幕末の剣士、異世界に往く~最強の剣士は異世界でも最強でした~

夜夢

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第一章 最初の国エルローズにて

第42話 国に巣くう闇

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 ゴロツキを殺って店に戻った信長は総一朗達に闇ギルドの事を話した。

「闇ギルドねぇ……。あの裏賭博場はそいつらの資金源だったってわけか」
「うむ」
「んじゃお前はそいつらに多大なる貢献をした事になるなぁ?」
「……それはそれだ!」

 信長は勢いで乗りきろうとした。

「つーかよ、こいつはフラムも交えて話した方が良いな。この国の町全てにアジトを持ってんだろ? 仮に一ヶ所潰した所で根絶は無理だ。やるなら全箇所一斉に襲撃し、一人も逃さず捕らえるか殺るかしかないだろ」
「そうだな。急いだ方が良いとは思うが、これはこの国に巣くう闇みたいなものだ。ワシらだけでどうにかなるとも思えん」
「ああ。じゃあ話は一旦終わりだ。明日以降フラムが来るのを待とう」

 その翌日、夜の部が始まると共に、いつもの様にフラムがお忍びでやってきた。

「話?」
「ああ、ちっと面倒な話だ。場所を変えて話そう」

 訪れたフラムを店から居住区であるリビングに移し、総一朗は信長と共に昨夜闇ギルドから襲撃を受けた話をした。

「裏賭博場に闇ギルドか。それなら国でも常時監視をしている。クレア」
「……はっ」

 フラムが声を掛けると、床に映っていたフラムの影から女が現れた。

「お久しぶりです、総一朗様、信長様」
「お前は……ああ、侯爵の所で会った暗殺者か」

 そう確認するとクレア・コーネリアスがスッと頭を下げフラムの後ろに控える。

「闇ギルドの事はいつか一掃してやろうと思っていたのだ。総一朗達が関わっているなら良い機会だ。これを機に一気に国を綺麗にしてしまおう」
「ま、今回はこっちにも事情があるからな。共闘といこうじゃないか」
「うむ。では早速計画を練ろう。クレア、国の地図を」
「はっ」

 フラムの後ろに控えていたクレアが懐からエルローズ王国の地図を取り出しテーブルに置いた。何故持っているかはあえて尋ねない。フラムが調べさせていると言ったなら既に闇ギルドの全容は全て把握しているのだろう。

 地図を見ると領地は既に分けられていた。 

「我が国に領地は六つ。【フランツ領】、【コルセット領】、【バルドロア領】、【ミュンセット領】、【ガイアス領】、【フェルナンド領】だ。この内フランツ領とコルセット領は新たな領主を据え地名を変えて運営してもらっている」

 国の話はお偉いさんを呼んで喋ってもらった方が早い。

「そしてフェルナンド以外の領地に町が一つずつある。フェルナンドには王都とヴェロームがある。つまり、町は全部で七つある」
「七つか。案外少ないんだな」
「エルローズは小さな国だからな。各領地もそれほど広くはない。町は一つあれば事足りてしまうのだ」
「……なんかすまんな」

 少しだけ申し訳なさを感じつつ、総一朗は話を進めさせた。

「先ほど言った通り、この国に町は七つ。この全ての町に教会がある。王都は地理を良く知る私が受け持つ。だが奴らの本拠地は王都ではなく、闇ギルドのマスターであるブルーノ・リズロックのいるヴェロームだ。規模もここが一番大きい。向かうのは実力者が良いだろう」

 すると総一朗が手を挙げた。

「ならそこは俺と総が担当しよう」
「僕が兄さんと? 共闘なんて初めてじゃない? なんか嬉しいなぁ」
「ダンジョンでどれだけ強くなったか検分させでめらうぜ、総」
「怖い怖い」

 残る箇所は五つ、かつてスラムを占拠していた信長が配下を引き連れ旧フランツ領に。弁慶と義経が旧コルセット領へと向かう事になった。

「あと三つか、駒が足りないな」
「ああ、その他は各領主が対応する。一番危険な所がヴェロームの本拠地だからな。ブルーノには不変の片腕と呼ばれる【カシウス・リズロック】という双子の弟がついている。戦闘能力はブルーノをはるかに凌ぐ。その他、精鋭が勢揃いだ。本当に二人で大丈夫か?」

 フラムにそう問い掛けられた二人は顔を見合わせ心配を笑い飛ばした。

「ははははっ、大丈夫かだってよ、総」 
「心外だなぁ。僕達ってそんな弱く見える? 精鋭かなにか知らないけどさ、その人達はダンジョンでどれくらい潜れるわけ?」

 その問い掛けにフラムはクレアを見る。

「はい。実力的に見て五十階層くらいかとは思います」
「五十階層くらいが限界の人達なら相手にもならないよ。ね、兄さん?」
「まぁな。俺はソロで九十九階層、総はソロで七十階だっけ?」
「うん。楽勝だよ」

 そんな二人をフラムとクレアは唖然としながら見ていた。

「地下九十九階層など前人未到区域ではないか」
「はい。おそらく世界でもそこまでソロで潜れる人物は極めて稀でしょう」
「それをこの店の片手間で……。まったく底が知れんな。ではブルーノ達は総一朗達二人に任せる。捕らえる必要はない。絶対に逃がさないようにしてくれ。もし他国にでも逃亡されたら面倒な事になる」
「逃がすわけねぇだろ。な、総?」
「うん。いやぁ~人を斬るのは久しぶりだなぁ……。滾るね」

 そう目を細める総司を見たフラムは若干背筋に寒気を感じた。だがそれを表には出さず場をまとめる。

「では……これがこの国最後の問題だ。国から闇ギルドの奴らを一掃し、平和な国にしよう。全ての民が笑って過ごせる国にするため、君達の力を貸して欲しい」
「ああ。乗り掛かった船だ。付き合ってやるよ。信長、弁慶、義経。抜かるなよ?」

 それに対し三人は自信をもって答えた。

「愚問だ。ワシに抜かりはない。彼の地はワシの庭のようなもの。蟻一匹逃がさぬよ」
「我と主もただ遊んでいたわけではない。総司殿ほどではないがそれなりに修行もしておる。抜かりなどない」
「平和な国って良いよね。ボクの力が役に立つなら喜んで力を貸させてもらうよっ」

 そうして面々は円陣を組む。音頭はフラムではなく総一朗がとる事になった。 

「じゃあ……」

 総一朗は一息溜め、皆を奮い起たせる。

「これが終わったらしばらくゆっくりできそうだ。この国から悪党共を一掃してやろうぜ。さあ、出陣だ! 闇ギルドをぶっ潰すぞ!」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉっ!」」」」

 そして翌日、各々は各担当の場所に向かい三日後の深夜、闇ギルド掃討作戦が決行に移されるのだった。
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