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第三章 魔人編
第56話 修行の合間に
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「よし、今日はここまでにしよう」
「ぜぇぇぇぇぇっ、はぁぁぁぁっ! お、終わった……のか……ぐふっ」
本日の修行終了。総一朗は疲れから地面に倒れ大の字で空を見上げる。
「ほ、本当に強くなってんのか俺……はぁ……はぁ……」
「うん? 実感が沸かない?」
「沸くかっ! 毎日毎日ギリギリの戦いばかりさせやがって!」
「なら早く自分だけの技を考えるんだね。さ、食事にしよう」
「お、鬼……」
総一朗は重い身体を引きずり食卓に向かう。
「なん……だと……! こ、これは……!」
「今日は蕎麦にしてみたんだ。えっと……月見そばだっけ?」
「おかわりぃぃぃっ!」
「はやっ!?」
総一朗は食卓につくなり一杯目を一瞬で完食した。
「うめぇ……っ! まさかこんな場所で蕎麦が食えるとは……! ぐわふっぐわふっ!」
「お、落ち着いて食べた方が……」
総一朗は空にした器を食卓に叩きつけた。
「あのなぁ、俺は無類の蕎麦好きだ! 日本全国様々な場所で蕎麦を食ってきた……。それだけ蕎麦を愛しているっ!」
「そ、そう……」
《総一朗~、お酒~》
「飲めっ!」
《きゃっほ~い! ぐびぐびぐび……》
《むぅ……これでは全然足りん。総一朗、肉だ!》
「食えっ!」
ぐわふっぐわふっ!!
《総一朗~、羊羹出して~》
「栗羊羹しかねぇっ! おらぁっ!」
《むぐぅぅぅっ!? はぐはぐはぐ……》
「き、君達いつのまにそんな仲良く?」
「知らん。餌やってたらなついた」
「餌……」
竜達は修行後決まって食後、さらに食事を求めてくる。それに応じていたらいつの間にか毎日当たり前のようにたかってくるようになっていた。
「まぁ、良いんだけどね。それより総一朗、新しい技は思い付きそうかい?」
「毎日生きるので精一杯だっつーの!」
「だめだなぁ。頭固いんじゃない?」
「あぁん!?」
銀髪の男は銀のスプーンを持ち総一朗に言った。
「もうレベルも千を越えたし、そろそろ帰してあげようかなってね。良い、総一朗。しっかり見るんだ」
「あん? なにを──っ!」
銀髪の男がスプーンに魔力を流すとスプーンが銀から赤に変わった。
「なんだ──それ」
「魔法剣。武器に属性魔力を持たせる技だよ」
「属性魔力……」
「そう。これを覚えるだけで戦いは格段に楽になる。それだけ属性の相性は戦いに影響しているんだよ」
「……なるほどな。なら……例えば水竜を斬る時は雷の属性を纏わせれば良いのか?」
「うん。今の総一朗ならそれを使えば一撃で倒せるね」
「あれじゃ参考にならん」
水竜はぐでんぐでんに酔っ払っていた。
「ま、まぁ。これなら融合なしでも魔人くらい余裕で倒せる」
「なに?」
「魔人は聖属性と光属性に対し極端に弱い。けど斬擊、打撃には滅法強いんだ。灰塵は相手を消滅させる破壊属性を持つ攻撃だからね。確かに強いのは強いけどできれば安易に使って欲しくない。そればかりに頼り鍛練を怠るようになるかもしれないからね」
「……まぁ、楽に終わらせられるなら多分頼っちまうだろうな」
「だろ? それだと更なる成長は望めない。だから俺は心を鬼にして修行させたんだけどね。どうにも総一朗は剣に頼り過ぎな気がする。もう少し魔法も使ってみたらどう?」
「魔法ねぇ……。魔法と剣の融合か。本当にそれで魔人を倒せるんだな?」
「うん。明日からは魔法剣の練習にしよう。もうレベルは十分だろうしね」
「はいはい……」
