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第3章 打倒、聖フランチェスカ教国編
21 さらば中央大陸
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朱雀達を引き連れ港に着いたアーレスは倉庫に避難させていた龍人族の姫ウィンディと合流した。
「姫様! 御無事でなによりです!」
「青龍! それにみんな……! 教国は……?」
アーレスは青龍に抱えられたウィンディに言った。
「教国は滅んだよ。まあ、まだ世界中に神殿はあるだろうが……精霊結晶の件が明るみになったんだ、放置しておいてもいずれ滅ぶだろう」
「……そっか。倒してくれたんだね。そりゃそうだよね~、私にあんな凄い事してくれたんだし?」
「ちょっ!」
ウィンディの言葉に青龍がピクリと反応を示した。
「凄い事? ほう、いったい何をされたのですか、姫様」
「んとね~……」
「ば、ばか! 言うな! あれは事故だろう!?」
青龍は全てを聞き終えウィンディを地面に下ろし、アーレスの前に立った。
「せ、青龍? あんたならわかるよな? あれは不幸な──」
「アーレス殿っ!」
「うぉっ!?」
青龍は涙を流しながらアーレスの肩を抱いた。
「あなたという方はっ! 姫様は何度も何度も奴らに汚されたにも関わらず……! そんな姫様を侮蔑する事なく愛したのですね!」
「は、はい?」
青龍は涙を拭いながらアーレスに頭を下げた。
「あなたになら姫様を任せられましょう。どうか末永く姫様を頼み申します!」
「な、なぜそうなる!?」
「……まさか……遊びだとでも?」
青龍の眼光が鋭く光る。そしてなぜかウィンディは頬を赤く染めていた。ここで断ってしまえばせっかくまとまりかけた移住の話が消え去るかもしれない。そう考えたアーレスは泣く泣くこう口にした。
「くぅぅぅぅっ! ひ、引き受けよう」
「おぉっ、姫様! アーレス殿は姫様を娶られるそうですぞ!」
「ふ、ふん。別に嬉しくなんてないし?」
「は?」
ウィンディは精一杯無い胸を張りながら虚勢も張った。
「た、たった一回抱いたくらいで私は落ちないんだあらねっ! 妻に迎えたいならちゃんとあ、愛しなさいよねっ」
「こいつ……」
「はっはっは! これはめでたいのう。青龍よ、龍人族の未来は明るいようだな」
そう笑う玄武に青龍は言った。
「龍人族だけではありませんよ。霊亀族、そして火鳥族の未来もまた明るいものになるでしょう。何せ私達はこれから世界を支配していた教国を滅ぼした魔族の国で生きていくのですからね」
「アーレスさまっ、ボクは愛人で良いよっ! アーレスさまとの卵いっぱい産むからねっ」
「はっはっは、アーレス殿はモテモテだのう」
後で黄龍もさらっと抱きついてアピールしてきたが、アーレスはアリアにどう告げるか頭を悩ますのだった。
そして一段落し、一同は桟橋から海を眺める。
「さて、船が一隻もないし、どっちに向かえば良いかわからんな。どうする?」
その問い掛けに青龍が答える。
「私と朱雀は姫様と黄龍を抱えて空を、玄武は海を泳いで渡ります。アーレス様はどうしましょうかね」
「俺も飛べるが……玄武一人じゃ心配だな。玄武よ、俺を背に乗せて泳げるか?」
「問題ないぞ。わし本来の姿に戻ればの」
「よし。では空路と海路に別れ、陸地の端で待ち合わせをしようか」
「「「「おー!」」」」
そうして四人は空を飛び東へと向かった。
「ではわしらも行くとしようか。ぬうぅぅぅぅんっ!」
「おお!」
玄武は海に浸かり本来の姿に戻った。その姿は巨大な亀で、体長は五メートル近くあった。
「デカいな!」
「霊亀族は歳を重ねると大きさを増すのだよ。わしは最年長だからの。ほれ、わしに乗るがよい」
