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第1章 はじまり
第23話 明かされた正体
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アインは外壁や要塞を知るドワーフを騙し通す事はできないと判断し、ついに自分から正体を明かした。
「驚かずに聞いて欲しい。俺は勇者アインの生まれ変わりだ」
「「「「えっ!?」」」」
「俺はリヒトーの裏切りにあい、仲間達に殺された」
「な、なんだとっ!?」
「俺達が欲望のダンジョンに潜っていた事は知ってるな?」
「ああ。紅蓮の焔だろう。勇者アイン、リヒトー皇子、聖女マーリン、武道家ミューズの四人で欲望のダンジョンに潜り、勇者アインだけが死んだ。そしてリヒトー皇子はダンジョンから戻り、自らを魔王ディザームと名乗った。そしてマーリンとミューズは魔族となり、ディザームの補佐として動いている」
アインは当時を思い浮かべながら語った。
「俺のスキルは【全状態異常耐性】だった。だが意識外からの状態異常には効果を発揮しなかった。マーリンに麻痺をかけられ、リヒトーに嘲笑われながらミューズに殺された」
「ひ、酷い……」
リーリエは真実を知り涙を浮かべた。
「そうして死んだ俺は守護神だった神フレキシオスにより救われ、新たな命をもらったんだ。新しいスキルとともにな」
「新しいスキル?」
「ああ。新しいスキルは【現実改変】という。バウエッセンや極東には前世で行ったことがあるからな。その知識を引き出し、現実改変でここに発現させた。そしてこの聖剣デュランダルだが、これはマードレック王国で国王の守護騎士をしていたバランという騎士に与えた。マードレックはガーデン帝国と隣接していながらも対抗できるだけの力がなかったんだ。だが俺はあの国が好きだった。どうしても守ってやりたくて聖剣デュランダルを渡した。まぁ、そのバランは今世で俺の父になり、結局は俺の手に戻ってきたわけだが」
その話を聞きドレイクは納得した。
「マードレック王国は緑豊かな国だからなぁ……。守りたくなる気持ちもわからなくはない。加えて海もあるし、住む環境としては最高の土地だ」
「……俺は……欲望のダンジョンを攻略したら恋人だったミューズを連れてマードレック王国で暮らすつもりだったんだ」
するとリーリエがさらに泣き出した。
「じ、じゃあアインさんは恋人に……!」
「ああ。リヒトーに操られてな。俺はあの外道を必ず殺す。そのために北へと向かっていた最中なんだがな……。どうにも魔国クリミナルの影響が強すぎて進めていないのが現状だ。本当なら全部無視して先に進めば良いんだろうが……やはり見過ごせないんだよな」
するとドレイクが腕組みをし、頷きながら語った。
「……勇者アインとしてか。強い者は沢山いるが、強さと優しさを兼ね備えた者はそうはいない。勇者アインこそが真の勇者だった。だから族長も聖剣デュランダルを託したのだ。勇者アインに死んで欲しくなかったからな」
「そうとは知らずに済まなかった。だが、俺はもう一度機会を与えられた。今度は手放さないと誓おう」
「うむ。お主が勇者アインでなければ今回の件で聖剣デュランダルを礼に貰おうと思っていたが、それはそのままお主が持っていてくれ。その剣はお主にこそ相応しいからな」
「ありがとう、大事に使わせてもらうよ」
そう言い、軽く微笑みを浮かべたアインはデュランダルを軽く撫でるのだった。そんなアインにリーリエが申し訳なさそうに声を掛けた。
「あ、あのっ! そんな大変な時に私なんかに関わらせてしまってごめんなさいっ! 私の事は無理していただかなくても……」
「なに言ってるんだ」
「え?」
「俺はマードレック王国を守りたいって言っただろ? ここでリーリエに手を貸すのは自分のためだ。さらに言えばガーデン帝国の皇帝は魔族らしいじゃないか。魔族ならリヒトー……いや、魔王ディザームの配下だろう。ならガーデン帝国の皇帝は俺の敵だ。なんとしても倒さなければならない。俺達の利害は一致してるんだよ、リーリエ」
「で、でも……。これじゃ私達の方が迷惑ばかりで……」
「そう思うなら戦に勝った後何を為すか考えると良い。ただ家族の復讐を果たして終わりではないだろう? 皇帝が死んだら新たな皇帝が必要になる。先代皇帝の血族は皆死んだんだ。誰かがこの国を引っ張っていかなければならないだろう?」
「も、もしかしてそれを私にやれと!?」
アインは混乱するリーリエに言った。
「いや、別にリーリエじゃなくても良い。これから戦になり、勝ち進んでいけば今の皇帝に不満を抱える者達が味方に加わってくれるだろう。その中に相応しい者がいたら支えてやっても良いし、いなければ自ら立ち上がっても良い。だからその時になるまでどんな国にしたいか考えてみたらどうだ?」
「……アインさんの中ではこの戦、もう勝ってるんですね」
「当たり前だろ。そもそも負けるつもりで戦に臨む奴なんていないだろう。俺は最初から勝つ気満々だ。俺が味方にいる時点で負けはないよ。そういう力をフレキシオスから授かってるからな」
「す、凄い自信です。わかりました、戦のあとの事……しっかり考えてみます!」
アインはそう言ったリーリエの頭をポンッと撫でた。
「はわわわわ」
「お前はそれで良い。荒事は俺に任せておけ。そして集まってくれた皆、俺と共にリーリエを支えていこう」
「「「「はいっ! アイン様っ!」」」」