そして翌日から魔法剣の練習が始まった。
「違う、そうじゃない! それだと剣の表面に魔法を被せてるだけだ」
「何が違うんだよ?」
「全然違う。ほら、俺の剣を見るんだ」
銀髪の男の剣自体が赤、青、緑、黒とその色を変えていく。
「これが魔法剣だ。君のはただ武器を魔法でコーティングしてるだけじゃないか」
「……わからん。コツとかねぇの?」
「コツか。ならまず一旦剣を置こうか」
「おう」
それから銀髪の男の講義が始まる。
「まず身体に属性魔力を流してみてくれ」
「おぉん? どうやって?」
「へ? そりゃあ魔力操作でだけど」
「なんだそれ?」
銀髪の男は唖然としていた。
「ち、ちょっと待て。じゃあ君はどうやって魔法を使ってたの?」
「あん? そりゃあ……わからん。スキルで魔法を覚えてその魔法を口にしたら勝手に出た」
「……ば、バカなのか天才なのかわからないな……」
「なんだよ、俺のやり方間違ってんの?」
「間違っている……と言うか効率が悪すぎるんだ。それだと大量の魔力を消費してしまう。効率良く魔法を使うために魔力操作は必須なんだよ」
「ほぉ~」
「そして魔力操作を行うと魔法の威力も上がる」
「良いことだらけじゃねぇか」
「……そうだね」
銀髪の男がジト目で総一朗を見る。
「とにかくだ、魔力操作ができないと魔法剣なんて夢のまた夢だ。まずは魔力操作から身に付けていこう」
「今度はまたえらく地味な……」
「ほら、文句を言わない! 身体に流れる魔力を感じるまで続けて!」
「はいはい。やれば良いんだろ。で、どうすりゃ良いの?」
「め、めんどくさっ。もう付与して終わらせようかな……」
それから三日間、この地味な訓練が続いた。
「なるほど、こうだな!」
「やっと覚えたか……」
「仕方ないだろ。そもそも魔法なんてどんなもんかも知らないで使ってたからな」
「……まぁ良いや。じゃあそのまま剣を持って」
「おう」
総一朗は鞘から刀を抜き正面に構える。
「じゃあそこから魔法剣を使ってみよう。手に握った刀を自分の身体の一部だとおも……」
「こうか?」
「は? で、できてる!? しかも一瞬で!?」
総一朗はいとも簡単に魔法剣を使って見せた。
「侍にとって刀は魂。そして自分の一部だからな。今さら反復するまでもねぇ。なるほど、こんな感じか」
「よ、要領が良いのか悪いのかサッパリだよ……」
こうして総一朗は魔法剣を習得し、修行はいよいよ大詰めに向かうのだった。
「ぜぇぇぇぇぇっ、はぁぁぁぁっ! お、終わった……のか……ぐふっ」
本日の修行終了。総一朗は疲れから地面に倒れ大の字で空を見上げる。
「ほ、本当に強くなってんのか俺……はぁ……はぁ……」
「うん? 実感が沸かない?」
「沸くかっ! 毎日毎日ギリギリの戦いばかりさせやがって!」
「なら早く自分だけの技を考えるんだね。さ、食事にしよう」
「お、鬼……」
総一朗は重い身体を引きずり食卓に向かう。
「なん……だと……! こ、これは……!」
「今日は蕎麦にしてみたんだ。えっと……月見そばだっけ?」
「おかわりぃぃぃっ!」
「はやっ!?」
総一朗は食卓につくなり一杯目を一瞬で完食した。
「うめぇ……っ! まさかこんな場所で蕎麦が食えるとは……! ぐわふっぐわふっ!」
「お、落ち着いて食べた方が……」
総一朗は空にした器を食卓に叩きつけた。
「あのなぁ、俺は無類の蕎麦好きだ! 日本全国様々な場所で蕎麦を食ってきた……。それだけ蕎麦を愛しているっ!」
「そ、そう……」
《総一朗~、お酒~》
「飲めっ!」
《きゃっほ~い! ぐびぐびぐび……》
《むぅ……これでは全然足りん。総一朗、肉だ!》
「食えっ!」
ぐわふっぐわふっ!!