「では失礼して」
アーレスは桟橋から玄武の背に飛び乗り腰を下ろした。
「よ~し、東に向けて出発だ!」
「はっはっは、のんびり行くとしようではないか」
そうして出発してから二日。
「……なんだこいつらは」
「むぅ……、面倒な奴らに囲まれたのう」
アーレス達は海の支配者である魚人族に取り囲まれていた。
「何者だ貴様ら! 我らの領域に無断で侵入し何をするつもりだ!」
「ま、待つのだ。わしは霊亀族の玄武だ! わしらは今東の大陸に向かっているのだ! その際誤って領域に入ってしまった! すまぬ!」
「霊亀族だと? ふん、陸に上がった裏切り者ではないか。ならば余計に見逃せんな。貴様らを拘束する」
「「なっ!?」」
取り囲んでいた魚人族は一斉に拘束魔法を放った。
「アーレス殿! なんとかならぬかっ!?」
「……なるにはなるが……俺にあいつらは殺せん……っ!」
「な、なぜだ?」
アーレスは拳を握りしめ叫んだ。
「あんな綺麗で胸丸出しの女を殺すなんて──! 俺にはできないっ!」
「……」
玄武は呆然としたまま、アーレスは海の中を泳ぐ人魚の胸をまじまじと見ながら海底へと引きずりこまれていった。
「あれは……! 海底に村があるぞ!?」
「あれは魚人族の里だ。しかしアーレス殿、お主なぜ呼吸できておるのだ?」
「ん? 俺は精霊使いだぞ? 航海の最中に精霊ウンディーネから水中でも活動できる魔法を学んでいたんだ。海では何があるかわからないからな」
「ウンディーネか! それはまた……」
そうしてアーレス達は拘束されたまま魚人の里へと連行され、二人別々に牢屋へと入れられた。
「明日長から判決が言い渡される。それまで大人しくしていることだな。もし暴れた場合は問答無用で処刑する。わかったか」
「おぉ……ぷるんぷるんだ……」
「こ、こいつは……。い、良いか! 大人しくしてるんだぞ! ふんっ!」
アーレスは遠ざかっていく人魚の尻を名残惜しそうに見続けるのだった。
「姫様! 御無事でなによりです!」
「青龍! それにみんな……! 教国は……?」
アーレスは青龍に抱えられたウィンディに言った。
「教国は滅んだよ。まあ、まだ世界中に神殿はあるだろうが……精霊結晶の件が明るみになったんだ、放置しておいてもいずれ滅ぶだろう」
「……そっか。倒してくれたんだね。そりゃそうだよね~、私にあんな凄い事してくれたんだし?」
「ちょっ!」
ウィンディの言葉に青龍がピクリと反応を示した。
「凄い事? ほう、いったい何をされたのですか、姫様」
「んとね~……」
「ば、ばか! 言うな! あれは事故だろう!?」
青龍は全てを聞き終えウィンディを地面に下ろし、アーレスの前に立った。
「せ、青龍? あんたならわかるよな? あれは不幸な──」
「アーレス殿っ!」
「うぉっ!?」
青龍は涙を流しながらアーレスの肩を抱いた。
「あなたという方はっ! 姫様は何度も何度も奴らに汚されたにも関わらず……! そんな姫様を侮蔑する事なく愛したのですね!」
「は、はい?」
青龍は涙を拭いながらアーレスに頭を下げた。
「あなたになら姫様を任せられましょう。どうか末永く姫様を頼み申します!」
「な、なぜそうなる!?」
「……まさか……遊びだとでも?」
青龍の眼光が鋭く光る。そしてなぜかウィンディは頬を赤く染めていた。ここで断ってしまえばせっかくまとまりかけた移住の話が消え去るかもしれない。そう考えたアーレスは泣く泣くこう口にした。
「くぅぅぅぅっ! ひ、引き受けよう」
「おぉっ、姫様! アーレス殿は姫様を娶られるそうですぞ!」
「ふ、ふん。別に嬉しくなんてないし?」
「は?」
ウィンディは精一杯無い胸を張りながら虚勢も張った。