こうして正体を明かした事で絆が深まった。その日はドワーフ達が持ち込んだ酒と畑で採れた野菜、そして魔物の肉を使い宴が開かれ、深まった絆はさらに深まっていったのだった。
「驚かずに聞いて欲しい。俺は勇者アインの生まれ変わりだ」
「「「「えっ!?」」」」
「俺はリヒトーの裏切りにあい、仲間達に殺された」
「な、なんだとっ!?」
「俺達が欲望のダンジョンに潜っていた事は知ってるな?」
「ああ。紅蓮の焔だろう。勇者アイン、リヒトー皇子、聖女マーリン、武道家ミューズの四人で欲望のダンジョンに潜り、勇者アインだけが死んだ。そしてリヒトー皇子はダンジョンから戻り、自らを魔王ディザームと名乗った。そしてマーリンとミューズは魔族となり、ディザームの補佐として動いている」
アインは当時を思い浮かべながら語った。
「俺のスキルは【全状態異常耐性】だった。だが意識外からの状態異常には効果を発揮しなかった。マーリンに麻痺をかけられ、リヒトーに嘲笑われながらミューズに殺された」
「ひ、酷い……」
リーリエは真実を知り涙を浮かべた。
「そうして死んだ俺は守護神だった神フレキシオスにより救われ、新たな命をもらったんだ。新しいスキルとともにな」
「新しいスキル?」
「ああ。新しいスキルは【現実改変】という。バウエッセンや極東には前世で行ったことがあるからな。その知識を引き出し、現実改変でここに発現させた。そしてこの聖剣デュランダルだが、これはマードレック王国で国王の守護騎士をしていたバランという騎士に与えた。マードレックはガーデン帝国と隣接していながらも対抗できるだけの力がなかったんだ。だが俺はあの国が好きだった。どうしても守ってやりたくて聖剣デュランダルを渡した。まぁ、そのバランは今世で俺の父になり、結局は俺の手に戻ってきたわけだが」
その話を聞きドレイクは納得した。
「マードレック王国は緑豊かな国だからなぁ……。守りたくなる気持ちもわからなくはない。加えて海もあるし、住む環境としては最高の土地だ」
「……俺は……欲望のダンジョンを攻略したら恋人だったミューズを連れてマードレック王国で暮らすつもりだったんだ」
するとリーリエがさらに泣き出した。
「じ、じゃあアインさんは恋人に……!」
「ああ。リヒトーに操られてな。俺はあの外道を必ず殺す。そのために北へと向かっていた最中なんだがな……。どうにも魔国クリミナルの影響が強すぎて進めていないのが現状だ。本当なら全部無視して先に進めば良いんだろうが……やはり見過ごせないんだよな」
するとドレイクが腕組みをし、頷きながら語った。
「……勇者アインとしてか。強い者は沢山いるが、強さと優しさを兼ね備えた者はそうはいない。勇者アインこそが真の勇者だった。だから族長も聖剣デュランダルを託したのだ。勇者アインに死んで欲しくなかったからな」
「そうとは知らずに済まなかった。だが、俺はもう一度機会を与えられた。今度は手放さないと誓おう」
「うむ。お主が勇者アインでなければ今回の件で聖剣デュランダルを礼に貰おうと思っていたが、それはそのままお主が持っていてくれ。その剣はお主にこそ相応しいからな」
「ありがとう、大事に使わせてもらうよ」
そう言い、軽く微笑みを浮かべたアインはデュランダルを軽く撫でるのだった。そんなアインにリーリエが申し訳なさそうに声を掛けた。
「あ、あのっ! そんな大変な時に私なんかに関わらせてしまってごめんなさいっ! 私の事は無理していただかなくても……」
「なに言ってるんだ」
「え?」
「俺はマードレック王国を守りたいって言っただろ? ここでリーリエに手を貸すのは自分のためだ。さらに言えばガーデン帝国の皇帝は魔族らしいじゃないか。魔族ならリヒトー……いや、魔王ディザームの配下だろう。ならガーデン帝国の皇帝は俺の敵だ。なんとしても倒さなければならない。俺達の利害は一致してるんだよ、リーリエ」
「で、でも……。これじゃ私達の方が迷惑ばかりで……」
「そう思うなら戦に勝った後何を為すか考えると良い。ただ家族の復讐を果たして終わりではないだろう? 皇帝が死んだら新たな皇帝が必要になる。先代皇帝の血族は皆死んだんだ。誰かがこの国を引っ張っていかなければならないだろう?」
「も、もしかしてそれを私にやれと!?」
アインは混乱するリーリエに言った。
「いや、別にリーリエじゃなくても良い。これから戦になり、勝ち進んでいけば今の皇帝に不満を抱える者達が味方に加わってくれるだろう。その中に相応しい者がいたら支えてやっても良いし、いなければ自ら立ち上がっても良い。だからその時になるまでどんな国にしたいか考えてみたらどうだ?」
「……アインさんの中ではこの戦、もう勝ってるんですね」
「当たり前だろ。そもそも負けるつもりで戦に臨む奴なんていないだろう。俺は最初から勝つ気満々だ。俺が味方にいる時点で負けはないよ。そういう力をフレキシオスから授かってるからな」
「す、凄い自信です。わかりました、戦のあとの事……しっかり考えてみます!」
アインはそう言ったリーリエの頭をポンッと撫でた。
「はわわわわ」
「お前はそれで良い。荒事は俺に任せておけ。そして集まってくれた皆、俺と共にリーリエを支えていこう」
「「「「はいっ! アイン様っ!」」」」
こうして正体を明かした事で絆が深まった。その日はドワーフ達が持ち込んだ酒と畑で採れた野菜、そして魔物の肉を使い宴が開かれ、深まった絆はさらに深まっていったのだった。
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