《総一朗~、羊羹出して~》
「栗羊羹しかねぇっ! おらぁっ!」
《むぐぅぅぅっ!? はぐはぐはぐ……》
「き、君達いつのまにそんな仲良く?」
「知らん。餌やってたらなついた」
「餌……」
竜達は修行後決まって食後、さらに食事を求めてくる。それに応じていたらいつの間にか毎日当たり前のようにたかってくるようになっていた。
「まぁ、良いんだけどね。それより総一朗、新しい技は思い付きそうかい?」
「毎日生きるので精一杯だっつーの!」
「だめだなぁ。頭固いんじゃない?」
「あぁん!?」
銀髪の男は銀のスプーンを持ち総一朗に言った。
「もうレベルも千を越えたし、そろそろ帰してあげようかなってね。良い、総一朗。しっかり見るんだ」
「あん? なにを──っ!」
銀髪の男がスプーンに魔力を流すとスプーンが銀から赤に変わった。
「なんだ──それ」
「魔法剣。武器に属性魔力を持たせる技だよ」
「属性魔力……」
「そう。これを覚えるだけで戦いは格段に楽になる。それだけ属性の相性は戦いに影響しているんだよ」
「……なるほどな。なら……例えば水竜を斬る時は雷の属性を纏わせれば良いのか?」
「うん。今の総一朗ならそれを使えば一撃で倒せるね」
「あれじゃ参考にならん」
水竜はぐでんぐでんに酔っ払っていた。
「ま、まぁ。これなら融合なしでも魔人くらい余裕で倒せる」
「なに?」
「魔人は聖属性と光属性に対し極端に弱い。けど斬擊、打撃には滅法強いんだ。灰塵は相手を消滅させる破壊属性を持つ攻撃だからね。確かに強いのは強いけどできれば安易に使って欲しくない。そればかりに頼り鍛練を怠るようになるかもしれないからね」
「……まぁ、楽に終わらせられるなら多分頼っちまうだろうな」
「だろ? それだと更なる成長は望めない。だから俺は心を鬼にして修行させたんだけどね。どうにも総一朗は剣に頼り過ぎな気がする。もう少し魔法も使ってみたらどう?」
「魔法ねぇ……。魔法と剣の融合か。本当にそれで魔人を倒せるんだな?」
「うん。明日からは魔法剣の練習にしよう。もうレベルは十分だろうしね」
「はいはい……」
そして翌日から魔法剣の練習が始まった。
「違う、そうじゃない! それだと剣の表面に魔法を被せてるだけだ」
「何が違うんだよ?」
「全然違う。ほら、俺の剣を見るんだ」
銀髪の男の剣自体が赤、青、緑、黒とその色を変えていく。
「これが魔法剣だ。君のはただ武器を魔法でコーティングしてるだけじゃないか」
「……わからん。コツとかねぇの?」
「コツか。ならまず一旦剣を置こうか」
「おう」
それから銀髪の男の講義が始まる。
「まず身体に属性魔力を流してみてくれ」
「おぉん? どうやって?」
「へ? そりゃあ魔力操作でだけど」
「なんだそれ?」
銀髪の男は唖然としていた。
「ち、ちょっと待て。じゃあ君はどうやって魔法を使ってたの?」
「あん? そりゃあ……わからん。スキルで魔法を覚えてその魔法を口にしたら勝手に出た」
「……ば、バカなのか天才なのかわからないな……」
「なんだよ、俺のやり方間違ってんの?」
「間違っている……と言うか効率が悪すぎるんだ。それだと大量の魔力を消費してしまう。効率良く魔法を使うために魔力操作は必須なんだよ」
「ほぉ~」
「そして魔力操作を行うと魔法の威力も上がる」
「良いことだらけじゃねぇか」
「……そうだね」
銀髪の男がジト目で総一朗を見る。
「とにかくだ、魔力操作ができないと魔法剣なんて夢のまた夢だ。まずは魔力操作から身に付けていこう」
「今度はまたえらく地味な……」
「ほら、文句を言わない! 身体に流れる魔力を感じるまで続けて!」
「はいはい。やれば良いんだろ。で、どうすりゃ良いの?」
「め、めんどくさっ。もう付与して終わらせようかな……」
それから三日間、この地味な訓練が続いた。
「なるほど、こうだな!」
「やっと覚えたか……」
「仕方ないだろ。そもそも魔法なんてどんなもんかも知らないで使ってたからな」
「……まぁ良いや。じゃあそのまま剣を持って」
「おう」
総一朗は鞘から刀を抜き正面に構える。
「じゃあそこから魔法剣を使ってみよう。手に握った刀を自分の身体の一部だとおも……」
「こうか?」
「は? で、できてる!? しかも一瞬で!?」
総一朗はいとも簡単に魔法剣を使って見せた。
「侍にとって刀は魂。そして自分の一部だからな。今さら反復するまでもねぇ。なるほど、こんな感じか」
「よ、要領が良いのか悪いのかサッパリだよ……」
こうして総一朗は魔法剣を習得し、修行はいよいよ大詰めに向かうのだった。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
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