「た、たった一回抱いたくらいで私は落ちないんだあらねっ! 妻に迎えたいならちゃんとあ、愛しなさいよねっ」
「こいつ……」
「はっはっは! これはめでたいのう。青龍よ、龍人族の未来は明るいようだな」
そう笑う玄武に青龍は言った。
「龍人族だけではありませんよ。霊亀族、そして火鳥族の未来もまた明るいものになるでしょう。何せ私達はこれから世界を支配していた教国を滅ぼした魔族の国で生きていくのですからね」
「アーレスさまっ、ボクは愛人で良いよっ! アーレスさまとの卵いっぱい産むからねっ」
「はっはっは、アーレス殿はモテモテだのう」
後で黄龍もさらっと抱きついてアピールしてきたが、アーレスはアリアにどう告げるか頭を悩ますのだった。
そして一段落し、一同は桟橋から海を眺める。
「さて、船が一隻もないし、どっちに向かえば良いかわからんな。どうする?」
その問い掛けに青龍が答える。
「私と朱雀は姫様と黄龍を抱えて空を、玄武は海を泳いで渡ります。アーレス様はどうしましょうかね」
「俺も飛べるが……玄武一人じゃ心配だな。玄武よ、俺を背に乗せて泳げるか?」
「問題ないぞ。わし本来の姿に戻ればの」
「よし。では空路と海路に別れ、陸地の端で待ち合わせをしようか」
「「「「おー!」」」」
そうして四人は空を飛び東へと向かった。
「ではわしらも行くとしようか。ぬうぅぅぅぅんっ!」
「おお!」
玄武は海に浸かり本来の姿に戻った。その姿は巨大な亀で、体長は五メートル近くあった。
「デカいな!」
「霊亀族は歳を重ねると大きさを増すのだよ。わしは最年長だからの。ほれ、わしに乗るがよい」
「では失礼して」
アーレスは桟橋から玄武の背に飛び乗り腰を下ろした。
「よ~し、東に向けて出発だ!」
「はっはっは、のんびり行くとしようではないか」
そうして出発してから二日。
「……なんだこいつらは」
「むぅ……、面倒な奴らに囲まれたのう」
アーレス達は海の支配者である魚人族に取り囲まれていた。
「何者だ貴様ら! 我らの領域に無断で侵入し何をするつもりだ!」
「ま、待つのだ。わしは霊亀族の玄武だ! わしらは今東の大陸に向かっているのだ! その際誤って領域に入ってしまった! すまぬ!」
「霊亀族だと? ふん、陸に上がった裏切り者ではないか。ならば余計に見逃せんな。貴様らを拘束する」
「「なっ!?」」
取り囲んでいた魚人族は一斉に拘束魔法を放った。
「アーレス殿! なんとかならぬかっ!?」
「……なるにはなるが……俺にあいつらは殺せん……っ!」
「な、なぜだ?」
アーレスは拳を握りしめ叫んだ。
「あんな綺麗で胸丸出しの女を殺すなんて──! 俺にはできないっ!」
「……」
玄武は呆然としたまま、アーレスは海の中を泳ぐ人魚の胸をまじまじと見ながら海底へと引きずりこまれていった。
「あれは……! 海底に村があるぞ!?」
「あれは魚人族の里だ。しかしアーレス殿、お主なぜ呼吸できておるのだ?」
「ん? 俺は精霊使いだぞ? 航海の最中に精霊ウンディーネから水中でも活動できる魔法を学んでいたんだ。海では何があるかわからないからな」
「ウンディーネか! それはまた……」
そうしてアーレス達は拘束されたまま魚人の里へと連行され、二人別々に牢屋へと入れられた。
「明日長から判決が言い渡される。それまで大人しくしていることだな。もし暴れた場合は問答無用で処刑する。わかったか」
「おぉ……ぷるんぷるんだ……」
「こ、こいつは……。い、良いか! 大人しくしてるんだぞ! ふんっ!」
アーレスは遠ざかっていく人魚の尻を名残惜しそうに見続けるのだった。
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