進してくる。だがその動きは鈍重で、野生の動物と変わらなかった。

「はぁっ!!」
《ガァッ!?》

 アインは素早くエンドリクセンの脇を駆け抜けつつ、まず丸太のような片腕を斬り落とした。

《ガァァァァァァァッ!? イタイィィィッ!》
「痛みを感じるのか。貴様に生きたまま食われた者達はそれ以上の苦しみを味わったはずだっ!」
《グゥゥゥ……サイセイ……!》
「なっ!?」

 切り口からエンドリクセンの腕が生えてくる。そしてエンドリクセンはそのまま殴りかかってきた。

「再生できるのかっ! しかもわずかに速度が上がった?」
《ゴアァァァァァァァッ!!》

 腕が再生した事でエンドリクセンの巨体がわずかに縮んでいる。エンドリクセンは攻撃に見せ掛け、斬り落とされた自分の腕を拾いにいっていた。

「こ、こいつ! 自分の腕を喰ってるのか!?」
《グフッグフッ──アァァァ、ニクダ!》

 そして再び元の巨体に戻った。

「なるほどな。食えば元に戻るのか。ん? 待てよ……」

 アインは一つ簡単にエンドリクセンを倒せそうな作戦を思いつき、剣を鞘に納めマジックバッグに手を伸ばした。そして中から魔物の肉を取り出しエンドリクセンに向かい放り投げた。

《ニク!! ニクゥゥゥゥゥッ! ガフッガフッ!》
「まだまだあるからどんどん食えよ、エンドリクセン」
《ガフッガフッガフッ!》

 アインはエンドリクセンにどんどん魔物の肉を与えていく。エンドリクセンは出された肉をどんどん呑み込んでいき、快楽に溺れていった。その身体はみるみる膨らんでいき、もはや歩く事もままならないほど醜く歪んでいた。

《ニクッ! トドカナイッ! ニクゥゥゥゥッ!!》
「まだ足りないのか。どうやら動けなくなったようだが……破裂するには至らなかったな」

 アインの作戦は大量の肉を与え、限界まで食わせて破裂させる作戦だった。だがエンドリクセンには限界がなく、食った分だけ巨大化しただけで終わった。

「とりあえずこの状態で引き出せるだけ情報を引き出してしまうか。スキル【現実改変】」
《ガッ? あ、に、兄……さん?》
「よう、エンドリクセン。久しぶりだな」
《兄さん!》

 アインはスキルを使いエンドリクセンに自分がディザームに見えるように意識させた。

「エンドリクセン、お前のスキルはなんだ」
《お、俺のスキルは……》

 エンドリクセンは兄リヒトーの事を崇拝していた。兄に命令されたら何でもしてしまう。エンドリクセンは問われるがままアインに自分の知る全ての情報を出していった。

「なるほど。スキル【暴食】か。リヒトーは【大罪の化身】。マーリンは【嫉妬の悪魔】、ミューズは【色欲の悪魔】か。そして残る【憤怒】【傲慢】【怠惰】【強欲】は空席のまま」
《兄さん、俺……いくら食っても腹が減ったままなんだ! どうしたら腹一杯になるか教えて下さいっ!》

 エンドリクセンは動かない身体を揺らしアインにすがる。

「エンドリクセン、お前の腹が満ちる事はもうない」
《え?》
「それがスキル【暴食】の効果だ。スキル【暴食】は際限なく食べ続けなければならないスキルだからな」
《そ、そんな……!》
「憐れだな、エンドリクセン。今お前を飢えから解放してやろう」
《あ……兄……さん》

 アインは再び聖剣デュランダルを抜き、エンドリクセンに向かい構える。

「これがディザームのやり方か。自らを慕う者を怪物に変え、自分以外に絶望を与え楽しむ……。決して許される事ではない! エンドリクセン、魔王ディザームの犠牲者よ。今勇者として俺がその苦しみから解放してやる。去らばだ」
《あぁ……光が見えるよ……兄さ……ん──》

 アインはエンドリクセンの首を落とし、一生食べ続けなければならない苦しみから解放してやった。首を失った身体は黒い粒子に変わり、霧散して消えていった。

「……ディザーム、大罪の一つを消したぞ。すぐにお前も解放してやるから待っていろ」

 アインは剣を納め、エンドリクセンの頭にあった王冠を拾い、リーリエの所へと向かうのだった。
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